ますます高まるITシステムの重要性
Webシステム、業務システムといったITシステムの重要性はいまや企業の価値に直結するものとなっています。Google(Alphabet)、Facebook、AmazonやApple、MicrosoftなどのIT系企業が世界の時価総額ランキングベスト10に軒並み入っている昨今、Webシステムや業務システムを利用したトラフィックの経済的重要性、社会インフラとしての価値は5年前、10年前よりも飛躍的に高まっていると言えます。水道の蛇口をひねれば水が流れるのが当たり前で、断水すればすぐにニュースになるのと同じように、Webシステムや業務システムは問題なく稼働して当然、快適に利用できて当然という社会的認識もすっかり定着しています。
基盤システムの変化。キーワードは「クラウド」
重要性の高まるITシステムですが、ソフトウェア開発技術に比べ、システム管理・運用・監視の技術は体系的な知識があまり多くなく、これまで経験の蓄積をもとにした職人技によって支えられていた部分も少なくありません。さらに会社によっては開発者がこうした業務を行うケースもあるでしょう。これは、クラウドの登場、普及が大きく影響しています。Amazon Web Services(AWS)をはじめとするクラウドによって、ITインフラ、すなわちサーバやネットワークなどのハードウェア機器をエンジニアが自身で保守運用・管理する必要がなくなりました。すべて、クラウド上で管理されているため、機器の据付、配線のようなハードウェアに起因する業務が大きく減り、ITインフラを構築・運用するための工数が減ったことから、システムエンジニアがITインフラの管理・監視業務を兼担するようなケースが増えています。
増えてきた開発者によるシステム管理
クラウドの登場によって、ITシステムの運用・管理・監視業務は、ハードウェアの監視が不要になり、監視対象サーバの増減に柔軟に対応する必要が出てきているなどの変化が起きています。クラウドを利用すればソフトウェアでサーバの管理、コントロールができるので、サーバ側のソフトウェア開発者は、インフラエンジニアと分業することなく、システムを運用できるようになりつつあります。そのため、ソフトウェア開発者がサービスの立ち上げまでであれば、問題なく行える時代になりました。ただ、サービスがいったん運用フェーズに入ると、24時間365日、システムを問題なく稼働させる、快適に利用できる状態を維持する責任が生じます。これまでシステム管理を主たる業務としてこなかったソフトウェア開発者には、いきなり、責任をもって運用してくれと言われても、正直なところ何をどうすればよいのか、困ってしまう状態が起きかねません。
経験と勘に頼らない、ITインフラを支える知識
こうした状況に陥らないようにするためには、何が必要でしょうか。何を知っていれば、何か問題が生じても、顧客に迷惑をかけるような状態を最小限にし、もとに戻すことができるでしょうか。それには、きちんとした監視の体制とシステムを用意することです。トラブルシューティングを、トラブルが発生しているときに行うのは、非常に心の折れる作業ですが、最初から障害のヤマが張れていれば、原因はわかっているので、あと何分ください、といった言い方ができます。このたび刊行された「ソフトウェアエンジニアのための ITインフラ監視[実践]入門」では、このようにエンジニアが自分できちんと状況を把握、対処できる状態をどうすれば作れるか、それに必要なことは何かを、モデリングされた情報としてお届けする書籍です。厳しい状況に対処するために、事前に何を準備しておけばよいのか、エンジニアが自身で考えておくべきことから、実際の監視システムの構築に至るまで、経験と勘に頼らないITインフラを支える知識を、体系立てて解説しています。