「使う」から「作る」まで ――AWSではじめるMCP入門

2024年11月26日、Anthropic社がMCP(Model Context Protocol)を発表しました。それから約半年の間に、Cline(2024年12月⁠)⁠、Cursor(2025年1月⁠)⁠、OpenAI Agents SDK(2025年3月⁠)⁠、GitHub Copilot(2025年4月⁠)⁠、Amazon Q Developer CLI(2025年4月)⁠、Google Agent Development Kit(2025年4月)と、主要な開発ツールやフレームワークが次々とMCPに対応。2025年5月にはMicrosoftがWindowsでのネイティブサポートを発表するなど、AIエージェント開発の標準プロトコルとしての地位を確立しています。

以降では、AWSではじめるMCP実践ガイド⁠以下:本書)の記述をベースに、MCPが解決した課題とアーキテクチャの一部を振り返り、書籍ではどのような内容が学べるか、適宜引用を交えて解説します。

MCPが解決した課題

MCPは標準化されたプロトコルであり、MCPを利用することで、AIアプリをさまざまなデータソースやツールに接続できます(下図参照⁠⁠。AIアプリにとってのUSB Type-Cポートと例えられることもあります。

図1 MCPを通じてさまざまなデータソースやツールと連携できる(本書2ページより引用)

MCPが登場する以前、類似の機能を持つLLMアプリを複数開発する場合、それぞれのアプリに同じ機能を個別に実装しなければなりませんでした。

こうした状況が、MCPの登場により大きく変わりました。たとえば、検索機能を1つのMCPサーバーとして開発すれば、LLMアプリでは、MCPのプロトコルを通じてこの機能を呼び出せば済むようになります。またこれにより、開発者の分離も可能になりました。

MCPのアーキテクチャ

MCPはクライアントサーバーモデルを採用しており、⁠MCPサーバー」⁠MCPクライアント」⁠MCPホスト」の3つのコンポーネントで成り立っています。

MCPは、これらのコンポーネント間でコンテキストをやりとりします(下図参照⁠⁠。

図2 MCPコンポーネントの概要図(本書15ページより引用)

MCPは、stdio方式とStreamable HTTP方式という2つの通信方式をサポートしています。stdio方式はMCPサーバー/クライアントが同じマシン上に存在する場合に利用されます。Streamable HTTP方式はMCPサーバー/クライアントがそれぞれ異なるマシン上に存在する場合に利用されます。

さらに、MCPサーバー/クライアントがそれぞれに提供する機能として、プリミティブというものがあります。プリミティブは、以下の6種類あります。

  • Prompts(プロンプト)
  • Resources(リソース)
  • Tools(ツール)
  • Sampling(サンプリング)
  • Roots(ルート)
  • Elicitation(エリシテーション)

それぞれ、プロンプトテンプレートやコンテキスト、関数などです。AIアプリケーションは、これらのプリミティブに応じて、MCPホストとしてどのようなコンテキスト情報が利用可能か検索するのです。

「使う」と「作る」、両方学べる構成

ここまでの内容は、本書第1章、第2章の内容を一部抜粋して再構成しています。

第1章では、ChatGPTの登場からMCPに至るまでの技術の流れを解説します。プロンプトエンジニアリング、RAG、Function callingなど要素技術を押さえ、MCPがどのような影響を与えたか、その概要を説明します。

続く第2章でMCPのアーキテクチャを掘り下げ、第3章でAWSエコシステムとの連携を理解します。PythonコードやAWSを利用した環境構築手順などを解説していますが、言語仕様やクラウドサービスそのものには深く踏み込みません(AWSアカウント作成手順やPythonパッケージマネージャの使い方は付録で解説しています⁠⁠。初学者でも読み通せると思いますが、基礎知識をお持ちの方はより深く理解できるでしょう。

このように、本書の前半では、生成AIアプリ開発の概況をあらためて振り返り、⁠MCPを利用する意義」⁠MCPの基礎知識」を学べます。

AWSエコシステムによるMCPの実践

本書の特徴の1つは、なんといってもAWSを実践環境として徹底活用している点です。

AWSは2025年4月にAWS MCP Serversを発表し、以降も継続的にMCPエコシステムを拡充してきました。2025年5月にはAIエージェントフレームワーク「Strands Agents」をオープンソースで公開、2025年7月にはサーバーレスでAIエージェントやMCPサーバーをホスティングできる「Amazon Bedrock AgentCore」を発表(2025年10月に一般提供開始)するなど、MCP利用者にも開発者にも充実した環境を提供しています。

本書は、AWS公式のMCPサーバー群はもちろん、Strands Agents、Amazon Bedrock、Kiro、Amazon Bedrock AgentCore Gatewayなどを駆使して解説しています。

第4章ではClaude CodeをMCPホストとして使い、MCPサーバーの各プリミティブを実装します。第5章ではAWS公式MCPサーバーを活用したインフラ構築と運用分析、RAGチャットアプリの開発、リサーチエージェント基盤の構築といったプロジェクトに取り組みます。そして第6章では実運用に向けて、AIエージェントの評価やMCPの管理などを実践します。

本書を片手にMCPに飛び込もう

本稿冒頭でも述べましたが、MCPは2024年11月の発表から約半年で、AWSはもちろん、Anthropic、OpenAI、Google、Microsoftといった主要プラットフォームベンダーが対応したプロトコルとなりました。AIエージェント開発において、実質的な業界標準の地位にあります。

本書の刊行時点でもすでに、さまざまなMCPサーバーが公開されており、Notion、PayPal、Jira/Confluenceなど、ビジネスツールのMCPサーバーも公開されています。AWSは、AWS API MCP ServerやAWS Knowledge MCP Server、Amazon Bedrock Knowledge Base Retrieval MCP Serverなどを提供しています。

今後、AIエージェントを活用する開発者にとって、MCPは避けては通れない技術でしょう。今からでも遅くありません。AWSではじめるMCP実践ガイドでMCPの世界に飛び込み、AWSのリソースを利用して体得してみませんか。

山本紘彰(やまもとひろあき)

技術評論社第5編集部所属。2024年度までSoftware Design編集部で月刊誌『Software Design』の編集に従事。現在は技術書を中心に書籍の企画・編集を担当。
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山本紘彰(やまもとひろあき)

Software Design編集部所属。2019年度入社。