昨年末、100億円キャンペーンで話題となったPayPayはもちろんのこと、楽天Pay、LINEPay、ドコモのd払い、auのauPayと、キャッシュレス決済サービスは百花繚乱の様相を呈しています。昨年から今年にかけて、急速に話題になった感のあるキャッシュレス決済ですが、そもそもなぜ今、「キャッシュレス決済」なのでしょうか?
キャッシュレスの波は中国から?
キャッシュレス決済が話題になり始めたそもそもの発端は、中国でのQRコード決済の普及にあると言えるかもしれません。中国ではアリババの提供する「アリペイ」とテンセントの提供する「WeChatペイ」という2つのQRコード決済が、決済環境を大きく変えることに成功したのです。
QRコード決済の利点は、その「導入の簡単さ」にあります。従来のクレジットカードなどの導入には、専用の端末を用意する必要があり、費用面や手間の面で、小さくないハードルがありました。しかしQRコード決済の場合、店舗側は紙にプリントしたQRコードを用意するだけで、決済環境の導入ができてしまいます。そのため中国では、コンビニやファストフード店はもちろんのこと、個人経営の食堂や露店、路上での花売りの店員でさえも、キャッシュレス決済を導入しているといった状況が生まれているのです。
決済がスマホだけで済んでしまう
またこうしたキャッシュレス決済導入の背景には、「利用者側の簡便さ」もあります。従来のクレジットカードのように、契約に時間がかかったり、何枚ものカードを持ち歩いて使い分けることもなく、スマートフォン1台で、すべての決済をまかなえてしまうのです。消費者は、スマートフォンにインストールした専用のアプリで店頭のQRコードを読み取るだけで、決済を行えます。そして、決済履歴はスマートフォン上でいつでも参照でき、家計簿のような形で整理することもできるのです。
キャッシュレス決済普及の結果、中国都市部の消費者を対象としたアンケート回答者の98.3%が、過去3カ月の間にモバイル決済を利用したと答えたという結果が出ています。さらに、中国のQRコード決済を含む2017年のモバイル決済件数は375億5,200万件、金額は202兆9,000億元(約3,412兆円)にのぼるといいます。
日本への影響は
このような中国でのキャッシュレス決済の爆発的な拡大は、「日本は無関係」とはいえない状況を生み出しました。先の「爆買い」ブームは収まったものの、中国人観光客は、いまだ日本のインバウンド戦略において重要な位置を占めています。しかしこうした中国人観光客が日本に遊びに来た時、現金でしか買い物ができない店舗が多いことに、大きな驚きと不満を持ち始めているのです。つまり、中国は「キャッシュレス先進国」、日本は「キャッシュレス後進国」というわけです。
こうした状況に危機感を覚えたのが、日本政府です。2020年の東京オリンピック開催に向けて、キャッシュレス決済の普及を進めようと、2018年4月には経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」を発表。2025年までに日本のキャッシュレス決済比率を40%まで引き上げることを目標として掲げました。こうした国の動きを上げて、LINEや楽天、ソフトバンク、ドコモといった企業が一斉に新規参入やサービス強化を図ったのが、ここ最近のキャッシュレス決済普及の背景ということになります。
キャッシュレス決済には、ここで説明した以外にも、さまざまな普及の要因や課題、将来性があります。時代を先取りしたいあなた、「60分でわかる! キャッシュレス決済 最前線」を読んで、いちはやく決済の未来について考えてみませんか?