デジタルゲームのなかで、人工知能(AI)はどのような役割を果たしているのか、どんな想像をみなさんはしますか?
思い浮かぶのは、行動が決まっている敵キャラクターだったり、ロールプレイングゲームで同じ魔法を唱え続ける味方など、懐かしいゲームの中の1コマだったりするでしょうか。
現代のゲームではグラフィックの進化さながら、さまざまな技術が組み合わさり、たとえばよりリアルな思考をもって反応するキャラクターや、自ら思考しているようにつくられた敵などに応用され、より「面白く」なるようにAIは存在しています。
そのためには、人工知能が判断して、「意志」をもって行動を組み立てられるように設計されなければなりません。
ゲームに必要なキャラクターの頭脳は知能のシミュレーションと演技の両立
ゲームにおける意志決定の7つのアルゴリズム
では、ゲーム内で「意志」はどう決められていくのか? という点について、『人工知能の作り方』より抜粋しながら触れていきたいと思います。
多くの意志決定アルゴリズムのなかでも、デジタルゲームでは代表的な7つが主に用いられています。
- ① ルールベースAI
「もし~だったら、~である(if -then)」ルールを基本として組み立てる。
ルールベースの設計例
- ② ステートベースAI
状態と遷移条件を設計することで、キャラクターの行動を記述する。
ステートベースAIの例
- ③ ビヘイビアベースAI
振る舞いのレベルでキャラクターの行動を考える。優先順位を決めて分岐させていく。
- ④ タスクベースAI
課題をタスクに分解して実行順序を選択する。
タスクベースAIの例
- ⑤ ゴールベースAI
目標の達成から行動を組み立てる。
ゴールベースAIの例
- ⑥ ユーティリティベースAI
効用・見返りから行動を決定する(リスクとリターンの式を定義する)。
- ⑦ シミュレーションAI
AIに自分の行動を想像させ、試し計算する。効率的なシミュレーションを採用する。
それぞれに特徴があり、図のような得意なジャンル、向き、不向きを見極め、ゲームデザインに応じて実装していくのです。これらを単体で、または組み合わせてゲーム内で意志を生み出します。
7つの意志決定アルゴリズムの比較
本書では、ゲームに実装されている人工知能(ゲームAI)について詳細に紹介しています。キャラクターのみならず、情報の経路、街や群衆の制作、自由度の表現、環境に情報を与える手法など、「じつはこの裏で、AIはこんなふうに動いている」といった開発の実際から探求します。開発に関わっている方のみならず、ゲームが好きな方、ゲーム制作をとおして人工知能をくわしく知りたい、応用事例をみたい方にもおすすめです。