そんな声を聞くことが増えつつあります。ITがビジネスに欠かせない存在となったいま、魅力的なアプリケーションや実用的なシステムを作り、支えるエンジニアは売り手市場となっています。
そのイメージからすると、「エンジニアはさぞかし大事に扱われているのだろうな」と思いがちですが、実際にはミスマッチが起こり、エンジニアが不幸になってしまうケースが少なからずあるようです。
ITを知らないため、過大な夢を描いてしまう経営者に振り回される
中小企業の経営者には、ITの知識がなく、「ITは儲かる」というイメージを持つ方がいまだいるようです。多少勉強すれば「なんでもできるわけではない」「きちんとしたものを作るにはコストがかかる」ということがわかるのですが、「クラウドってやつ、何人かエンジニアを雇えば作れるんだよね」なんていう勘違いをするケースも。まわりが止めそうなものですが、中小企業のオーナー=社長となっているケースも多く、ダメ出しすることは難しく、プロジェクトが始まり、エンジニアの求人が世に出ることになります。エンジニアなら地雷案件だとわかりそうなものですが、「知識がないから話が少しおおげさなだけだろう」「SIから事業会社に移れれば仕事がラクになりそう」という甘い考えから、入社してしまうことに。当然、すぐ後にお互いが「こんなはずじゃなかった」となり、エンジニアは配置転換、もしくは退職勧奨を受けたりする羽目になります。
そこまで大袈裟な話ではなく、「システムを自社で開発・運用できるようにしたい」という目的だとしても、うまくいくとは限りません。中小企業では、開発や運用の仕事がいつもあるわけではありません。エンジニアを募集しても、「結局仕事があまりないので、エンジニア以外の仕事もやってほしい」「エンジニアとしての仕事ではないので、報酬は下げます」という話になったりします。
「採用できないのは無能」という評価をおそれる人事が後先を考えず採用してしまう
- 「新しい技術を利用したいが、社内に経験者がいないので、外部から採用したい。とにかく急いでほしい」
そんな要望が出てくると、人事担当者は時に次のように考えています。
- 「採用できないと『人事が無能』という評価になる」
- 「微妙な人でも、採用するほうが採用0よりはずっといい」
- 「採用した後、割り振る仕事は開発部門がどうにかすべきだ」
そう考えると、求められる新技術の評価を優先してしまい、そのほかの能力や人物面の評価は緩くなりがちになります。採用できると、当初はいいのですが、すぐに「設計書が書けない」とか、「かんたんなコーディングすらできない」など、急いで採用したエンジニアへの不満が出始めます。社内にレベルの低い仕事は見つかるかもしれませんが、レベルの低い仕事をエンジニアのレベルに合わせて作っていくことは、会社にダメージを与えるだけ。結局、そのエンジニアの居場所はなくなってしまいます。
ミスマッチの原因を知り、対策を考えよう
以上の話は、エンジニア採用にまつわる不幸のほんのひと握りのケースにすぎません。「とにかく、エンジニアが足りない」「良いエンジニアがもっとほしい」という声とは真逆の事態を改善するには、エンジニアの特性を理解し、ミスマッチの原因を把握してできる限り齟齬をなくすこと、エンジニアが活躍できる環境を用意することが必要です。
新刊『その「エンジニア採用」が不幸を生む』では、2万名に近いエンジニアの職務経歴書を読み、エンジニア採用の責任者として年間700人以上の社員雇用の最終決裁を判断し、約500社の経営陣と面接してきた正道寺雅信さんが、エンジニア採用にまつわるさまざまな不幸の原因と対策を集大成しています。エンジニアを採用しようとしている方、そして採用されるエンジニアの方、必読です。