システム開発を成功に導くため ―情報システム部門はどう動くべきか

情報システム部門の役割とは

近年、さまざまな企業のビジネスにおいて、デジタル技術・情報システムの活用範囲が広がってきました。デジタル技術の活用によってビジネスを変革し、新たな価値を創出するDX(デジタルトランスフォーメーション)は、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。

一般的に、ユーザー企業が情報システムを開発・運用する場合には、開発ベンダー、システムインテグレーター、外部サービス事業者などと協調しながら対応を行う必要があります。そして、システム開発・運用の現場で中心的な役割を担うのが、ユーザー企業の情報システム部門です。

情報システム部門が対応すべき範囲は非常に広く、たとえば新規システムの企画段階であれば、新システムに対する社内の要求の取りまとめ、RFP作成、契約の取り交わしなどを実施します。開発フェーズでは、要件定義、各種設計書のチェック、受け入れテスト、新システム導入に向けた業務トレーニングなどを実施することに加え、開発ベンダーへのサポートや進捗の管理、社内の各部門との連携や調整なども主導していく必要があるでしょう。

これは保守、運用といった開発後のフェーズにおいても同様であり、情報システムの開発・運用が成功するかどうかは、情報システム部門の動き方にも大きく左右されます。しかしながら、現実にはさまざまな課題を抱えているケースも多いようです。

システムの開発・運用を成功に導くには

たとえば、独立行政法人 情報処理推進機構 社会基盤センターが発行するIT人材白書 2020 今こそDXを加速せよ~選ばれる⁠企業⁠⁠、選べる⁠人⁠になるによれば、IT人材が量的に「大幅に不足している」と感じる回答の割合は年々増しています(同資料 図表2-1-1⁠⁠。これは質的な不足感についても同様の傾向があります(同資料 図表2-1-3⁠⁠。

注)

また、情報システムを取り巻く環境の面でも、情報システム部門の負担は増えているように感じられます。システムは複雑化し、新たな技術やサービスが次々に登場します。各種クラウド型サービスを利用してシステムを構築することも当たり前の時代になりました。その一方で、レガシーなシステムも維持しなければなりません。こうした状況に適切に対応できなければ、企業としての競争優位性が損なわれる可能性もあります。

ただし、変化のスピードが速い時代であっても、情報システム部門がどう動くべきか、その根幹部分が大きく変わることはありません。まず、情報システムのライフサイクル(企画~廃止まで)の全体像をきちんと把握し、情報システム部門が担うべき役割を整理することが必要です。それぞれのフェーズで自分たちが何をすべきか、なぜそれをする必要があるのか、どのようなドキュメントを作成し誰と連携すれば良いのかなどを正しく理解していなければ、無駄のない形で計画を立て、実践することはできません。また、必ず振り返りを行い、知見を蓄積しながら改善に繋げることも大切です。

システム開発を成功に導くためのさまざまなテクニックやノウハウも、こうした基本がない状態では正しく活用することは難しいでしょう。


技術評論社が刊行する情シスの定石~失敗事例から学ぶシステム企画・開発・保守・運用のポイント~では、情報システム部門の担当者が押さえておくべき基本の知識とノウハウを体系的に解説しています。システムのライフサイクルの中で、情報システム部門が何をすべきか、何に注意すべきかをまとめるとともに、成否に大きな影響があるさまざまな外部要因/内部要因、典型的な失敗事例とその対策についても整理していますので、情報システム部門の動き方を知り、高いレベルで実践する上で参考になるはずです。