ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)はインフラだ
子供から大人までLINEやfacebookを使っています。LINEやfacebookなどのSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は日常の中に染み渡って、携帯電話よりもたくさん使われているツールになりました。単純なメッセージのやりとりだけでなく、AIと連携したBOTプログラムが人間の代わりの仕事までするようになっています。いまや情報インフラに成長したのは言うまでもありません。しかしその背後に広がるシステムの巨大さは、一般人にとって想像を絶するものになっています。本書は、SNSを舞台に動くソフトウェアアプリケーションのしくみを根本から示します。しかも、さまざまなSNSを構築してきたITアーキテクトである筆者が解説しますので、きわめて本格的でかつ実践的な内容になっています。
ゲームだけじゃないSNSアプリ
最初は質素な掲示板のようだったSNSですが、どんどん変化しています。10年ほど昔にmixiがサービスを開始した、農場ゲームをやったことを覚えていませんか。これがわかりやすい契機でした。つまり、「人と人のつながりを利用するようなソフトウェアを開発して、そのサービスをうまく運営すれば、何か効率の良いビジネスができる!」と多くのSNS事業関係者が気が付いたのです。そこでLINEでもゲームが生まれ、facebookでも同様なサービスが運営されています。ユーザーに課金ができる魅力的なサービスができれば、安定的な収益が望めます。そのため各SNS運営会社は新しいサービス開発にしのぎを削っているのです。
SNSビジネスはたいへん
しかし、実際はそううまくいきません。そもそも多種多様な人間がSNSを利用しているからです。多くのユーザの要望に対応したり、クレーム処理したりするのもたいへんですが、課金やアイテム販売でお金のやり取りが発生すると、一般的な企業では対応ができない事態に陥ります。
さらに、ITシステム側の問題も発生します。ユーザ同士のつながりをソーシャルグラフと呼びますが、それをそのまま企業が利用していいのかということもさることながら、個人情報を保護するために、さまざまな工夫が必要になります。ゲームなどの比較的シンプルなものを例としてざっと考えても、ユーザ認証をして、アプリ使用の認可をして、ゲームアイテムの管理や課金、クレジットカードとの紐づけ……問題が山積みになります。新規参入しようとしてもハードルが高く見えます。本書では、筆者のさまざまなSNS開発経験から、そうした問題への対策もきっちりと系統的に解説をしています。SNSをアプリケーションのプラットフォームとして育み(書名の原点ですが)、サーバだけでなくスマホアプリの開発方法まで説明をします。まさに1冊でSNSプラットフォームビジネスに必要なものが得られるのです。
ソーシャルアプリの進化はAI(人工知能)とともに
SNSを舞台に、このしくみを利用してサービス/アプリケーションを開発するにはどうしたらいいのか、多面的に分析しビジネスに応用する手がかりを示す、それが本書の要諦です。SNS上の資源を単に利用するだけではビジネスは広がりません。多くのITベンチャーの中で成功している(ユニコーン)企業はこのあたりの理解が深いようです。日本でもGoogle Homeが販売開始され、LINEではClova、アマゾンではAlexaやEcho、など音声認識AIとプログラムを組み合わせたサービスを本格的に始めつつあります。これがさらにSNSと深く結びついたらどうなるでしょうか。ITが今以上に無視できない存在になります。このあたりの流れがどうなるのか本書でも深く解説をしました。ITをコアに事業を経営しないと、これから企業は生き残れないのです。今後どのようにITビジネスを考えていくのか開発者だけでなく、Webに関わるすべての方にお勧めします。