データベースの内部構造としくみを理解し⁠高可用性と安定稼働を実現する

安定したデータベース運用を目指して

クラウドサービスの多くはフルマネージド型をはじめとするデータベースサービスを提供しており、すぐにRDBMSを利用できる環境が整えられています。クラウドサービスの普及・サービスの拡充に伴い、私たちは、普段使い慣れたRDBMSをクラウド上で簡単に利用できるようになりました。

このようにインストールや初期設定の手間、運用の手間が減ってきた一方で、効率的な設計、システムの安定的な運用・管理のためには、今もRDBMSの特性や機能についての正しい理解が求められます。それぞれのRDBMSの基本的なしくみや機能、内部構造について学び、設計・運用・チューニングなどの各場面で適切に応用できれば、データベースが持つ性能をしっかりと引き出し、安定した運用を行うことにもつながります。

ここでは、オープンソースのRDBMSとして人気の高いPostgreSQLを例に、内部構造やしくみを学ぶことのメリットについて見ていきます。

内部構造から学ぶメリットとは

たとえばテーブル設計において、RDBMSの機能を意識した設計が求められることがあります。TOASTやテーブルパーティショニングといったPostgreSQLの機能について正しく知ることで、より適切なテーブル設計ができる可能性があります。また、PostgreSQLにはどのようなファイルがあり、それらを物理的にどこに、どのように配置すべきかといった知識も性能を引き出すポイントになります。

バックアップやレプリケーションといった運用面でも、しくみの理解は重要です。バックアップのためのコマンドの使い方を覚えるだけでなく、そのコマンドが背後で何をしているのか、各バックアップ方式の特徴は何かといった内容を知っていれば、必要なバックアップ要件/リカバリ要件を満たすより適切な運用計画を立てられます。レプリケーション稼働時にトラブルが発生した際には、各プロセスがどのような順序で何をやり取りしているかといった知識が原因の究明に役立つはずです。

他にも、PostgreSQLの安定運用に欠かせない作業の1つにクエリのチューニングが挙げられます。PostgreSQLは、発行されたクエリに対し実行計画を生成します。ところが、生成された実行計画が必ずしも最適なものであるとは限りません。クエリの性能に問題があるケースでは、統計情報を取得するANALYZEコマンド、実行計画を出力するEXPLAINコマンドなどを駆使して原因を探ることになります。出力される実行計画の構造、各種ノードの特徴、見直すべきサーバの設定項目、チェックすべき統計情報のポイント、処理コストを適切に見積もる方法など、必要とされる知識は多岐にわたります。


ここまでいくつかの例を挙げましたが、各種機能を内部構造から正しく理解した上でコマンドを利用し、さまざまな設定項目についても「そのように設定するのはなぜか」という理由を含めて習得することが大切です。

改訂3版 内部構造から学ぶPostgreSQL 設計・運用計画の鉄則では、これまでPostgreSQLを学習もしくは利用したことがある人、これから本格的にPostgreSQLの運用・管理や技術力の向上を図りたいと考えている人を主な対象とし、システム構築や運用において重要といえる要素についてPostgreSQLの内部構造と照らし合わせる形で解説します。PostgreSQLのコアな技術力を持つ著者が、内部構造を知っているからこそわかる設計・運用やチューニングのノウハウを紹介しており、高可用性と安定稼働を実現する上でお勧めの1冊です。