クルマの未来と変わりゆくモビリティ社会

次世代自動車のキーワードは「CASE」

みなさんは、次世代自動車を語る上で、⁠CASE(ケース⁠⁠」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

「CASE」は2016年、パリモーターショーでドイツのダイムラー社が中・長期戦略として発表したもので、自動車の在り方や概念を変える革新的なプランとして打ち出されました。

相互接続を高める「Connected」⁠コネクテッド⁠⁠、自立走行の実現を目指す「Autonomous」⁠自動運転⁠⁠、カーシェアリングなどの多様なニーズに対応する「Shared & Services」⁠シェアリング⁠⁠、自動車を電動化する「Electric」⁠電動化)の頭文字をとったもので、近年注目を浴びているEVや自動運転、コネクテッドカーといった次世代自動車の技術要素を象徴する言葉として見ることもできます。なかでもEV、自動運転といった言葉は、雑誌やニュースでもよく目にするようになりました。

加速するEVシフト

EVに関していえば、現在タイプとしては大きく4つの種類に分けられます。1つ目は、すでに広く普及しているハイブリッド(HV⁠⁠。ガソリンと電気を利用しての走行ができますが、外部電源からの充電はできません。2つ目はハイブリッド車に外部電源からの充電機能を付加したもので、プラグインハイブリッド(PHV/PHEV)と呼ばれるタイプです。3つ目はガソリンによる内燃機関を排し、完全に電気だけでの走行を可能にした電気自動車(EV⁠⁠。4つ目は、水素による発電で得た電気によって走行する燃料電池車(FCV)です。

EVといえば、米国のベンチャー企業、テスラが有名ですが、国内でも日産自動車のリーフなどを筆頭に、電動化へシフトする動きは加速している感があります。現状では充電設備や充電時間など、実際に使用する際にまだ不安がないわけではありません。ただ逆にそこに不安がなくなれば、EVシフトは意外に早く進むかもしれません。もちろん、20世紀初頭から続くガソリン文化がすぐになくなるとも思えませんが、世界の潮流を見ていると、何か特別なことでもないかぎりは、やがてEV全盛の時代がやってきそうです。

自動運転とAI

EVと同じく次世代自動車の技術として注目されているのが「自動運転」です。現在のクルマは、電子制御が進んでおり、走る、止まるといった基本的な機能はもちろん、トランスミッション、ステアリング、ハイブリッド制御など、ほとんどがECU(Electronic Control Unit)という専用のコンピュータによってコントロールされています。

自動運転システムは、各種センサーやカメラとともに、それら専用のECUを司る頭脳(コンピュータ)に知能(AI)を与えたようなものです。現在でも多くのクルマには、自動ブレーキやレーンキープといった運転をサポートする機能が備えられています。自動運転のレベルは、0〜5までの6段階に分かれますが、レベル2までは運転をサポートするレベル、レベル3以上が実際自動運転システムによる運転が可能になるレベルです。現状の市販車はレベル2以下です。一般道において、レベル3以上のクルマが走行可能になるには、技術の問題だけでなく、法的、倫理的な問題も絡んでくるため、実現のために乗り越えるべき壁は低くはないでしょう。

次世代自動車がもたらす未来

次世代自動車は、単にバッテリー技術やAI技術などを搭載した車というだけでなく、交通インフラの機能拡張や移動のあり方を変えるなど、モビリティ社会に変革をもたらす役割も担っています。

コネクテッド、自動運転、EVの発展の先には、移動のあり方を自由にするシェアリングサービスの実現も見えてきています。⁠CASE」という4つの要素が絡みあうことで、自動車業界だけではなくモビリティ社会が大きく変貌していく可能性も秘めているのです。卑近な例でいえば、音楽の聞き方が、レコードやCDの所有を前提にしていた時代から、ストリーミングによって好きな音楽を好きなときに聞くような時代に変わりつつあるように、クルマも所有するものからシェアするものに変わっていく時代が来るのかもしれません。