データ基盤に取り組む意義

データを扱うためのインフラ、すなわちデータ基盤も分析技術と同じくらい、いや、分析技術以上に重要であると言っても過言ではありません。なぜなら、データ活用を進めるうえでは、データが適切に管理されており、適切な権限のもと自由に利用できる状態が必要だからです。

次のは全国展開している小売業を想定しています。そのような企業は、全国の店舗で発生した売り上げを集計し、各部署で必要な分析を行ったうえで、分析結果をもとに商品開発や販売促進のためのアクションを起こす、といったことに取り組んでいるはずです。では、収集したデータをもとに、販売管理レポーティングシステム上で、店舗別や商品別の販売実績のレポートを確認できるようになっているとします。

 ITシステムがデータ活用を阻害しているケース
図 ITシステムがデータ活用を阻害しているケース

今、ある商品のキャンペーン施策をマーケティング部門が実施したと仮定します。マーケティング部門としては、キャンペーンの施策の効果をいち早く確認し、改善できる点があればキャンペーン期間中に追加の施策を実施したいと考えているでしょう。ここで、最初の問題が生じます。マーケティング部門は販売実績を管理するレポーティングシステムへのアクセス権を持っておらず、IT部門に依頼をして分析に必要となるデータを取得する必要があります。

  • ルールに従い、IT部門に依頼を行うのですが、マーケティング部門として今回の施策の効果を分析するために必要な商品×店舗別のレポートは作られていないことが発覚します。
  • IT部門の担当者からは、新たなレポートを作成するための工数を用意できず、店舗別レポートと商品別レポートを提供するのでそこから必要なデータをマーケティング部門側で作成してほしいと言われます。
  • ようやく提供されたデータを見ると、店舗別レポートと商品別レポートで出力されている項目を利用してもマーケティング部門が欲しいデータは作成できない可能性が高いとわかります。
  • そうこうしているうちにキャンペーンは終了してしまい、データ分析はやや不完全な形で、かつキャンペーン終了後の振り返りという形でしか行うことができませんでした。

この例は少し極端ではありますが、大なり小なり似たような問題を抱えている組織は多いようです。とくに変化の早い現代社会においては、このような状況を是正していくことが競争力の源泉ともなり得ると考えられます。

データ活用を進めるうえでは、データ基盤として「早く、正しく、確実に」データを集める機能に加えて、⁠適切な権限管理のもとでデータ基盤が開放されている」という状態が重要だとわかります。