※『Androidを支える技術〈Ⅱ〉──真のマルチタスクに挑んだモバイルOSの心臓部』(技術評論社、2017)、
第1章コラムより
2016年のスマホ(Smartphone)の出荷台数は、世界で14億7,000台を超えています(※)。スマホは多くの人にとって、とても身近なコンピュータになりました。
かつて、携帯電話のシステムと言うとCPUも非力でメモリも少なく、MMU(Memory Management Unit)はありませんでした。スマホになってからはMMUは標準で付き、以前よりはCPUは速くなりメモリも増えました。とくにMMUが標準で付いたのは携帯電話業界における時代の境目でした。
さて、スマホ全盛の今でもスマホのCPUは非力でメモリも少ないのか、そしてそれは今後も続くのでしょうか。今後について遠い将来にスマホがあるのかもわかりませんので近い未来についての推測になりますが、PCとの比較をしながら大まかにスマホの今と近い未来を見ていきましょう。
画面サイズ
まずPCとスマホで違い続けるのは、画面サイズであると考えられます。CPUが速くなろうとメモリが大きくなろうと画面解像度が上がろうと、物理的な画面サイズは少なくとも向こう数年はPCと呼ばれるものよりは小さいままであるはずです。そして、画面サイズが小さいことから来るUI(User Interface)関連の特徴は時が経っても変わらないでしょう。
CPU
スマホのCPUがPCに比べて遅いというのは、本質的には熱とバッテリーの問題です。スマホのCPUをより速くするのは技術的には可能ではありますが、そうすると熱とバッテリー消費が悪化します。技術の進歩と共に熱とバッテリー消費を抑えつつ高速化していくとは考えられますが、熱とバッテリーという制約があり続けるのは変わらないでしょう。
メモリ
メモリのサイズ自体は大きくなり続けるでしょうし、近いうちに現在のPCを上回るのも十分に予想できます。スマホにはスワップがありませんが、その点についてはNAND(Negative-AND)フラッシュメモリ(高密度の不揮発性メモリ)とは違う2次記憶が使われるようになればスワップが有効になる日も来るかもしれませんが、今のところその兆しはありません。
ポインティングデバイスと入力機器
これらも、PCとは大きく違いがあります。元々が電話である都合から音声入力は付いていますし、タッチも当面は中心的な入力方法であり続けそうです。
歴史的にも、熾烈な競争が繰り広げられてきた携帯端末の世界。OS環境は、ここのところiOSとAndroidの二強で落ち着いたかのように見えますが、これから一体どうなっていくのでしょうか。端末ユーザー数もまだまだ伸びる余地がありそうですから目が離せません。