みんなに喜ばれるプロダクトを⁠

そのプロダクト、本当に求められていますか?

ものづくりには時間とお金がかかります。どんなプロダクトにするかしっかり企画を立てて、人を集めて、必死に制作して、販促も頑張る。でも、売れない、使われない。これほど悲しいことはありません。いったい何のために頑張ったのか……。悔恨の念が湧いてきます。

どこで間違ってしまったのか。その原因はいろんなところに求められると思いますが、各プロセスの中で影響が大きいのは何といっても「企画」でしょう。その商品なりサービスなりは、本当にお客さんが求めるものだったのでしょうか。自分たちに都合の良いお客さん像を作り上げていなかったでしょうか。思い込みにまみれていなかったでしょうか。心の底から企画に納得できていたでしょうか。

現実を歪めて捉えていては、いくら頑張ろうとも良い結果は生まれません。

ユーザー調査というひとつの提案

せっかく時間とお金、そしてたくさんの人の労力を費やすのなら、ちゃんとお客さんに届くモノがつくりたいですよね。そのためには、ものづくりをはじめる前に「ユーザーは何を求めているのか」をしっかり捉えなければいけません。本書で扱うユーザー調査は、ユーザーからその「ヒント」をもらうための手法のひとつです。

ユーザー調査を一言で言えば、ユーザーとの観察や対話を通して、ユーザーが意識していないものをも含むニーズを突き止める試みのことです。

もう少し具体的に言うと、ユーザー調査には大きく2つの手法に分かれます。ユーザーの言語報告に頼る「インタビュー」などの手法や、言語報告に頼らない「行動観察」などです。それらの調査によって、⁠人々がどんな行動をどのようにして起こすのか」という利用文脈(コンテクスト・オブ・ユース)をかき集めて分析するのがユーザー調査で行うことになります。

しっかりと計画を立て、余念なく準備をしてから調査に向かい、調査が終わったところで力尽きることなく、得られたデータを丹念に分析し、解釈し、次のアクションを決めて、ものづくりの次のフェーズへとバトンタッチできたなら、調査は成功です。順調に行けば、ものづくりのそのあとのプロセスはまるで魔法がかかったように進めやすくなるはずです。

(本書「はじめに」より引用)

ユーザー調査を実施するとなると、それはそれでタイヘンです。時間とお金があまりかからないものづくりであれば、ユーザー調査を行うよりも、失敗を繰り返した方が良い結果を生むかもしれません。しかし、現在のようにプロジェクトが大規模だったり、失敗できなかったりするとき、ものづくりを「魔法がかかったように」を進めるためには、ユーザー調査が役に立ちます。

はじめる前も、はじめた後も

ユーザー調査を成功に導くために、現場にはどんな落とし穴が潜んでいて、そのときにどう解決すればよいのか。本書ユーザーの「心の声」を聴く技術 ~ユーザー調査に潜む50の落とし穴とその対策はそれらをまとめたものです。ユーザー調査のワークフロー順(⁠⁠目的設定」⁠リクルーティング」⁠本番への準備」⁠本番での立ち回り」⁠分析と解釈⁠⁠)に解説しているので、はじめての方でも、ユーザー調査の全体像から把握できます。

そしてなにより、ユーザー調査における、とにかく実践的な対策が詰まっています。必ずや、ユーザー調査で困ったときの心強い相棒になってくれるはずです。はじめる前の方も、はじめた後の方も。ぜひ本書を片手に「ユーザーの心の声を聴く」場に挑んでみてください。