トラブルが絶えないITシステム開発の実情
数年前、こんな「定説」がありました。最近は改善されているというデータもありますが、ほとんどの企業にとって、もはやシステムなしには仕事ができない現代でも、いまだにシステム開発の成功率は決して高くありません。
- 「こんな欠陥だらけのシステムにお金なんて払えない」
- 「ちゃんと言われたとおりの機能を作ったはずです」
このような応酬は、IT訴訟では決して珍しくない光景です。お互いにすれ違ったままシステムが完成してしまい、取り返しのつかないところでトラブルになると、訴訟になってしまいます。
ほかにも、システム開発では、小さなトラブルは必ずと言っていいほど起こります。
- 「正式契約はまだだけど、納期に間に合わないから先に開発をスタートした」
- 「あとから開発すべき機能を発見したから追加費用を見積もった」
- 「納期に間に合わせるため、業務に支障がないバグはあとで直すことにした」
これらのちょっとしたトラブルは、システム開発においては日常のことです。はじめの予定どおりにすべてがうまくいくプロジェクトはないと言っていいでしょう。
しかし、このちょっとしたトラブルを解決することができず、関係がこじれてしまって、「訴えてやる!」とどちらかが行動に踏み切ってしまえば、あっという間に訴訟になってしまうのです。
裁判に「真の勝者」はいない
いったん訴訟になってしまうと、その解決には、数年単位で時間がかかることもあります。弁護士を呼び、膨大な時間をかけて資料をそろえ、開発を担当したエンジニアやマネージャーにヒアリングを行う……など、大きなコストと時間と労力がかかります。
もし、裁判に負ければ、もちろん損害賠償を支払ったり、受け取るはずだった開発費用がもらえないような状況に陥ってしまいます。その額は、小規模なものでも数千万単位、大規模になると億を軽く超えるでしょう。たとえば、記憶に新しい、銀行と大手ベンダーとの紛争では、損害賠償額がなんと74億円以上にのぼってしまいました。会社にどれだけの影響があるのか計り知れません。
たとえ、裁判に勝ったとしても、開発ベンダーと発注したユーザー企業の関係は、壊れてしまったまま、元には戻りません。ベンダーにとってはお客さんの信頼を失い、仕事の機会を失ってしまいます。そんなことを重ねていけば、いずれほとんど仕事を受けられなくなり、結局、会社には大きなダメージとなってしまいます。
どちらにせよ、1度裁判になってしまえば、勝っても負けてもお互いに不利益しか生まないのです。
判決は「失敗の宝庫」。失敗を糧に、成功へのノウハウを学ぶ!
では、どうしたらトラブルを未然に防ぎ、システム開発を成功させることができるのでしょうか。
それに応えるのが、本書『成功するシステム開発は裁判に学べ!』です。
裁判所は、トラブル解決の最後の砦です。そこに寄せられる問題は、ITシステム開発にとって、すばらしい「反面教師」と言えるでしょう。裁判の判例というと、独特な言い回しが難解なイメージがありますが、本書ではわかりやすく丁寧に読み解き、現場で使えるノウハウを惜しみなく解説しています。
あなたのプロジェクトを成功させるために、ぜひチェックしてみてください。