かわいいけど、本格的なソフトウェア開発論
本書の装丁やイラストはかわいらしい女の子の絵ばかり出ていますが、本書のテーマは本格的なソフトウェア開発論です。だまされたと思う方もいるかもしれません。ネットに表れてきたレビューを読むと、このままカラーページのようなマンガが続くのだと思っていたら、途中から真面目な内容になって驚いたというものがありました。
担当者としては、オールカラーもやむなしと当初は思っていたので、『今日の早川さん』(coco、早川書房、2008年)のような感じになるかなと、本の完成形を淡くイメージしていました。しかし、脱稿が近づくにつれて当初予定(160ページ)より、さらに原稿が増えて「こ、これは問題作になる!?」という感触を得ました。そして実際に原稿をいただくと、その深い内容に触れてこれはシリアスに2色印刷を効果的に使ったほうがよいと決断して、現在のデザインになりました。
カラーページのひみつ
本書の口絵カラーページは、弊社SoftwareDesign誌での短期連載を再集録したものです。2020年6月全6回の連載でしたが、ソフトウェア開発についてヒロインであるメモリーちゃんを軸に解説が進むというものでした。そのせいでPHPの本なのにPythonの話やクラウドなど他のITネタが載っているのです。
メモリーちゃんもモデルとなる実在の女性がいまして、ご本人の写真がちょこっと出ています。彼女は学生時代にPHPで仮想マシンを書いてしまったという、まさに「ちょうぜつエンジニア」なのです。そしてこの実在女性の書下ろし本が2月に当社から発売されれる予定です。この本もちょうぜつです!
挿絵イラストについてはみなさん驚かれますが、この本は筆者の田中ひさてるさんが1人で全部描いています。絵を始めてわずか6~7年程度というのも驚きますが絵は2年前で、本文はほぼ半年前に描いたものですので、その上達ぶりについては言うまでもありません。
オブジェクト指向と開発スタイル
みなさんが日常使っているスマホのアプリや、携帯ゲーム機のゲームなど、オブジェクト指向を取り入れていないものを探すほうが難しいくらいです。PCやmacのOSについても同様です。ソフト開発と切っても切り離せない考え方が「オブジェクト指向」なのです。
最近、オブジェクト指向を否定的な立場で見直す技術トレンドもありますが、ITエンジニアならばごく当然に知っているべきソフトウェア開発論といえます。しかし、みなさん案外とオブジェクト指向を使いこなせていないのが現状です。
そこで本書は、ソフトウェア開発をスムースに進めるための「クリーンアーキテクチャ」を最初に紹介、その後にオブジェクト指向を理解するための道具としてUML(統一モデリング言語)や、その原則を紹介しつつ、テスト駆動開発、依存性注入、デザインパターンなど現場で実践されている技術を解説していきます。
それぞれにかわいい挿絵が入りますが、アプリ開発の現場を風刺してみたり、パロディ的なネタを披露してみたり、難しい内容でもなにか得るものがある作りになっています。まずはぜひ書店で手にとって立ち読みしてください。きっと惹き込まれること間違いなしです。