こんにちは。理系イラストレーターのうえたに夫婦です。化粧品メーカーの元研究員である夫と、元バスガイドで理系ではない妻のユニットで活動しています。なお、この原稿は夫が書いています。
新刊「マンガでたのしむ! 科学の実験」は、科学グッズ店の店主である加賀楠樹という男性が主人公の物語。お店に寄せられるお悩みを「科学の実験で解決する」というストーリーになっています。
なお、本書は2022年に出版した「マンガでたのしむ! 科学の法則」の続編で、第1弾に続いて今回も非常に楽しいマンガに仕上がりました。
こんなお店があったらいいな
マンガの舞台となるのは、商店街にある加賀のお店「ニューニュートントン」。このお店では科学おもちゃや工作キット、実験器具など、科学に関するさまざまな物を取り扱っています。さらにお店の奥には、工作機械が並ぶ工房もあるという設定です。市販されている商品の販売もするし、自分でつくったおもちゃも販売するというスタイル。「こんなお店があったら楽しいだろうなぁ」という思いでお店の設定を作ったわけですが、マンガを描いていくうちに、「あ、本当にこんなお店を将来作りたいかも」と思っている自分がいます。楽しいお店なので、どんな商品が置いてあるか、マンガの中で背景をじっくり見てもらえると嬉しいです。
↑ニューニュートントンの内部はこんな感じ
さて、主人公の加賀のもとにはいろんなお悩みが寄せられます。「お風呂を嫌がる子供をなんとかしたい」「部屋に侵入した犯人を見つけたい」「シャツに色をつけたい」などなど。それを加賀が「発泡入浴剤を自分で作る実験」「指紋を採取する実験」「玉ねぎの皮で染色実験」で解決してしまうのです。加賀は科学のこととなると周りが見えなくなるというか、要は科学が好きで仕方ないんですよね。なので、実験も大好き。指紋採取の実験のときなんて、警察の鑑識のコスプレまでしちゃってます(笑)その一方で、加賀は商売についてはあまり上手ではありません。ただ、作者としてはその加賀のアンバランスな雰囲気に魅力を感じてしまいます。何か尖った能力やセンスを持っている人って、魅力がありますよね。
↑鑑識コスプレをしている加賀
「実験」は3つに分類される
本書のテーマである「実験」ですが、私は「研究のための実験」「学びのための実験」「ただ楽しむための実験」の3つに分かれると考えています。最初の「実験」は大学や研究機関、メーカーなどで行われているもので、私自身も化粧品メーカーにいた頃、毎日行ってました。これは何かを明らかにすることが目的なので、手順の正確さや実験結果をどう考察するかなどが重要になってきます。もちろん実験によって新たな発見があれば楽しいのですが、それよりもその発見の新規性やその後の研究をどう進めるかなどに気が取られてしまいます。
次に「学びのための実験」ですが、これは小学校から大学まで、教育現場で行われる授業の中の実験です。これは先人たちが明らかにしてきた科学の法則や現象を追体験するためのものなので、もちろん大切ではあるのですが、楽しさという面ではあまり高くない気がします。
そして最後の「ただ楽しむための実験」というのは、見た目の変化があったり大きな音がするなど、五感にはたらきかける実験であることが多いです。テレビやイベントなどで科学パフォーマーさんがやっている実験をイメージしてもらえるといいかもしれません。こういった実験って、子供たちが科学や理科に興味を持つきっかけになるのですごく重要だと思います。もっと言うと子供だけでなく、大人も科学のすごさ・不思議さに触れる良い機会になるので「楽しむ実験」に触れた方がいいと思っています。
有名なサイエンスプロデューサーである米村でんじろうさんは「科学を文化として根付かせたい」とインタビューで答えています。私もその通りだと感じています。科学を難しいものと決めずに、エンタメの1つとして楽しめばいいんです。そこから「もっと知りたい」と感じた子供たちはそれを深掘りする道に進めばいいんです。今回の新刊では「ただ楽しむための実験」がたくさん出てきます。科学をエンタメとして楽しむ、そんな本になっていると自負しています。
実験って楽しい
今回の本に登場する実験はどれも楽しいのですが、個人的におすすめなのは「レインボーフラワーをつくる実験」です。切り花着色剤を用意できるとベストですが、食紅やプリンター用インクでも代用できます。ただ、いわゆる普通の絵の具ではできませんのでご注意を。
さらには、「マヨネーズをつくる実験」もおすすめ。泡立て器を使って手動で混ぜながらというのもできなくはないですが、ハンドミキサーがあるとやりやすいです。酢や塩の量、油の種類、味付けで胡椒を入れるなど自分なりにアレンジしてみても楽しいですよ。
ちなみに、本書を楽天ブックスで購入すると「夏休みの自由研究に使える実験きろくシート」が特典で付いてきます。これからの時期にぴったりなので、ぜひそちらもチェックしてくださると嬉しいです。
↑ガーベラをレインボーフラワーに ↑マヨネーズをつくる実験
最後になりますが、本書を読めば「実験やってみたい!」となること間違いなしです。そして、実際に実験をしてみて、その楽しさや不思議さに触れて欲しいです。ただ、実験をする際は必ず子供だけではやらないようにしてくださいね。本書が、科学の楽しさ・不思議さに触れるきっかけになることを願っています。