ITパスポートの次に狙うのはこれ! ――基本情報技術者試験の概要と対策

ITパスポートに合格した!さて、その先は?

最近よく耳にするITパスポート。これは、ITの最も基礎的な国家資格です。令和3年度には受験者数が20万人を超え、今もなお受験者数が増え続ける人気資格の1つとなっています。

さて、ITパスポートに合格!……そうすると、もう少し上を目指したくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。ITパスポートを含めた「情報処理技術者試験」には、他にも種類があります。

そこで、今回はITパスポート試験の次に挑戦するのにオススメの試験として、基本情報技術者試験の概要を紹介いたします。

基本情報技術者試験って何?

「ITエンジニアの登竜門」とも呼ばれる基本情報技術者試験(以下、基本情報)は、毎年10万人以上が受験する人気の国家試験です。試験に合格すれば、ITエンジニアに求められる基本的な知識・技能を有していることを、経済産業省に認定してもらうことができます。

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情報処理技術者試験の試験体系。IPAhttps://www.ipa.go.jp/shiken/kubun/list.htmlのサイトより

情報処理技術者試験の試験体系では、ITパスポートは「全ての社会人」が対象となっているのに対し、基本情報は「情報処理技術者」が対象になっています。そのため、ITエンジニアでない方には、⁠私には関係のない試験」に見えるかもしれません。

しかし近年では、ITエンジニア以外の受験者が増加傾向にあります。デジタル化が加速度的に進む中で、プログラミングやコンピュータサイエンス、情報セキュリティ、ネットワークについての基礎知識は、すべての社会人に求められる必須教養になりつつあります。そのため、これら知識・技能を、ITパスポート試験よりも一段階深い次元で身に付けることができる基本情報の価値は、日増しに高まっていると言えるでしょう。

また実際に、採用時に試験結果を考慮している企業や、合格者に対する報奨金制度を設定している企業も多数あります。自身のスキルアップ・アピールにつなげる上でも、非常にオススメできる試験です。

試験内容はどんな感じ?

基本情報の合格率は、令和5年度4月~12月の平均で約48.4%。同期間で集計した、ITパスポートの平均合格率が約51.3%なのと比較すると、⁠けっこう高い(頑張ればいけそう……⁠⁠?」と思った方も多いのではないでしょうか。

基本情報は「科目A試験」「科目B試験」の2つで構成されており、両方の試験で合格点を取る必要があります。それぞれの内容について、ざっくりと確認してみましょう。

科目A

  • 出題数:問1~60の60問(全問必須)
  • 試験時間:90分
  • 合格点:1000点満点中600点(ITR方式
  • 出題分野:シラバスで示されている、以下の9分野より出題
    • 【テクノロジ系】1.基礎理論 2.コンピュータシステム 3.技術要素 4. 開発技術
    • 【マネジメント系】5.プロジェクトマネジメント 6.サービスマネジメント
    • 【ストラテジ系】7. システム戦略 8.経営戦略 9.企業と法務

★解答結果に基づいて配点(評価点)を算出する方式のこと。

出題例:
トランザクションが、データベースに対する更新処理を完全に行うか、全く処理しなかったのように取り消すか、のどちらかの結果になることを保証する特性はどれか。

  • 【ア】一貫性(consistency)
  • 【イ】原子性(atomicity)
  • 【ウ】耐久性(durability)
  • 【エ】独立性(isolation)

※出典「令和5年度 基本情報技術者試験 科目A 公開問題 問7」
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/t6hhco0000003zx0-att/2023r05_fe_kamoku_a_qs.pdf

上の出題例を見て、⁠Iパスで勉強したACID特性の問題だ!」と気付いた方もいらっしゃるかもしれません。科目A試験の出題形式は、ITパスポートと同じ四肢択一式になっており、問われる内容もかなりの部分で重なりあっています。実際に、ITパスポートの過去問に類似した問題が出てくることも少なくありません。ITパスポートの対策経験がある方は、基本情報を受験するにあたっても有利であると言えるでしょう。

ただし、⁠ITパスポートに合格できたなら、科目A試験でも合格点がとれる」ということではありません。基本情報では「ITエンジニア水準の知識・技能」が求められているため、同じ分野の出題でも、ITパスポートより一歩踏み込んだ知識が問われる傾向にあります。とくに「テクノロジ系」の分野では、問題が格段に手ごわくなっていることを実感できるかと思います。

科目B

  • 出題数:問1~20の20問(全問必須)
  • 試験時間:100分
  • 合格点:1000点満点中600点(ITR方式)
  • 出題分野:
    アルゴリズムとプログラミング分野(16問)
    • プログラミング全般に関わること
    • プログラムの処理の基本要素に関すること(型、変数、配列、代入、算術演算、比較演算、論理演算、選択処理、繰返し処理、手続・関数の呼出しなど)
    • データ構造及びアルゴリズムに関すること(再帰、スタック、キュー、木構造、グラフ、連結リスト、整列、文字列処理 など)
    • プログラミングの諸分野への適用に関すること(数理・データサイエンス・AIなどの分野を題材としたプログラム など)

