空にいる永明さん、お元気ですか?
表紙を見るだけで、今もたくさんの思いがあふれ、涙が出そうになります。どれだけの愛を、あなたは残してくれたことでしょうか。
永明さんとの出会い
永明さんとの出会いは、2013年1月、優浜の名付け親となり、初めてアドベンチャーワールドに訪れたときでした。
物心がついてからは、初のパンダだったので、もちろん当時は見分けがつきませんでした。小さいふたごがいて、大きなふたごもいて、赤ちゃんもいて……そのくらいの認識でした。赤ちゃんといっしょにいるのがお母さんパンダ(良浜)、一頭でいるのがお父さんパンダの永明さん、と覚えています。
名前にしても、「永明」と「永浜」がいたので、バックヤードツアーで担当してくれたパンダも、あれ、どっちだったっけ? とちょっと混乱しました(正解は永浜でした)。
永明さんの印象深いシーン
ただ、どういうわけか、今でもふとしたときに思い出す、心に残っている場面があります。
閉園間際の外の運動場で、永明さんはゆったりと散歩していました。真冬の平日でしたから、もうお客さんもまばらで、永明さん前は、わたしと、もうひとり、男性がいたくらい。ふいにその男性が、両手を口に当てて「えいめーい!」と声をあげ、永明さんはとくに気にかける様子もなく、マイペースに歩きつづけていました。
特に大きな出来事があったわけではないのに、そのときの光景が、なぜか脳裏に焼きついて離れません。
思えばあの日から、永明さんはわたしにとって特別な存在だったのかもしれません。
季節ごとに楽しませてくれた永明さん
永明さんとは、季節ごとに思い出があります。
【春】:桜と永明さん
春は、なんといっても桜です。永明さんがいた屋外運動場の前に桜があります。毎年、桜の季節に永明さんと桜のコラボが楽しみでした。
ですが、桜は開花状況を見極めるのがむずかしいです。たとえば、永明さんの誕生日であれば、1年前から飛行機のチケットを押さえておくのですが、桜はいつ満開か、直前までわかりません。開花予報をにらみつつ予定を立てるのですが、ばっちり当たった年もあれば、外した年もありました。
ビッグオーシャンの3階から、桜と永明さんと観覧車も撮りました。彩浜が赤ちゃんのころは、観覧車に乗って、上空から、永明さんと良浜と彩浜のスリーショットを狙いました。
【夏】:父の日の思い出
いちおう夏のくくりでは、6月の父の日です。なんといっても、世界一のお父さんパンダの永明さん。永明さんのおかげで、可愛い子パンダにたくさん出会えたのですし、感謝の思いもひとしおです。
イベントでは、子どもたちをかたどった雪パンダをおだやかにながめたり、よりそって眠ったりする永明さんが印象に残っています。永明さんは、みんなの期待する位置や向きに座ってくれる天才でもありました。こういうところも、さすがレジェンドでしたね。
【秋】:永明さんの誕生日
秋は、もちろん、9月14日の、永明さんの誕生日。
じつは、わたしは永明さんと誕生日がいっしょです。同じ誕生日だと、矢沢永吉さん、安達祐実さん、上戸彩さんなどの有名人がいますが、個人的には永明さんと同じことが、なにより自慢でした。というより、自分の誕生日にはあまり興味がないものの、永明さんといっしょに祝えることは喜んでいました。
【冬】:バレンタインデーの記憶
冬の思い出は、バレンタインデーです。毎年、永明さんにプレゼントをおくるイベントがありました。2023年2月に、永明さんが中国へ旅立つ直前の、最後のイベントもバレンタインデーでした。
そして、2025年に永明さんが亡くなったという知らせが発表になったのも、バレンタインデーです(実際に亡くなったのは1月25日)。
その日は、開園直後に、パンダラブで楓浜にプレゼントをあげるイベントがありました。楓浜はよろこんで氷とたわむれ、楽しくイベントが終了しました。そして、ブリーディングセンターへ良浜と彩浜に会いにいこうかと思ったとき、ふとSNSをのぞいたら、衝撃のニュースが飛びこんできました。ちょうどバレンタインデーで永明さんを思いだしていたときに、なんというタイミングでしょう。
永明さんは32歳を迎え、人間でいうと100歳を超えるくらいですから、いつ寿命がきてもおかしくはありませんでした。それでも、1日でも長く生きてほしかったし、中国では非公開で会えることはないとしても、もうこの世にいないと思うと、頭はからっぽになり、とにかく悲しかったです。
ブリーディングセンターでは、永明さんのすごした運動場、永明さんの写真がついたプレート、憩いの大熊猫に展示されていた永明さんのタイヤを見ながら、永明さんに思いを馳せていました。
その頃、ちょうど『良浜と浜家』が製作真っ最中でした。すぐに、担当編集者と連絡を取り、永明さんのメモリアル本も出せないかという流れになりました。最高に素敵で、偉大な永明さんの記録を残したい! という一心で、担当編集者ががんばって企画を通してくれました。これまでの「パン生」シリーズが好調だったおかげです。
かっこいい永明さん、かわいい永明さん、お茶目な永明さん、おだやかな永明さん……永明さんの魅力をふんだんに詰めこみました。永明さんの名に恥じない、永久保存版と呼ぶに値する本になったと思っています。これからの、ポスト永明時代のパンダファンにも、ずっと受け継がれてほしいと願っています。