本記事は『Web Site Expert #29 』の特集企画で行われた土屋敏男氏(第2日本テレビ)×津田大介氏の対談の模様で、雑誌には収録できなかった部分を特別に公開するものです。雑誌記事と合わせて読むことで、Twitterのタイムラインが作る世界観に、さらにハマれること間違いなし!
もうひとつの世間
土屋(以下土) : Twitterって、自分で構築できる「もうひとつの世間」じゃないかなと最近おもってるんです。
ぼくはいま自分のアカウント(@TSUTIYA_ON_LINE )のほかに、Tプロデューサー(@TP_boss )としてもTwitterをやってるじゃないですか。だからアカウントを切り替えなくてもいいように、番組(人はツブヤキだけで生きていけるか?)関係をリスト(@TSUTIYA_ON_LINE/denpa )にまとめたんですよ。でも、そのリストを見てると、自分でやってることなのに、なんか息が詰まってくるんですよね(苦笑) 。
チーム有吉のぐりんぴーす(@AH_rumion )がこんなことを言ってて、こうなって……って見てると、息が詰まってくる。完全に仕事のことだけになるから。それでもういっかいタイムラインに戻ってみたら、自分の好きな人たちが並んでて気持ちがいい。
息が詰まるような仕事関係の人ばっかりじゃなくて、マークしてる人たちが有益だと思われる情報を次々とつぶやいてるだけでもなくて、高校生の女の子もいたりして、それが今の自分にすごくフィットしてる。あ、これは「ぼくが望んだ世間」なんだなって気づいたんです。
津田(以下津田) : 好きな人のつぶやきって何でもおもしろいですしね。有名人も、無名の友だちも含めて。
よくあるTwitter批判で、「 誰がが『メシを食った』とか『どこにいる』とか、そんなことの何が楽しいんだ」みたいな言い方がされますけど、実際はそんな他愛もないことが意外と楽しい。あ、だれそれさんは今日の昼飯に蕎麦食ったんだ、じゃあオレも蕎麦食おうかな、みたいな。これは自分でも最初は気がつかなくて、発見だったんですけど。
そういう意味では、人間が好きだったり、コミュニケーションが好きなひとは、それだけでタイムラインをおもしろくできるんですよね。
自分のブラックボックス
土: ぼくにはそこそこの年齢の息子や娘がいて、Twitterをやってるんですよ。離れて暮らしているから、Twitterを見てると何をしているのかな、こんなことしてるんだな、っていうことがいちおうわかるので安心できる。そういう使い方もありますね。
ただ、自分のブラックボックスがどんどんなくなっていくという一面もあって、ぼくのカミサンがぼくだけをフォローしてるんですよ(苦笑) 。だから、彼女のあるひとつの世間は「ぼく」です。
津: 監視されてますね(笑) 。
土: ぼくは彼女に「こんなサービスがあるんだよ」って教えて、あとはまったく意識しないで適当なことをつぶやいてるんだけど、気がついたらぜんぶ捕捉されてる。電話をかけていま何をしてる何時に帰るってまったく言う必要がないわけですよ。
津: ぼくも誰かと呑んでるときは、ほとんど捕捉されます(苦笑) 。帰って「いやいや今日は仕事で」って言うと、「 嘘でしょ」ってタイムライン見せられて、全部バレてる。ぼくが書かなくても、一緒に行ったひとが書いてるので。これはキツイなーとおもいつつ。ま、それもおもしろいかなと(笑) 。
タイムラインの作り方
津: コミュニケーションが苦手なひとでも、情報入手ツールとしてはとても優秀ですよね。自分の「世間」の作りかた次第で、ものすごい速さでいろいろな情報が入ってくる。テレビの速報より速くニュースが入ってくるし、話題の小説や映画も入ってくる。
土: いままでは検索しないといけなかった情報が、リアルタイムで入ってくる。
津: タイムラインが無償のプロモーションになるはなしは先ほどもありましたけど(本誌参照) 、堀江さん(堀江貴文元ライブドア社長、@takapon_jp)も同じようなことを言ってましたね。タイムラインで見かけた映画を見に行くとハズレがない。もともと「THIS IS IT」にも「アバター」にもまったく興味がなかったんだけど、タイムラインを見ていると、自分が認めているひとたちがとにかく「おもしろいおもしろい」と言ってる。じゃあって見に行ってみたら当たりだった。そういうことが起きてますよね。
編集: そういうタイムラインを作る方法でなにかアドバイスはありませんか?
