使い方だけでなく“考え方”まで学べる! 新しいスタイルのInDesignガイド

パソコンでページを作ることが当たり前になった現在の出版業界において、⁠どのソフトウェアを標準とするのか」というのは常に重要な問題です。一冊の本を作るためには非常に多くの人々が関わり、その過程でデータのやりとりも頻繁に行われます。このような現場で、各自が持つソフトウェアの種類がもしバラバラだったら、作業は難航しトラブルが勃発することでしょう。標準ソフトウェアを決めることは、出版までのスムーズな作業のためにもっとも大事な要素のひとつなのです。この状況を例えるなら、書類データをMicrosoft社のExcelやWordで作るのが当たり前になった現在、会社で使うほとんどのパソコンにMicrosoft Officeがインストールされているのと似ています。

パソコンでページを作ることをDTP(DeskTop Publishing)と言います。DTPの現場で、かつて標準とされていたのはQuark社のQuarkXpressというソフトウェアでした。しかし、Macパソコンが大幅なモデルチェンジを行った際、QuarkXpressは新OSへの対応に遅れを取ってしまったことで、現在はAdobe社のInDesignが標準になりました。市場がひっくり返るまでほんの1~2年しかかかりませんでした。

今から約15年前に起きたこの現象は「出版業界の現場に即座に対応できないソフトは廃れてしまう」ということを証明するひとつ前例となりました。締切に追われる業界だからこそ、スピード感と対応力は重要なカギなのです。そしてこのようなニーズは、現場で働く人に対しても求められます。あらゆる状況に素早く対応できなければ仕事を続けることが難しいのです。

PhotoshopやIllustratorなどとの連携性を踏まえても、今後、業界標準のソフトウェアがInDesiginから別のものに代わる可能性は極めて低いと考えられます。ますます必須ソフトウェアとして出版業界を率いていくでしょう。しかし、InDesiginというソフトウェアがどのようなもので、どこにどのような機能が搭載されているのかを覚えるだけでは、現場ではまったく使い物になりません。現場で大事なのは「どのケースでどのような機能をどれくらい深いところまで使えばいいのか」ということ。しかしこれは経験でしか学べないというのが常識でした。

InDesignをフルに使う Girls Magazine DTPは、これまで不可能であると言われていた「現場の経験」を学べるInDesignの解説書です。有名ファッション誌で実際に使われた誌面を例に、それらがどのようなプロセスでデザインされていくのかを、事細かく学べるだけでなく、実際のラフ(コンテ)やクライアントとの打ち合わせ内容まで把握することができます。DTPのブラックボックスと言われる部分まで解説しているのは、本邦発の試みでしょう。単なるInDesignの取扱説明書になることをあえて拒み、各工程の根底にある「現場の考え方」をきちんと見せしている本書は、類書のなかでも非常に貴重な一冊であることは間違いありません。

このような観点からも、⁠InDesignをフルに使う Girls Magazine DTP』は、DTPデザイナーが出版業界で仕事を続けていくための必読書と言っても過言ではありません。これからデザイナーを目指す若者はもちろん、デザイナーの仕事を始めて間もない人にとっても、プロフェッショナルな考え方を極めてナチュラルな形で身に付けるでしょう。