本記事は、株式会社ブレインパッド佐藤洋行様よりご寄稿いただいた「データサイエンティスト養成読本[ビッグデータ時代のビジネスを支えるデータ分析力が身につく!]」巻頭企画データサイエンティストの仕事術/第1章データサイエンティストに必要なスキルより抜粋したものです。
データサイエンティストはストーリーを語る
Loukides(O'Reilly Media,Inc.のバイスプレジデント)は、電子著書「What is Data Science?」(2010)の中で、データサイエンティストのはたらきについて、以下のように述べています。「データサイエンティストはデータを収集し、分析に適した形に整え、データにストーリーを語らせ、そのストーリーを他者に伝えている」。
筆者の所属する(株)ブレインパッドは、データの受託分析をおもなサービスとして提供していますが、そこで活躍するデータサイエンティストもまさに、データにストーリーを語らせることができる人物であり、Loukidesのこの言葉はデータサイエンスの現場からも大いに支持されるものと考えます。ここに、データサイエンティストのはたらきとは、「データを収集・分析し、その結果をビジネスの成功に反映できるように関係者に対して適切に働きかけること」と定義できるのではないでしょうか。
適した人材像
データサイエンティストに求められるスキルは、大きくIT系スキル、分析系スキル、ビジネス系スキルに分けられると考えられます。これからデータサイエンティストになろうとする、あるいは企業などで育成する場合、これらのスキルのいずれかを持った人材が適していると言えます。
ただし、ほかの系統のスキルを身に付けることの難しさは、現在持っているスキルの種類によって異なると考えます。それは、別のスキルに分類される業務と現在の業務の接する頻度が、それぞれ異なると考えられるためです。たとえば、ビジネス系スキルの高い営業マンが、IT系スキルを持つエンジニアの業務の概要は把握しているかもしれませんが、実際にコードを書いたり、コードを読んだりすることはまれでしょう。これに対し、IT系スキルの高いエンジニアが、ビジネス系スキルを持つ営業マンと業務で接することはよくあります。
好奇心を持つ
ビジネス系スキルを取得することが容易なわけではありませんが、IT系スキルと分析系スキルのいずれかを持つ人材が、データサイエンティストを目指す、または育成の対象とする場合に優位であることは間違いないでしょう。あとは、「核」となる好奇心の強さの有無で、データサイエンティストになれるかどうか(育成できるかどうか)が決まるのだと思います。
適正とされる人材の総数からしてSEまたはプログラマの中からデータサイエンティストが生まれてくる、ということはしばらくは主流になるでしょう。筆者の知るデータサイエンティストも、多くの場合はこれに当てはまっています。
さいごに
ビッグデータを活用しようという機運は、現在も高まり続けているように見えます。日本では、安倍首相が2013年5月に掲げた成長戦略の目標の中で、「ビッグデータを活用し、2020年までに10兆円規模の関連市場を創出する」と述べています。現在SEやプログラマとして働かれている方々の中には、数年後に新たなキャリアとしてデータサイエンティストを選択し、この市場で活躍される方もいらっしゃるでしょう。そしてその活躍によって多数の企業がビジネスの革新を起こしている、というのも近い未来としてあり得るシナリオです。
- 目次
- 巻頭企画 データサイエンティストの仕事術
- 第1章 データサイエンティストに必要なスキル
- 第2章 データサイエンスのプロセス
- 第3章 「ビッグデータインフラ」入門
- コラム データサイエンティスト協会の活動
- 特集1 データ分析実践入門
- 第1章 Rで統計解析をはじめよう
- 第2章 データサイエンティスト・リテラシー
- 第3章 RStudioでらくらくデータ分析
- 第4章 Pythonによる機械学習
- 第5章 データマイニングに必要な10のアルゴリズム
- 特集2 マーケティング分析本格入門
- 第1章 Rによるマーケティング分析
- 第2章 mixiにおける大規模データマイニング事例
- 第3章 ソーシャルメディアネットワーク分析
- 特別記事 Fluentd入門
- 特別企画 データ分析のためにこれだけは覚えておきたい基礎知識
- 第1章 SQL入門
- 第2章 Webスクレイピング入門