なぜゲームを使って⁠AIを研究するのか

※『ゲームから学ぶAI —⁠—環境シミュレータ×深層強化学習で広がる世界より。

将棋や各種ボードゲーム、リアルタイムシューティングゲーム(RTS⁠⁠、マインクラフトなどのビデオゲームに至るまで、数々のゲームがAIの研究に用いられ、AIの進化を加速させてきました。本記事では、基礎知識を中心にその概略を見てみましょう。

「ゲームAI」の二つの意味

「ゲームAI」game AIは、AIやゲームの分野においてさまざまな文脈で使われる用語で、言葉として知っている方も多いのではないでしょうか。⁠ゲームAI」は、おもに二つの意味で使われます図1⁠。

図1 ゲームの中のAI、ゲームをプレイするAI
図1
ゲームの中のAIAI in gaming
➡︎ゲームの中に組み込まれたAI
ゲームをプレイするAIgame playing AI
➡︎ゲームを題材としたAI研究

とくに❷は人間と同じようにAIにゲームをプレイさせ、囲碁のAlphaGoやStarCraft IIをプレイするAlphaStarが知られています。❶❷のゲームAIは技術的に異なる特徴や傾向を持ち、⁠ゲームによるAIの研究」というと❷が想定されます[1]

なぜAIの研究にゲームを使って、AIを研究するのか

AIの研究にゲームが用いられるのは、現在のAIが「成功と失敗とを何度も繰り返して学習する」しくみであるという点が理由として挙げられます。現実の「ロボット制御」などにAIを使う研究もありますが、実験のために大量の機材を用意するのは大変です。また、⁠物理演算のシミュレータ」を用意して、仮想空間で試行する方法もありますが、物理法則に従う必要のない基礎的な研究も多く、それらにシミュレータを使うのも非効率です。そこで、より単純化されたゲームの世界で新しい手法を試すのです。

汎用AIの実現へ AGI

GoogleやAI研究で有名なDeepMindが巨額の費用をかけてまでゲームAIを開発するのは、なにも最強のゲーム内AIやゲームソフトを作りたいからではありません。目的は開発過程で得られた知見や技術を活用して、より汎用的なAI(汎用AI、AGI/artifcial general intelligenceを実現することにあります。

ゲームAIは、どれもその過程で作られてきた基礎的な成果物です。汎用AIの実現にはまだまだ時間がかかるため、少しでもできることを増やしていくためにゲームを題材として基礎研究を進めてられています。