突然の“新様式”を余儀なくされた情報処理技術者試験
2020年は新型コロナの年でした……という決まり文句も見飽きた方が多いでしょう。そんな新型コロナウイルス感染症は、毎年約40万人もの人々が受験する情報処理技術者試験にも多大な影響を及ぼしました。
なかでも、基本情報技術者試験(基本情報)と情報セキュリティマネジメント試験(セキュマネ)への影響は顕著でした。試験会場確保の観点から、本来10月に行う秋試験が12月以降に延期になっただけでなく、従来のマークシート方式から、パソコンを使って問題の表示・解答を行う「CBT(Computer Based Testing)方式」に試験方法を変更することになったのです。かくして、基本情報とセキュマネの二つの試験は、予期せぬかたちで“ 新様式” へと移行することになりました。
“新様式” と言いつつ、同じく情報処理技術者試験の一つであるITパスポート試験ではCBT方式は導入済みです。しかし、基本情報・セキュマネでCBT方式を導入するには気がかりな点があります。それは長文問題の存在です。この二つの試験は、数十問の四択問題を解く午前試験と、長文問題である午後試験から構成されています。ITパスポートは四択問題のみなので、CBT方式で長文問題に取り組むのは未知の世界です。果たして、パソコンの画面上で情報量の多い長文問題を解けるのでしょうか?
そこで、CBT方式の実態を探るべく(?) 、セキュマネを実際に受験してみました。
ITパスポートより進化した午前試験
試験会場に着くと、真っ先に手指の消毒をお願いされます。その他にも、マスク必須であったり、本来手荷物を預けるためのロッカーの使用が禁止されたり、感染症対策の影響がちらほら見受けられました。
受付を済ませ、しばらく待ったのち座席番号を教えてもらうと、試験用のパソコンが並ぶ部屋に案内され、いよいよ試験開始です。まずは午前試験ですが、結論から言うと、ほとんどストレスなく受験できました。画面構成こそ違うものの、大まかな仕様はITパスポートを土台にしつつ、より便利に進化していると感じました。
変更点はいろいろありますが、一番便利だったのは「選択肢ボタンを右クリックすると×印を付けられる」という機能です。つまり、「 これはないだろ」という選択肢を消せるのです。この機能はITパスポートにはありませんでした。筆記試験では選択肢に○×を書き込んで問題を解く人も少なくないと思いますが、それと近いことをCBT方式でも再現できるのです。個人的には、この機能は非常に役に立ちました(ちなみに、午後試験でも同じ機能が使えますが、こちらは選択肢の数が10個近くになる問題もあるので、さらなる恩恵があります) 。午前試験に関しては、ITパスポートで似たような形式で出題している分、より便利な仕様になっていると言っていいでしょう。
午前試験は四択問題を数多くこなしていく
画像出典: 情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ|プロメトリック
午後試験には余裕ある解答プランが必要
さて、問題は午後試験です。こちらも大きな問題はなく、懸念された長文問題もさしてストレスなく受験できました……のですが、午前試験と比べると、一部気になる点もありました。
個人的に一番気になったのは「見直しのしづらさ」です。午前・午後ともに、後で見直したい問題にはマークを付けられて、午前試験ではこの機能が結構便利なのですが、午後試験では一転、非常に気が利かない機能になっています。というのも、どうも大問ごとにマークを付けるという仕様になっているようなのです。セキュマネの午後試験は、三つの大問の中にそれぞれ複数の小問が設けられているので、見直しをするなら小問ごとにマークを付けないと意味がありません。これは地味にイライラしました。
その他にも、問題文の表示の切り替えに多少時間がかかるのも気になりました。表示切り替え時間は、体感的には1秒程度でしたが、午後試験は時間に余裕がなく、これに結構やきもきしました。致命的に解きづらい、などということは午後試験を通じてありませんでしたが、少し余裕をもった解答プランを考える必要性は感じました。
午後試験では本文と設問文を切り替えながら試験問題を解く
画像出典: 情報セキュリティマネジメント試験:試験当日の受験の流れ|プロメトリック
たしかな知識があれば試験方式変更も怖くない
とはいえ、総じて言えば試験方式の変更にそこまで過敏なる必要はない、というのが実際に受験した感想です。総じて操作は単純でわかりやすいですし、午後試験で多少のやりづらさは感じたものの、日常的に業務などでパソコンを使っているのであれば、受験に支障はないかと思われます。
むしろ、一番重要に思えた点は、問題の難易度や出題内容が従来とまったく変わらなかった、ということです(もちろん、シラバスに変更があれば細かい出題内容は変わりますが) 。つまり、基本的な試験対策はマークシート時代と変わらず、参考書を読んで過去問に取り組むことです。
思い返せば、ろくでもない1年でした。それは試験関係者にとってはもちろん、受験者にとってもそうでしょう。感染症という大きな壁を乗り越えて遂に再開した情報処理技術者試験、受験する皆さまが無事合格されることを心より願っています。