エンジニアにとってマネジメントとは

エンジニアキャリアのなかで「マネジメント」は常に意識されます。マネジメント担当=マネージャーは、年次が上がったら、昇進したらいつのまにかなっている「管理職」的なものという認識の方も多いのではないでしょうか。いつの間にかなんとなく、マネージャーになっている人もいるかもしれません。

経験も積んでいる、現場の気持ちもわかる、メンバーとはずっと一緒に仕事してきた。今までの資産を活かして、エンジニアのマネジメントはスルッとうまくいきそうに思えます。ただ、実際のところは多くのエンジニアがマネジメントが思ったようにはうまくいかない現実に直面します。

この現象はなぜ起きるのか。それは「エンジニア」「マネージャー」に求められるものが異なるからです。書籍『エンジニアのためのマネジメント入門』では、エンジニアのマネジメントへのキャリアチェンジを「転職」にたとえています。今までの経験値は使える部分もあるけど、基本的には新しく学び直さないといけないことが非常に多くあります。

エンジニアのマネージャー、エンジニアリングマネージャーには多岐にわたるマネジメントとしての役割が求められます。エンジニア出身のマネージャーに求められる領域、マネジメントドメインには例えば次のようなものがあります。

プロダクトマネジメント
プロダクトを生み出すことを管理する。プロダクトライフサイクルの全般、アイデア出し、開発、ローンチ、運用までを見据えて進行や売上などに責任を持つ。
プロジェクトマネジメント
プロジェクトを管理する。プロジェクトのスコープ、予算、人員、期間、ステークホルダーニーズなどを調整しながらプロジェクトの実行と完遂に責任を持つ。
チームマネジメント
チームを管理する。チームメンバーのパフォーマンス最大化のためにコミュニケーションやタスクの割り振りを行う。進捗管理なども担う。
テクノロジーマネジメント
目標に応じて適切な技術の利活用を管理する。ソフトウェアやハードウェアなどのシステム選定や実装、調達などに責任を持つ。
ピープルマネジメント
組織内の人員のパフォーマンスを最大化する。人材採用やモチベーション管理などに責任を持つ。
ストラテジックマネジメント
組織の高次な目標、組織戦略に責任を持つ。戦略管理や戦略経営とも。戦略のための具体的なアクションを考えたり、組織の資源の配分などにも責任を持つ。
ビジネスパフォーマンスマネジメント
目標に対してのビジネスの進捗などを判断するための指標を示し、改善するための管理。データの収集や管理、分析と分析結果を用いた改善などを担う。ビジネス業績管理とも。
ラインマネジメント
現場(ライン)に直接責任を持ち、現場の管理をすること。

すべてが同時に求められることはなく、このうちのいくつかの分野が求められることが一般的です。マネージャーになった際には、どのマネジメントドメインが強く求められているのかも意識しなくてはいけません。

たとえば、マネージャーとして期待されるのがチームリーダーの役割なら、チームマネジメントやピープルマネジメントを中心に学び、チームメンバーの活躍を促進し、チームを機能させることが最も大切なはずです。そこから、プロジェクトマネジメントやラインマネジメントを学び、工程管理に活かすこともできるでしょう。

広大なマネジメントドメインには、エンジニア時代にはまったくやっていなかった領域、関わってはいたものの主体的には取り組んでいなかった領域が数多くあるはずです。これらの領域について極めるのは一朝一夕にはいきません。まずは全体像を押さえておきたいものです。

エンジニアのためのマネジメント入門では、広範なマネジメントにエンジニアが入門するための基礎知識を解説しています。