    情報セキュリティ分野(4問)
    • 情報セキュリティの確保に関すること

出題例:
次の記述中の    に入れる正しい答えを、解答群の中から選べ。ここで、配列の要素番号は1から始まる。

関数searchは、引数dataで指定された配列に、引数targetで指定された値が含まれていればその要素番号を返し、含まれていなければ-1を返す。dataは昇順に整列されており、値に重複はない。

関数searchには不具合がある。例えば、dataの    場合は、無限ループになる。

〔プログラム〕

 ○整数型: search(整数型の配列: data, 整数型: target)
  整数型: low, high, middle

  low ← 1
  high ← dataの要素数

  while (low ≦ high)
    middle ← (low+high)÷2 の商
    if (data[middle] < target)
      low ← middle
    elseif (data[middle] > target)
      high ← middle
    else
      return middle
    endif
  endwhile

  return -1

解答群

  • ア 要素数が1で、targetがその要素の値と等しい
  • イ 要素数が2で、targetがdataの先頭要素の値と等しい
  • ウ 要素数が2で、targetがdataの末尾要素の値と等しい
  • エ 要素に-1が含まれている

※出典「基本情報技術者試験(科目B試験)サンプル問題セット 問13」
https://www.ipa.go.jp/shiken/syllabus/henkou/2022/gmcbt80000007cfs-att/fe_kamoku_b_set_sample_qs.pdf

2022年4月のシラバス改正で、擬似言語で書かれたプログラムを読み解く問題がITパスポートでも出題されるようになりました。そのため、上記「出題例」のような問題を目にしたことがある方も多いハズです。

しかし、ITパスポートでは成立する「プログラムが出る問題は諦めて他を確実にとろう」といった作戦は、基本情報ではまったく通用しません。科目B試験において、⁠アルゴリズムとプログラミング分野」は、出題全体の8割を占める「避けては通れない壁」なのです。

さらにITパスポートよりも難易度が上がっていると来れば、尻込みする人も多いかもしれません。

ただ、この分野は筋肉トレーニングのように、⁠練習すればするほど着実に力が付く」ものでもあります。アルゴリズムで鍛えた思考力は、身近な業務の効率化(この順番でタスクをこなせば早い、など)にもつなげることができ、長い目で見れば大きな財産になるはず。苦手意識があった方も、ぜひ科目B試験の問題に挑戦してみてはいかがでしょうか。

どうやって対策すればよい?

基本情報については、IPA(試験実施団体)より問題の一部(解答付き)が無料公開されています。

IPA:問題冊子・解答例(2023年度、令和5年度)
https://www.ipa.go.jp/shiken/mondai-kaiotu/sg_fe/koukai/2023r05.html

対策にあたってはまず、科目A・科目Bの問題にざっと目を通し、⁠現時点でどれくらい問題が解けるか」⁠どれくらい知っている単語が出てくるか」⁠苦手そうな分野はどこか」を確認してみるとよいでしょう。

その上で、⁠今の自分の状態」に合った教材で学習を進めるのが試験突破への近道です。たとえば技術評論社のラインナップだと、以下のように教材選びを考えていくことができます。

「問題が呪文に見えた」「知らない単語が多すぎて、何が苦手なのかもわからない」

⇒網羅的な教科書で、まずは基礎知識を身に付ける

「問題を理解するためには、ある程度の基本語彙を知っている必要がある」というのは、基本情報に限らず多くの試験に共通する事実です。問題を見て「な、なに言ってんのかわからねぇ……」となった方は、試験のシラバスに沿った教科書で一からしっかりと学習することをオススメします。

「プログラムこわい」「アルゴリズムが壊滅的にわからない」

⇒特定分野に特化した参考書で、苦手を克服する

自分の得意・不得意がはっきりしているのであれば、特定分野に特化した参考書を用いるのも効果的です。とくにアルゴリズムは、苦手さえ克服できれば、確実な得点源になってくれるはずです。

「思ったより解ける」「いろいろな問題に触れてみたい」

⇒実践形式の問題集で、試験の出題に慣れる

基礎知識がすでにある程度身についているのであれば、問題集から学習を始めるのもアリでしょう。教科書レベルに解説が充実しているものを選べば、実践形式で用語の復習を進めることも可能です。

技術評論社の書籍が皆さまのさらなる挑戦の一助となれば、これに勝る喜びはありません。

藤本広大(ふじもとこうだい)

技術評論社書籍編集部所属。『⁠パワーポイント・デザインブック 伝わるビジュアルをつくる考え方と技術のすべて』のほか、『⁠一気にビギナー卒業! 動画でわかるAfter Effects教室⁠』⁠、『⁠SNSマーケティングはじめの一歩』などを担当。