努力と根性は長続きしない
働き方改革の名のもと、効率的な働き方の模索が続けられています。ただ、実際には「残業させない」ということだけが先走りして、個々の努力と創意工夫でなんとかさせようとする残念な改革があとを絶ちません。
残業はさせないけど要求する仕事の量は同じ、そして仕事の量は同じなのだから給料も上がらず(むしろ残業代がなくなりマイナス)となれば、個人の負担だけが増えた形になります。これでは全員が病んでしまいます。仕事のやり方を根本的に見直さなくてはいけません。
そのために会社が取り組むべき課題のひとつが、効率的で能率的に働けるシステム環境を用意することです。ビジネスは変化しますから、必要と思われる機能や仕組みをすぐにでも追加・変更できる柔軟なシステム基盤があれば、なお理想的です。そこで、会社システムのクラウド化を考えます。
会社が大きいほど高くそびえる効率化の壁
仕事を効率化する際に考えることとして、3つの柱があります。このうちクラウド化が効力を発揮できるのは「現場の理論」と「テクニカル手法」の2つです。
経営管理には、意思決定の問題、予算確保の問題、権限移譲の問題があります。何をやるにも稟議が必要なのに、その稟議が決済されるまで時間がかかってしょうがない、なんてことはわりとありがちかと思います。これは技術的に解消するのは難しく、企業文化やトップの判断に依存します。
現場の理論には、開発プロセスの問題、管理ツールの問題、情報共有の問題があります。また、サービス提供側が手戻りや自己判断を避けるあまり、利用者が判断できないことまで必要以上に細かく要件を聞いてしまう、サービス思考の問題もあります。これらは現場レベルで判断して導入したり、やり方を工夫できる部分です。
最後のテクニカル手法は、自動化の問題、自動化ツールの問題、セキュリティの問題、運用保守の問題があります。これらは個々の場面に応じて対応していくことになります。
クラウド化は開発や業務体制を見直すチャンス
クラウドなら、提供するサービスの拡大縮小に応じて、システムを大きくすることも小さくすることも簡単です。従来型の、ハードウェア機材からそろえていくシステム構築(オンプレミス)では初期投資が嵩んで躊躇してしまうような実験的な取り組みも、クラウドであれば試しやすいでしょう。
クラウド化するもうひとつのメリットとして、インフラをコードで管理できるようになる点が挙げられます。いわゆる“Infrastructure as Code”です。追加コストの判断をどうするかはポリシー次第ですが、やろうと思えば監視ツールからのさまざまな警告に対して一時的にCPUパワーやストレージを自動で追加するといったことも可能ですし、トラブル時はそのシステムを捨てて再構築するといったこともコマンドひとつで完了します。
また、クラウド自体の信頼性も向上し、いまや災害対策や冗長性確保といった要件にも符合する状況となりました。
このような、会社におけるクラウド活用と体制づくりについて、『エンタープライズシステム クラウド活用の教科書』では詳しく解説をしています。単純にクラウドを導入するだけではダメだと感じている方にとって、ヒントとなる一冊です。