これからもよろしくね! 上野のパンダファミリー!

上野パンダファミリーとの出会い

上野のパンダファミリーとの出会いは、2013年2月20日でした。

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初対面のリーリー
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初対面のシンシン

その前月、名付け親になったことがきっかけで、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドを訪れ、すっかりパンダにハマって帰ってきました。帰宅後、しばらくはパンダのことが頭から離れなくて、熱にうなされたように、ネットでサンディエゴ動物園の親子パンダのライブ映像を眺めていました。⁠名付け子の優浜と、サンディエゴのシャオリーウーくんが同年生まれのため、親近感が湧いていました。)

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シャオリーウーくん

そのうち、そうだ、パンダなら上野にもいるじゃない! と今更ながらに気づきました。上野は、国際子ども図書館や、バレエをよく観る東京文化会館があり、しょっちゅういっていたのに、動物園には長年足を運んでいなかったのです。

シャンシャン誕生でパンダブーム到来

早速、上野動物園に行き、年間パスポートを作りました。当時は、平日の午後なら、売店前のベンチに座ってお昼ごはんを食べながらパンダを観覧することもできるくらい、のどかでした。1週間にいちどくらい、仕事帰りに、ふらっと立ち寄る日々が続きました。

大きな変化が起こったのは、シャンシャンが生まれてからです。メディアでも大きく取りあげられ、シャンシャンの誕生を機にパンダブームが起こりました。

シャンシャンが生まれる1週間前、和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドでは、3頭のパンダ、海浜・陽浜・優浜が中国に返還されました。しばらく寂しくてしんみりするのかと思ったら、シャンシャンの誕生で、よい意味で気分転換というか、大きな慰めになってくれました。

ちょうどそのころ、わたし自身は、はじめてのパンダ本の出版を控えていました。2017年7月に、講談社の青い鳥文庫から、アドベンチャーワールドのパンダファミリーのノンフィクション『世界一のパンダファミリー』が出たのです。シャンシャンの話題にのっかって、わたしにもちらほら取材がきたことを覚えています。とりわけ、シンシンがよくシャンシャンの体をなめるため、白い毛がほんのりピンクになったことが注目され、何度か質問を受けました。⁠じつは、アドベンチャーワールドでは、よく飼育員さんが説明してくれていることでした。)

シャンシャンはすくすくと育ち、いよいよ12月19日から、一般公開されることになりました。けれど、お客さんが殺到するだろうからと、まずは事前抽選制になりました。

これが、まったく当たらないのです! シャンシャンの抽選観覧は、ことごとく外れた記憶しかありません。ただ、12月26日に、当選した方に連れていっていただき、初めてシャンシャンと対面しました。ひさしぶりに元気そうなシンシンにも会うことができました。

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初対面のシャンシャン1
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初対面のシャンシャン2
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お久しぶりのシンシン

2018年2月1日からの観覧は、先着での整理券制になりました。2月1日は、気合いを入れて始発でいったら、まだお客さんは10人もいなくて、ちょっと拍子抜けでした。おまけに、天気も悪かったため、初日は整理券が余ったそうです。その後の、白熱する一方だったシャンシャン・フィーバーを考えると、ちょっと信じられませんね。

ほぼ毎日上野動物園へ!

整理券制の観覧が始まってからは、週1回ペースだった上野詣でが、可能な限りほぼ毎日になりました。シャンシャンの成長の様子をしっかり見届けたかったからです。1歳になったらペースを落とそうか、2歳になったら……と考えているうちに、なんだかんだと「ほぼ日」ペースで上野通いを続け、そのうちシャオシャオとレイレイが生まれて……という感じで現在に至っています。

ちなみに、シャオシャオとレイレイも、コロナ禍ということもあり、長らく事前抽選制の観覧でした。こちらは、平日の午後を狙って応募すれば、わりあい当たっていました。わたしの場合、寝ていようが起きていようが、とりあえずは会えることが第一なので、当たりやすさ優先で時間を選んでいました。

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シャンシャン
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シンシンとシャオシャオ&レイレイ

リーリー、シンシンの中国返還の衝撃

さて、技術評論社から『ありがとう! パンダ タンタン 激動のパン生』がそろそろ校了になるころ、おかげさまで予約もたいへん好評で、つぎの企画は上野パンダで、なんて話していました。それが、8月30日に、リーリーとシンシンが9月末に中国に返還という衝撃のニュースが飛びこんできました。

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リーリー

わたしはちょうど上野動物園にいて、レイレイを観覧中でした(ほかのパンダは施設改装で非公開⁠⁠。レイレイは午後3時半すぎまで、ずーっと寝ていました。暑くて園内は空いていたため、茫然自失の状態で、レイレイを周回して観覧していました(何周したのかも覚えていません⁠⁠。最後の観覧時の、ほんとうに最後の瞬間に、やっと起きました。

その後、担当編集者たちと集まり、緊急の打ち合わせをして、急遽、リーリーとシンシンのメモリアル本『思い出をありがとう! 上野のパンダ リーリーとシンシン』の製作が決まりました。とにかくできるだけ早く、でもしっかりと品質は保ちつつ、とがんばって、10月に出版となりました。

上野のパンダファミリーの魅力を再確認!

その後、あらためて上野のパンダファミリーをじっくり取りあげることも、リーシン本の企画とともに予定されていました。こうして、今回できあがったのが『和気あいあい! 上野のパンダファミリー物語 ~リーリー、シンシン、シャンシャン、シャオシャオ&レイレイ~』です。

当初、タイトルは、⁠悲喜こもごも」という案もあったのですが、意味としては悪くないものの、冒頭に「悲」があるのがちょっと気になって、⁠和気あいあい」に落ちつきました。でも、⁠和」から始まり、わいわいがやがやとにぎやかで楽しそうな様子なので、よかったかなと思っています。

現在、5頭中3頭はすでに中国でくらし、シャオシャオとレイレイも近い将来中国に旅立つかもしれません。それでも、わたしたちにとって、5頭はこれからも「上野のパンダファミリー」であり、ずっと大切な存在です。あらためて、上野のパンダファミリーに「ありがとう」「これからもよろしくね」と伝えたいです。

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中国で過ごすシャンシャン
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同居していたころの双子シャオシャオとレイレイ

神戸万知(ごうどまち)

英米文学翻訳家・作家。ニューヨーク州立大学卒業。

白百合女子大学大学院で児菫文学を研究する。

神奈川大学,白百合女子大学,國學院大學など非常勤講師。

2012年に生まれた赤ちゃんパンダ「優浜」の名付け親になったことがきっかけでパンダ愛に目覚め,撮影を続ける。

おもな著書に『世界一のパンダファミリー』『もふもふ あかちゃんバンダ」 (ともに講談社),『ありがとう!パンダ タンタン激動のパン生」『思い出をありがとう! 上野のパンダ リーリーとシンシン』,『良浜と浜家』(いずれも技術評論社),訳書に『メキシコヘ わたしをさがして』(偕成社)など多数。