デジタル時代の動画編集をはじめるなら⁠今です!

リニア時代のアナログ動画編集

昔話を少し。編者が大学生の頃、動画編集の主流はアナログ編集でした。

アナログ編集とは、現在では見る機会が少なくなってしまったビデオテープ(家庭用VHS、8mm、DV、業務用ベーカムなど)を録画、再生用機器に入れて、プレビュー用のモニターを見つつ、スイッチャーやミキサー台を操作しながら編集するという形態です。

アナログなので、編集やダビングを繰り返す中でテープが劣化していきます。そのため、マスターをいくつか用意してテープの再生回数を極力減らすために、あらかじめコンテを描いて編集計画を練ります(コンテ作りは現在も変わりませんが⁠⁠。テープが伸びないように慎重に再生回数を減らしたにも関わらず、それでもやはり、最終的によくできた!と思った映像の劣化が始まっているということも多々あり、悲しい思いをしました。

そんな中、ノンリニア編集というコンピュータで動画編集が行えるという、画期的な方法が登場します。デジタルなので、劣化はほとんどないのですが、ドット抜けやコマ落ちするというデジタル特有の不具合や、映像がカクカクするというコンピュータのスペックに由来する現象はありました。それでも劣化が少ない、モニターを何台も見比べなくて済む、ということが魅力的でした。

まだその当時はコンピュータ本体、モニター、スイッチャー、ミキサー、ソフトを含めて100万円。プロではなくアマレベルで、この金額です。しかもデジタル動画撮影用カメラは別にしてです。無謀にも先生に「これからはノンリニア編集の時代です!」といって導入してほしいとお願いした記憶があります。当たり前ですが、結果は即却下です…。今思えば、先生、申し訳ございませんでした…。

アナログ編集機イメージ
アナログ編集機イメージ

パソコンで気軽に動画編集ができるノンリニア時代

あれから数十年の歳月を要して、パソコンで気軽に映像編集ができる時代がやってきました。

4Kや高画質で高音質などハードルを上げなければ、パソコンが約5万円、Adobe CCの年間プラン約6万円(単体であれば、年間約4万円)で計10万円ほど。ノンリニア編集の始めに比べたら1/10の金額で同じことが行えるわけです。スイッチャーもミキサーもすべてアプリの中に組み込まれているので、本当にパソコン1台でよいのです。

数年前までは、パソコンのスペックがリアルレンダリング(リアルタイムでレンダリングを行ってきれいな映像でプレビューしてくれる)ではなかったため、実際の書き出し(レンダリング)に時間が掛り、やはり動画編集に耐えられるだけのパソコンを買わなければという状態でした。

現在は先に述べたように、5万円くらいのパソコンでもストレスなく編集できます。現に、本書の動作確認として4万円くらいのWindows 10ノートパソコンを購入して試しましたが、数年前に編者がPremiere Proを試した時に比べ、GPUが対応していないことを除けば、引っかかるところなく操作できました。

パソコンもですが、アプリの処理速度も内蔵メモリーに合わせて最適化されていることを感じました。

Premiere Proの画面。右上のモニターでスイッチング編集しています
Premiere Proの画面。右上のモニターでスイッチング編集しています
左上のボリュームつまみのあるパネルがミキサーです
左上のボリュームつまみのあるパネルがミキサーです

動画編集をしてみたい・Premiere Proを使ってみたい方に

すでにパソコンで映像編集をするノンリニアが主流なので、リニアもノンリニアという呼び方もすでに廃れてしまっておりますが、アナログ編集で苦労した経験を持つ人間にとっては、最近のデジタル編集は「いい時代になったな」としみじみ感じるものがあります。

プロを目指す方はもちろん、とりあえず気軽に動画編集に触れてみたい、という方にもソフト面、ハード面をとっても敷居は下がっています。そのお手伝いをする意味で本書が役立つと思います。まったくPremiere Proを使ったことがない方に向けた内容ですので、一度使った経験のある方には物足りない内容かもしれません。ただ、動画編集のワークフローを手を動かしながら完成までひと通り経験するという意味で、楽しんで学べる書籍としておすすめできます。

編者はアナログ編集時代の人間ですので、これから使いはじめられる方とスタートラインは同じです。同じ目線でデジタル動画編集を勉強しましたので、その成果を皆様と共有できたら嬉しく思います。