みなさんは「IoT」という言葉からどんなイメージを思い浮かべますか? 「工作機械の稼動状態を把握し、工場全体の稼働率を改善する」「河川の水位を監視して警報を鳴らす」といった規模の大きなシステムを連想する方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、もっと小規模な、たとえば「自宅の温度・湿度を計測してクラウドへ送り、グラフ化する」といったパーソナルなしくみだって、りっぱなIoTです。そして、近年のRaspberry PiやArduinoといったマイコン・開発ボードの登場もあり、こうしたごくごく小規模なIoTシステムを作るハードルは大きく下がっています。実はIoT開発って、意外と簡単にはじめられるようになっているのです。
どんなものを作れるの?
「意外と簡単」と言われると、興味の湧いてくる方もいらっしゃるのではないでしょうか……あれ? そうでもありませんか? では、「パーソナルなしくみ」としてどんなものが作れるのか、いくつか挙げてみることにしましょう。
- 先にも述べた、自宅の温度や湿度を計測してクラウドに送信し、そのグラフをどこからでも確認できるしくみ
- さまざまな家電の消費電力を計測してやはりクラウドに送信し、家電ごとの消費電力の特徴をつかんだり、節約に役立てられるしくみ
- サーモグラフィカメラを使って熱分布を計測し、ヒートマップをブラウザ上から確認したり、モーターと組み合わせて熱源を追わせたりするしくみ
いかがでしょうか。こういったことが、開発ボード+αだけの簡単な電子工作だけで実現できるのです。
もちろんここに挙げたものは一例にすぎません。日照センサや音感センサなど「なにを計測するか」だけでもたくさんの選択肢がありますし、アウトプットについても、可視化や自動化だけでなく「家の外から動かす」といったことが実現可能です。
ESP32を使ってみよう
さて、ここまで読んでくださっているあなたであれば、今すぐにでもIoT開発がはじめたくなっているに違いありませんよね!
そんなあなたにおすすめの一冊が『IoT開発スタートブック ─ESP32でクラウドにつなげる電子工作をはじめよう!』です。実は先ほど挙げた3つの例は、本書で扱っている作例をそのまま紹介したものです。クラウド上でグラフ化したりモーターと組み合わせたりなんて、難しそうに見えるでしょうか? 心配はいりません。すでに述べたとおり電子工作ははじめてという方でも無理なく作ることのできるものばかりですし、本書ではやさしく順を追って解説されています。
ところで、このように無理なく作ることのできる秘密は「ESP32」という見慣れない言葉にあります。これはいったいなんでしょうか。
ESP32を搭載した開発ボード
「ESPr Developer 32」
ESP32は、Arduinoなどと同じマイコンの一種です。センサやモータなどを司り情報を送受信する、IoTシステムの中核となる部分ですね。安価で、Wi-Fiモジュールがはじめから搭載されていること、Arduinoと同様の開発環境を使えることなどから最近とくに人気が高まっているマイコンがESP32なのです。本格的なIoTシステムへの利用からホビー用途まで幅広く応用されており、「インターネットにつながる電子工作」としてIoT開発をはじめるには、まさにうってつけのマイコンと言えるでしょう。
ESP32は電子部品を扱う通販サイトなどで広く取り扱われており、入手は難しくありません。本書では必要な道具や部品もしっかり紹介されていますから、それらと一緒に購入することで、すぐにでもIoT開発を体験しはじめることができるでしょう。
サーモグラフィカメラとOLEDを接続して熱分布を可視化する様子
さあ、さっそくIoT開発をはじめましょう!