SEという仕事とその背景
顧客の求めるITシステムを、さまざまな要件と納期に合わせて構築、稼働させ、運用するのがSE(システムエンジニア)の役割ですが、納期や必要な機能、品質を実現するためには、実際は実に様々な苦労が、その背景にはあると言われています。仕事である以上、そうした苦労、そして悲哀はいかなるものであっても乗り越え、何事もなかったかのように、顧客にシステムを収めるのがプロフェッショナルの仕事ですが、実際にはあれこれあってたいへんなのだというのは、IT業界を3K(「きつい」「きびしい」「帰れない」)と称する表現があったり、「ブラック企業」としてIT企業が登場することも多い現実が物語る通り。そしてそこには、実に様々なエピソードがあふれています。
こうした、辛い、苦しい現実と向き合いながらも、明日に向かってそれを(たいがいは)乗り越えていくSEの姿が描かれた書籍『夜明けに向かってコアダンプ~SEの恥はかき捨て、僕の!私の!聞かせて珍プレー集~』が刊行されました。本書は、IT業界の「普通の人々による、様々な好プレーや珍プレー」を募集して、4コマまんがを交えて紹介しよう、というテーマでgihyo.jpに連載されている『きたみりゅうじの 聞かせて珍プレー』が書籍化されたものです。
コアダンプとは……
ちなみに、「コアダンプ」とはなんでしょうか。あなたがもしIT業界でそれなりの年月、働いてきた方であれば実感を持っておわかりいただけるかもしれないですが、Wikipediaによると、次のようになっています。
コアダンプ(core dump)は、ある時点の使用中のメモリの内容をそのまま記録したものであり、一般に異常終了したプログラムのデバッグに使われる。最近では、特定のプロセスのメモリイメージ(あるいはその一部)とレジスタの内容などの情報を格納したファイルを指すのが一般的である。しかし、本来は使用中メモリの内容を全てプリントアウトしたものを指した。
その名前は、かつて主記憶用に利用された磁気コアメモリの内容を、ダンプトラックが砂利や小麦などを大量にダンプ(どさっと落とす)するかのようにプリントアウトすることから来ている。
Wikipedia:コアダンプ
動かないシステムの原因を突き止める重要な役割を果たすのが、「コアダンプ」と言えそうです。でもなぜ、「夜明けに向かって」なのでしょうか。本書の中で描かれているわけではありませんが、それはもしかしたら、こんな場面を切り取った表現なのかもしれません。たとえば……
動かないシステムの原因を探るために、コアダンプと向き合うこと数時間。なんとか、要因は突き止めた。ふと窓に目を向けると、夜が明け、太陽がまさにのぼらんとしている。あと残り数時間でなんとか、システムを動かせるだろうか。もうひとぶんばり……。思わず頭に浮かぶのは、昨晩の顧客からの電話と、それを聞いた上司の顔…。
プロフェッショナルとして活躍するSEの人たちの、普段、語られることのないあれこれを、辛いことも苦しいこともみんな笑いにして、吹き飛ばしてしまおう。そこから、明日への活力が生まれるに違いないから……。などとは本書のどこにも書いてありませんが、そんな力を与えてくれるに違いない、楽しい1冊が本書です。IT業界に携わる人もそうでない人も、思わずどきどき、はらはらしながら、読んでみてください。