ロングセラーで売れ続ける理由

『プロになるためのWeb技術入門――なぜあなたはWebシステムを開発できないのか』は、発売開始以来、AmazonでのIT書籍ランキングで570日以上100位以内にランキングされ、2011年のBest Book of 2011コンピュータ書籍で総合13位を達成しました。おかげさまで、今日現在でも毎日売れ続け実績を上げています。本稿ではその制作舞台裏などを書きます。

企画の始まりは営業部向けの資料から

本書の企画は、もともとは営業向けの商材説明資料でした。営業からWeb技術 をわかりやすく説明した資料が欲しいと頼まれ、担当編集が書いた解説メモが始 まりです。これが書店員さんへの商品説明に役立ったそうです。

『なぜJava』とのマリアージュ

『あなたは、なぜJavaでオブジェクト指向できないのか』という本があります。この本もおかげさまで重版し、累計8刷りとなっているベストセラーです。著者の小森裕介さんは、システムコンサルタントとしてとても優秀な方で、この『なぜJava~』の企画を依頼したときに、すぐに企画意図を理解し、テーマを見事に実現してくれました。この執筆能力とWeb技術の解説が組み合わされば、きっと読者にとって理解が進む本になるだろうと考えたのです。

基本コンセプトの確認がそのままテーマになった

小森さんとの打ち合わせでは、Web技術はそもそもツギハギ技術だね、なんてことを資料を片手に話合った覚えがあります。Webが普及する前では、コンピュータネットワークシステム、たとえばクライアント/サーバ型のアプリケーションでは常に通信がつながっている(セッションが張られている)ものが多かったのですが、Webブラウザの出現がシステムを大きく変えたと言えます。Webブラウザは、常時つながってなくても、必要なときに接続し通信をします。この仕組みのおかげで、1つのサーバ(Webサーバ)にたくさんのクライアント(Webブラウザ)がアクセス可能になったのです。少ないネットワーク帯域やサーバ資源を有効に活用するためのシステムでした。しかし、Webブラウザをクライアントとして採用したために、さまざまな弊害が出てしまいました。つまり、クライアントの特定がしにくいということです(セッションレス通信⁠⁠。そのためcookieの仕組みが生まれたり、Javaならばセッションを管理するために特殊な仕組みが生まれたりしました。Webブラウザはとても便利なのですが、そのトレードオフとして、システムが複雑になります。これが始まりでした。これをわかりやすく説明するために、IPパケットキャプチャソフトを使って解説をしたり、通信プロトコルの仕組みに遡って解説をすることで本書を構成したのです。

基礎の基礎がわかることが、発展性のある技術力を培う

Web技術はユーザの欲望に応えるために急速に発達し、そして複雑化しながら普及しました。ブラウザのご先祖様であるMOSAICなんて、今の若い方は知らないでしょう。仕組みを知らなくても使えるのがWebの最大の利点です。Webを作る側は、HTMLやCSSを書きJavaScriptと組み合わせれば、とても簡単に見た目が美しく、そして高性能なWebサービスを構築できます。しかし、その範囲でしか仕事ができないのです。想定外の障害がおきたり、自分の想像を超える事態には対処できないでしょう。それでは本当の技術者と言えません。お客様にWebサービスを提供し、対価を得る以上、どんなことが起きても対処できなれば「プロとして」失格なのです。今は背後の仕組みを知らなくてもできてしまう時代ですが、本書の読者からの感想を読む限り、皆さんWebの本当の仕組みを知りたくで購入されています。まさに欲しい知識と技術が本書の中に載っているのです。

最新版は、重版5刷目。そして韓国語版も

動きの速いWeb技術のため、増刷をするごとにアップデートしています。差分については、当社補足情報Webページで掲載されるだけでなく、著者のWebサイトでも告知され、掲載プログラムのテストもできるようになっています。本書が支持される理由はそこにもあるのかもしれません。なお読者の皆さんからの質問にも、著者の小森さんは懇切丁寧に回答されています。編集の知らないところで、読者対応もされているようです。

なお、韓国語版も早くから出版予定だったのですが、最新版の5刷目に対応するため制作が遅れてしまったそうです。本書がアジア圏発のコンピュータ解説書籍のスタンダードになることを、担当編集は初夢に見つつサポートを続けていきます。

皆様よろしくお願いします!