「Pythonスタートブック」のその後
2010年5月に「Pythonスタートブック」の初版を出版して以来、多くの方々にご愛読いただきました。これは、Pythonが世界的に人気を拡大する流れにうまく乗れた面も大きいので、まさに幸運だったと感じています。ここ数年は読者の方と直接お話しできる機会も多くあり、「わかりやすかった」という感想をいただけると嬉しく思う一方で、「次に何を読んだらいいですか?」という質問になかなかよい答えを見つけられずにいました。そんな状況の中で2018年の秋ごろ「Python 3スキルアップ教科書」の企画に関わることになりました。
編集を担当してくれた技術評論社の青木さんと相談し、Pythonの入門書を読み終えた読者層に対し、プログラミングスキルをさらに磨くための本を目指すことになりました。具体的には、1つの話題を4ページから6ページ程度の節でまとめ、最後に問題を付けることで理解度を確かめられる構成にするというものです。また、問題の多くを実際にコードを書いて回答する形式にするとこで、読んで理解するところで終わりにしない本にできると考えました。
ただ、当時私が別の執筆の企画を抱えていたために、1人で書き上げるのは困難だと感じ、共著者を探す必要がありました。これには、株式会社リーディング・エッジ社のみなさんが協力してくれることがすぐに決まりました。リーディング・エッジ社は、私も運営に関わっている「みんなのPython勉強会」に毎月会場を提供してくれている会社です。勉強会はその時点で3年ほど継続していたので、共著者の3人の方々とはすでに面識もあり、4人での執筆作業は滞りなく進めることができました。
本書の特徴
本書は、構成を節ごとに分け、それぞれをある程度独立した話題となるように構成したため、どこからでも読むことができます。Pythonの基本的な文法を知ったあと、さらに学びたい機能の節を読み、練習問題を解くことで、知識をより強固なものにできると思います。1章と2章はPythonの概要と基本事項なので、はじめから読み進めることでPythonの基礎知識が身に付いているかを確認できます。3章~7章は章ごとに関数やクラス、エラー処理などまとまった内容になっていますので、学びたいと思う内容を章ごとに読むという使い方もおすすめです。8章は標準ライブラリを節ごとに解説しているので、ほとんど話に繋がりがありません。また、標準ライブラリはここで紹介したものだけではありません。8章まで読み終えたら、付録の「さらに学んでいくために」を参考に、次のステップを目指してみてください。
Pythonと資格試験
情報処理推進機構(IPA)が実施する情報処理技術者試験が、2020年春の試験から、これまで選択問題の1つにあったCOBOLをPythonに置き換えるという話題をご存じの方も多いかもしれません。民間ではすでにPythonの資格が存在し、Pythonエンジニア育成推進協会が実施するPython 3エンジニア認定基礎試験は人気の資格の1つです。この試験は「Pythonチュートリアル」を主教材にしています。「Pythonチュートリアル」は、Pythonの生みの親であるグイド・ヴァンロッサム氏が書いた文章で、短く簡潔にPythonの機能を網羅している優れた入門書です。「Pythonチュートリアル」に代わる教材はありませんが、「Python3スキルアップ教科書」は、このPythonエンジニア育成推進協会の監修を受けており、試験勉強のための参考図書の1冊になっています。
入門と熟練のあいだ
「プログラミングは難しい」とよく言われます。ただ、技術の進歩によって少しずつ簡単になっているのも事実です。誤解を恐れずに言えば、C言語よりJava、JavaよりPythonの方が簡単にプログラミングできます。それでもやはり、プログラムは1文字も間違えられませんし、話し言葉のような曖昧な表現はまったく受け付けてもらえません。つまり、プログラミングができるようになるには訓練が必要です。
Pythonの場合、初心者向けの入門書は多数発売されているので、最初の一歩には困らないでしょう。また、プログラミングがある程度できるようになると、インターネットを使って情報を得ることで、ほとんどの問題を1人で解決できるようになります。しかし、この入門と熟練の間をどう埋めるかが大きな課題です。「Python3 スキルアップ教科書」は、この役割を担うことを目標にして作成されました。Pythonエンジニアを目指す人が2冊目の本として本書を選ぶことで、熟練者へのスキルアップのお役に立てることを願っています。