津: ぼくは最初に言ったように(本誌参照) 、まず100人フォローしてみることを勧めているんですが、その100人を探すときに一番簡単なのが、同業者を探すことですね。同業者って、抱えてる問題意識が似てるし、情報に対するアンテナが近いから、書いたことが響くんです。
それから、ログを全部追うわけじゃないけど、この人たちのつぶやきがおもしろいなあってタイムラインをずっと見ていれるのは、マックスで300人くらいが限界ですね。ぼくも実際、300人くらいまでがいちばん楽しかった。
でもいろんな絡みがあって知り合いも増えてきて、500を超えてからは追い切れなくなったんで、これはもう700も1000も同じだなとおもって、ガンガンフォローするようになりました。どうしても見逃したくない人はリストで見るみたいな。
プロフィール
土屋敏男(つちやとしお)
@TSUTIYA_ON_LINE
日本テレビ放送網編成局デジタルコンテンツセンターエグゼクティブディレクター。1979年日本テレビに入社。「 天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「 ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」などバラエティ番組の制作に関わる。電波少年シリーズでは「T部長」としても出演した。
プロフィール
津田大介(つだだいすけ)
@tsuda
メディアジャーナリスト。インターネットユーザー協会(MIAU)代表理事。コンテンツビジネスや著作権、IT、ネットカルチャーをフィールドに著作活動を行い、文部科学省文化審議会著作権分科会では複数の小委員会で専門委員を務める。主な著書に『だれが「音楽」を殺すのか?』『 Twitter社会論』など。
リストがコンシェルジュになる
津: リストのおもしろい使い方って、これからいろいろ出てくるんじゃないかなとおもうんですよ。個人的にすごくおもしろかったのは、ぼく1973年生まれなので「'73年生まれ 」というリストを作って、同い年のひとを募集したり、自分で知ってる友だちも含めて一括で見てるんですけど、これがおもしろいんですよね。同世代だけが感じていることがあって。
職業もなにもぜんぜん違うんですけど、同い年の人がいま何に悩んでいるのかとか、すごくリアリティがある。36歳から見た世間ってこうか、みたいなものが見えたりもするので。
土: それおもしろいですね。同い年だと感じ方も似るのかな。ぼくの場合はいま53歳で、twitterをやってる53歳って、かなりの少数派だとおもうんだけど……さらに金髪って掛けるともっと少ない(一同笑)
津: じゃあ「金髪」ってリストをつくって、金髪のひとがTwitterを始めたら追加していきましょうか。箭内(道彦)さんとか始めてほしいなあ。
土: 同年代だけ拾うリストがおもしろいとか、金髪だけのリストとか、そういうおもしろいリストの作り方が、次の段階として必要になるかもしれませんね。ものすごく明るい気分のときに見るリストとか、泣いてしまいたいときにはこんなリストとか。糸井(重里)さんが言っている「ホテルのコンシェルジュ」みたいな。
莫大なインターネットの情報の中からコレとコレはおもしろいよって出してくれる、ネット上のコンシェルジュって必要なんだろうなってなんとなく思ってたんだけど、いまそれがTwitterによって実現されつつありますね。
タイムラインをプロデュース
津: 土屋さんはプロデューサーだから、そういう感覚はまさにリストやタイムラインをプロデュースしてるってことだとおもうんですけど、そうやって自分のタイムラインを自分で構築するところにTwitterの独自性がありますね。
たとえば2ちゃんねるを見るときって、何板の何スレッドといえば、みんなが同じ内容を見てるわけですよ。流れとしては、Twitterと同じように数秒単位で書き込みが増えていくわけだけど、2ちゃんねるのような掲示板システムだと、みんなまったく同じものを見ているし、同じような雰囲気を感じている。
それがTwitterになると、自分がすごく政治に興味があって、小沢問題についてつぶやいているひとをどんどんフォローしていったら、まさに「世間」は「小沢vs検察」を大問題だととらえているようにおもうでしょうし、アニメにすごく興味があるひとがアニメアイコンだけずっと追加していると、誰も小沢の話なんかしないでアニメの話をしてるわけですよね。
全員が見てるものが違うっていうのが、Twitter最大の特徴ですよね。まあそれが「Twitterって何だろう?」という語りを難しくしている部分でもあるんですが。
土: そうですよね。このタイムラインを見ている、総体としてのこのタイムラインを持っているのは、自分しかいない。誰一人として同じタイムラインを見ていない。そこがおもしろい。
アニメのことばっかりフォローして、そこだけに浸ることもできるだろうけど、やっぱり一割は家族のことを考えたり、生活はどうしようとか、気持ちはとうぜん揺れ動くし、けっきょくタイムラインはひとつのジャンルだけじゃなくなりますよね。何でもない人たちを自分のなかで組み合わせて、自分にとって気持のいいタイムラインをつくるにはどうしたらいいか、みたいなことを実際にはやってる。だからタイムラインはすごく大事なんですよね。
Web Site Expert #29
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