みなさん、明けましておめでとうございます。シリウスラボ所長の関です。はてなさんのオフィスで行われたジオメディアサミット西日本の帰りの新幹線の中で執筆している本稿では、ジオメディアサミットと位置情報サービスの紹介、そして今年の位置情報サービスのトレンドを展望してみたいと思います。
ジオメディアサミットとは
ジオメディアサミットとは、ボランティアにより運営されている、位置情報を使ったメディアのための無料の勉強会/交流会です。誰でも参加でき、誰でも開催することができるようになっています。2010年は、東京で2回、大阪で1回、京都で1回開催いたしました。
ジオメディアサミットを開始したのは2008年1月。その時点では、位置情報サービスは位置情報関連の技術が好きな人が運営するニッチなサービスという色合いが濃いものでした。最初は単なる飲み会から始まりましたが、参加者は位置情報好きの技術者がほとんどを占めていました。そこで発表されたサービスも、同好の士が趣味で作ったサイトの延長線というノリのサイトが多かったと思います。
しかし、2010年頃から状況が一変しました。ジオメディアサミットの参加者も300名を超え、G空間EXPO内の会場で丸一日ジオメディアについて語っても語り尽くせないほどのサービスが出てきました。なかでも位置ゲーのパイオニアであり、KDDIとの提携を発表したコロプラなど、商業的に成功しつつあるサービスも生まれてきています。
ジオメディア市場が大きな成長を遂げていくプロセスと共に、ジオメディアサミットも大きくなってきているということでしょう。
様々な位置情報系サービス
GPS対応携帯電話が普及し、スマートフォンでの位置測位やGeolocation APIなどにより位置情報の取り方も進化していく中で、位置情報を使った様々なサービスが生まれては消えて行きました。その中から先ほどのコロプラによる「コロニーな生活☆PLUS」やマピオンの「ケータイ国盗り合戦」など、いわゆる「位置ゲー」の形で大きく飛躍したサイトもあれば、Foursquareから火がついたような「チェックイン」系のアプリケーションをmixiやはてな、ライブドアなどの大手メディアが開始する流れもありました。
屋内測位やGeoHex、オープンソースGIS、空間情報DB、ARなど、技術的な面ではまだまだ進化は続いていき新たなサービス形態も生まれてくるとは思いますが、2011年以降は、よりメジャーなサービスの中での位置情報の活用、マネタイズがテーマになってくるはずです。長年位置情報関連サービスで言われてきた、「紙媒体向け販促市場のネットへの移行」がいよいよ始まると考えています。
位置情報サービスには、他のネット系の広告媒体にはない、ユーザの場所がわかる/ユーザを動かす特性があります。その特性をうまく利用し、これまでネットに分配されにくかった販促予算を獲得するサービスが生まれてくるのではないでしょうか。
筆者が勤めるシリウステクノロジーズも、ヤフージャパン社の元で、それまで運営していたAdLocalで培った位置情報連動広告のノウハウを活用したサービス展開を進めています。
2011年、注目するテーマ
2011年ですが、個人的には以下のようなテーマに注目しています。
プッシュリコメンデーションサービスと位置情報
位置の常時測位は現時点では、電池の消費が激しい点や、プライバシー面での配慮などからあまり利用されてきませんでした。しかし、ドコモのiコンシェルのインストール数も増えてきていますし、AndroidやiPhoneのAPIもバージョンアップをしていくにつれ、低精度ながら電力消費の低い測位方法も選べるようになってきました。Twitterクライアントなども、位置情報をサポートするものが増えてきています。このような機能をうまく組み合わせ、ユーザにプッシュで情報を送るようなアプリケーションがいよいよ普及していくのではないでしょうか。
プッシュで情報が送れるからと言って、広告を片っ端から送りつけてしまってはすぐにサービスを使ってもらえなくなってしまいます。しかし、ユーザがほしい情報と広告主が送りたい情報を最適にマッチングするようなリコメンデーションサービスが構築できれば、大きな市場が生まれるはずです。
ソーシャルグラフと位置情報
2010年にはmixiがチェックインサービスを開始しましたが、位置とソーシャルグラフの相性はとても良いと考えています。人間同士の関係性には、「友人関係」を元にしたつながりだけではなく、「同じ部屋にいる」「同じ勉強会にいる」といった、場所を元にしたつながりもありえます。また、「友人関係」に「場所」を連携させた、「近くに◯◯さんがいる」といった情報がコミュニケーションを活性化させることもあるでしょう。
カウンターとして、プライバシーの面での懸念もありますので、このバランスをうまく考慮したサービス設計が必要となります。
地図API活用から、空間データAPI活用へ
Google Mapsなどの便利なAPIは位置情報アプリケーションの広がりに大きな影響を与えていますが、今後は空間データについての議論も進んでいくと思います。Twitterは位置情報の一部にYahoo Inc.が提唱するPOI識別子、Where On Earth IDを採用していますが、空間情報データベースの連携やオープン化などがさらに進んでいくと思います。
例えば、Open Street Mapというフリーな地図データのプロジェクトがありますが、このプロジェクトでは、参加者がWikiのように地図データを更新することができるようになっています。ドイツでは開始2年で既に商用地図よりも詳細な書き込みがされているレベルになっているのですが、日本でも普及のきざしが徐々にですが見えてきています。
これまで多くのサービスは、用意された地図を表示する所までの利用が多かったですが、その地図の描画方法を独自に変更したり、中に入っている空間情報データを独自で定義・公開したりといったサービスも増えてくるでしょう。
最後に
2011年もジオメディアサミットは続けていきますので、ご興味のある方は、http://geomediasummit.jp/を覗いてみていただけましたら幸いです。