インターネットで買い物をしていたら、選んでいないのに「おすすめ」や「こちらもおすすめ」などの商品が表示され、「ほぅ、こんなものもあるのか」と当初は買うつもりのなかった商品を買ってしまった経験のある方は多いと思います。
人々が自然にある行動を取ったり、考えがある方向に向くように導くことを「ナッジ(nudge:そっと後押しする)」といい、人々に自発的な行動変容(行動を変える)を促すために用いられます。ナッジはインターネットに限らず世の中のさまざまなところで使われていて、新型コロナウイルスの感染対策など、国の施策にも活用されています。
「おすすめ」では、閲覧履歴や購買履歴、サイトに登録した個人情報などの膨大なデータをAIのアルゴリズムなどに則って処理し、個人の行動や好みを分析し、「このあとどういう行動をとるか」推測し、個人にカスタマイズされた「この人が欲しそうな」商品を提示しています。
見ている情報にはフィルターがかかっているということ
個人に最適化された商品を提示するのは、ニュースサイトも同じです。過去の閲覧履歴などをもとに、「この人が読むと予測される記事」を表示します。興味のある記事がピックアップされ、情報を処理するには効率的ですが、その反面、多様な情報が入ってきにくくなります。これは検索エンジンでの検索やSNSでも同様です。
現実の社会は多様性に富み、物事に対する立場も考え方も異なるさまざまな人がいるのに、インターネット上では、自分にとって耳障りな反対意見や別の考え方、見たくない情報に接することなく、自分用にフィルターのかかった心地よい情報だけに囲まれて過ごすことができてしまいます。まるで、泡(バブル)に包まれているように、泡の外の情報は見えません。これは私たちに何をもたらすのでしょうか。
AIなどの技術は気づかないうちに生活や社会に浸透し、社会のあり方をも変えてしまう可能性があります。技術そのものだけでなく、技術と社会とのかかわりについて考えることが大切になってきたようです。