テクノロジーがビジネスの「前提」になる時代
これからの時代は、あらゆるモノと人がつながり、さまざまな場面でデータやITをフル活用するスマート社会がいよいよ実現していきます。デジタル技術を活かした製品やサービスは、毎日のように産声を上げています。新たなワークスタイルやライフスタイルもまた日々提案され、私たちを取り巻く社会環境はさらなる進展を遂げようとしています。
あらゆる組織において、これまでにもましてテクノロジーへの注力が問われています。株式市場に目を向けても、デジタル/5G関連業種では、経済低迷に反して株価の維持成長が見込まれる銘柄が少なくありません。まさに今、先進的テクノロジーにコミットしているかどうかで、企業が評価される時代になりつつあるのです。
ところが、実際にはテクノロジーの価値を認め、ビジネスに役立てる企業ばかりではありません。なかには「技術投資の意思決定が遅い」「経営幹部がIT用語を知らない」「内製すべき領域が外部任せ」などと軽視するような例も見られます。しかしもはやテクノロジーは何か特別な「道具」ではなく、ビジネス活動の「前提」に他なりません。
日常的に先進テクノロジーを評価し、有益なものをいち早く取り入れて、企業価値の向上に取り組む。そんな「テックネイティブ・カンパニー」になるためには、具体的に何をどのように取り組んでいけばいいのでしょうか。そのための道のりは、1つとは限りません。
テクノロジーから世の中を変えるビジネスを生み出す
現在日本企業の多くは、商品開発の際、まず顧客や消費者の意見を調査することからはじめています。しかしここで問題となるのは、顧客や消費者は、自分にとって必要なものを本当には理解していないことです。革新的な商品は、この「ニーズ志向」なアプローチで生まれません。世の中を変えるイノベーションを生み出すためには、将来有望な「未来型テクノロジー」を選別し、そのテクノロジーが将来実現しそうなことを予測して新しいビジネスを考えることが必要です。
サービスビジネスへの戦略シフト
テクノロジー活用を考えるうえでは、自社のビジネスを「サービスビジネスへの戦略シフト」するのも有効です。テクノロジーの進歩は、「サービスの常時のネットワーク接続」「自律的なアップデート」「従量課金」など洗練されたサービスの提供を可能にしました。企業は「収益ルートの分散」により堅牢な経営基盤を築けるようになり、またサービスに契約してもらうことで、「定期収益性」も期待できます。競争優位性の観点から見ても、需要トレンドをいち早く定常的に補足することで、企画/開発に迅速にニーズを反映できるようになるのです。
エモーション・ドリブンでプロダクトを提供する
IoTテクノロジーの普及により、収集できる顧客データは多様化しました。これら豊富なデータソースから、顧客の「エモーション(感情/感性)」を分析することで、顧客が求めているプロダクトを提供する、「エモーション・ドリブン」という考え方に注目が集まっています。この仕組みの導入に際しては、AIを活用することによる精度の向上、顧客を中心に設計したデータベースの構築など、さまざまなことを考えあわせることが必要です。
『テックネイティブ・カンパニー ~デジタル時代を生き抜く7つの戦略』では、上記3つの他「デジタルトークンを活用し新しい経済圏を作る」「ギグエコノミーを活用した柔軟な事業運営スタイルの確立」など、理想像に到達するための7つのアプローチを、多くの企業のビジネスの内情に触れてきた7名のITアナリストが書き下ろしています。各章が独立した幅広い内容になっており、経営者、技術者、学生にいたるまで、テクノロジーへの向き合い方について、ヒントをもらえる1冊です。