プロジェクトとプロジェクトマネジメント
皆さんは、プロジェクトという言葉を聞いてどのようなものを想像しますか。都市再開発/再生プロジェクト、宇宙開発プロジェクトなどといった、国の機関や大企業が主導する超大型のプロジェクトでしょうか。それとも、新製品開発プロジェクトや業務改善プロジェクトなどのような、ご自身の仕事に関連したプロジェクトでしょうか。
プロジェクトという言葉にはさまざまな定義が存在しますが、一般に「いつまでに、何を作るか/何を達成するか」が決められた業務だとされています。つまり、前述した国や企業のプロジェクトはもちろん、「来週の会議までに、必要なプレゼン資料を作成する」といった身近な業務も立派なプロジェクトなのです。
いつまでに行うべきか、何を達成すべきかが決まったら、それを実現するために何を準備してどのように実施すれば良いかを検討した上で作業に取りかかるでしょう。もちろん作業が始まった後も、予定になかった事態が発生したり作業に遅延が生じたりしたときには、適切な対処をしながらプロジェクトを進めていくはずです。こうした作業の進め方こそが、「プロジェクトマネジメント」と呼ばれるものの正体です。プロジェクトマネジメントは決して特殊な作業ではなく、ごく身近な業務の中でも実施されている仕事の進め方です。
プロジェクトマネージャーの役割
とはいえ、プロジェクトの規模やさまざまな制約によってプロジェクトマネジメントの難易度は大きく変わります。たとえば大規模な開発プロジェクトであれば、必然的にプロジェクトに関わる人数も多くなります。さまざまな立場の人がプロジェクトに関わっているケースでは、各メンバーの利害やモチベーションがまったく同じということはありません。結果として、全員が一枚岩になってプロジェクトを進めることが難しい場面も出てきます。
また、予算を際限なく使える、スケジュール(締め切り)を自由に設定できるといったケースは少なく、限られた予算とスケジュールの制約の中でいかに成果を上げるかに苦心することも多いはずです。当初の予定通りプロジェクトが進むことは稀であり、進行途中にはさまざまなトラブルが発生するでしょう。
スケジュール、コスト、メンバーなどを適切に管理し、プロジェクトを円滑に進めるためのマネジメント業務に責任を持つのが「プロジェクトマネージャー」です。プロジェクトマネージャーは、プロジェクトの進行上考えられるリスクを事前に想定する、予算・スケジュールともバッファを考慮した計画を立てる、タスクを設定してメンバーに割り当てる、不測の事態が起きたら適切に対処するなど、プロジェクトを予定通りに進めるためのさまざまな調整を行いプロジェクトをコントロールします。また、メンバーを鼓舞してプロジェクトをリードする、ステークホルダーの利害を調整してエンゲージメントを高める、などもプロジェクトマネージャーの大切な役割です。
こうして見ると、プロジェクトマネジメントに必要な考え方やノウハウは、さまざまな業種・職種の普段の業務に活かすこともできる普遍的なものだと分かります。マネージャーの立場にない人であっても、基本を身につけることで自身のビジネスをより豊かなものにできるでしょう。
『プロジェクトマネジメントの基本がこれ1冊でしっかり身につく本』では、プロジェクトの企画~完了までの各フェーズにおいて何をすべきか、何に気をつけるべきかを整理して分かりやすく解説。プロジェクトを進める上で有用なさまざまなフレームワーク、理論についても紹介しています。プロジェクトマネージャーはもちろん、メンバーとしてプロジェクトに参画することになった人、将来に向けてマネジメント業務をきちんと学びたい人、日々の業務を円滑に進めたい人にとって役立つ基本の知識をまとめた1冊です。