フィンテックでますます求められる銀行システムの24時間化

フィンテックで銀行業界はどう変わる?

今、金融業界では「フィンテック(FinTech⁠⁠」という言葉が注目されています。これは、ITを使った革新的な金融商品・サービスを指す言葉で、今後そのようなサービスが続々と登場すると言われています。

IT業界の中では比較的閉じられた環境でシステムを開発・運用をしてきた金融系のSEもこの変化は無視できません。具体的にどんな変化が予測されているのか、銀行を例に順に見ていきましょう。

(1)キャッシュレスとキャッシュアウト

キャッシュレスとは決済に現金を使わないことを指します。今でもクレジットカードや電子マネーによる電子決済が行われています。銀行振込の中心システムである全国銀行データ通信システムが2018年に24時間稼動を実現しますが、これを機に徐々に銀行の決済も24時間可能になるでしょう。そうなればインターネットバンキングの利用が増え、キャッシュレスが一層進むと予測されます。

キャッシュアウトはATM以外で現金を引き出せるサービスです。法整備も進んでおり、早ければ2017年中にスーパーのレジで現金が引き出せるようになるかもしれません。

(2)IT企業の金融サービス参入

今、フィンテックとして語られるものの大半はこれでしょう。すでに国内でもいくつかのスタートアップ企業がインターネットを通じて資金決済・資産管理・融資・投資などの金融サービスを始めています。そこで、銀行システムがAPI(アプリケーションプログラムインターフェース)を公開してこれらのサービスと連携することで、より便利で多様なサービスに発展することが期待されています。

(3)仮想通貨

ビットコイン(Bitcoin)に代表される仮想通貨は、国を超えて利用できることから両替の必要がなく手数料も少なくて済みます。そのため、海外と取引を行う際に大きなメリットを享受できると言われています。海外や国内の一部では、実際に商品の売買やサービスの対価として利用されています。

望まれる銀行システムの24時間化

フィンテックにより銀行システムはどう変わるでしょうか? 外部システムとの連携機能やセキュリティ対策が重要になると考えられます。

また、これまで銀行システムは経済の基盤として、止まらずに動き続けることが求められてきましたが、フィンテックでその要望はより高まるでしょう。多くのWebサービスと連携するようになれば、夜間も含め24時間サービスを提供するのは避けて通れません。事故や災害で止まらないのはもちろんのこと、システムのメンテナンスもサービスを停止せずに行う必要があります。

24時間365日動かし続けるために

これまで銀行システムの多くはメインフレームという大型コンピュータで構築されてきました。というのも、メインフレームは機器やソフトウェアにトラブルが起きても、簡単にシステムが止まらないように二重三重の工夫がなされているからです。何が起こっても業務を止めないという目的を達成するため、部品やデータを冗長化したり、OS、ミドルウェア、ディスク装置の各所に自動的なエラーのリトライや自動リカバリーの機能を実装したりしています。

銀行システムはよくレガシーだと揶揄されますが、確実に進化はしています。とくに前述した信頼性に関連する機能は、コンビニATMやインターネットバンキングのような新たな利用形態が増えるたび、また震災などが起こるたびに強化されてきました。その経緯や機能のしくみは、書籍進化する銀行システムで詳しく解説しています。

技術が進歩すれば、銀行システムもメインフレームではない別の技術で構築されるようになるかもしれません。たとえそうなっても、メインフレームで培われた設計思想や機能は今後も変わらないと考えられます。そんないつの時代にも必要とされる知見を、金融系SEは身につけておきたいものです。