高度化するIoTシステム
IoT(Internet of Things)は、ビジネス用語としても注目されるにしたがって、デバイスや通信、クラウドがさらに身近に使いやすく、低価格化することで、すでに多くの業種/業態で利用され始めています。ただし、従来のITシステムとは異なり、IoTシステムの設計/構築は、ハードウェアとソフトウェアの両面を考慮した多岐にわたる知識とノウハウが必要となってきます。
現時点では、各種センサーから取得したデータを可視化して警告を出すものや、画像や動画を記録するような目的で導入されるケースが多いですが、今後は機械学習/ディープラーニング(深層学習)や音声認識を利用したIoTシステムも導入されていくことでしょう。
図1 POCKETALK
すでに一般消費者向けには、スマートスピーカーと呼ばれる「Google Home」や「Amazon Echo」のほか、さまざまな言語が翻訳できる通訳機「POCKETALK」( 図1 )も発売されています。これらの製品やサービスは、技術要素としての機械学習やディープラーニングが活用されています。
また、実際にディープラーニングを体験できる開発者向けのビデオカメラ「AWS DeepLens 」も発表されています。
どんな技術要素が必要なの?
IoTシステムは当然、設置する場所が屋外か屋内の違いだけでも考慮すべき点が異なるように、利用する業種/業態で必要な技術要素は異なります。また、各技術要素は今後もさらに進歩することも予想され、流動的なところも多いのが実情です。
これらも踏まえて、現時点では、次の技術要素を押さえておく必要があるでしょう。
デバイス/ファームウェア
プラットフォームやセンサーの選定、デバイスの見積もりや調達、量産、クラウドとの連携を意識したファームウェアの設計のほかに、電波法などの関連する規制や法律なども知っておくべきでしょう。
通信
セルラー通信(3G/4G/5G) 、LPWA(Low Power Wide Area)のLoRaWANやSigfox、ソニーのLPWA、セルラーLPWAであるLTE Cat.MやNB-IoTなど、目的/用途/コストの選択肢が幅広いです。
クラウド
「Amazon Web Services(AWS) 」 、「 Microsoft Azure」 、「 Google Cloud Platform」からもIoT向けのサービスが提供されています。
セキュリティ
ID/アクセス管理のための認証方法など各種ガイドラインやホワイトペーパーを参照する必要があります。
その他
消費電力の効率化や大量回線の管理など技術的課題もあります。
このように、IoTシステムの技術要素は多岐にわたり、さらに機械学習や音声認識などの新しい分野まで含めると、一人ですべての要素を深くまで知ることは難しいのが現実です。しかし、各技術要素を学習するのに試してみるコストは非常に低くなっているため、一人でも一通り動くIoTシステムを作るのはそれほど難しくはありません。まずは、実際に動かしてみることをお勧めします。
『IoTエンジニア養成読本 設計編 』では、ここで挙げた各技術要素をコンパクトに説明しています。幅広い知識を整理するのに、ご利用ください。