2017年12月14日にHTML 5.2が勧告されましたが、ほぼ同時期にWHATWGがFurther working mode changesという記事を公開しました。この記事ではWHATWGが行なっている標準化プロセスの整備について述べられています。
現在W3CとWHATWGという2つの団体がHTMLの仕様を標準化しています。2017年の記事にあるHTML 5.1およびHTML 5.2 - HTML Living Standardとの乖離でも触れられていますが、これにはバージョニングし勧告を発行したいW3Cと、Living Standardとして更新し続けたいWHATWGとで、スタンスの違いから標準化プロセスが分離したという経緯があります。しかし、W3Cが公開しているドキュメントはWHATWGのものをフォークし、整合性を無視して変更を加えているだけというのが実情で、ブラウザを開発するベンダーもWHATWGがメンテナンスしている“生きた仕様”を元に実装しています(仕様策定に関するW3CとWHATWGの違いや経緯については、momdoさんの記事が詳しいです)。
WHATWGはブラウザベンダーの人間が集まって形成されている組織であり、W3Cのように法人格があるわけではありません。また、公開しているドキュメントのロイヤリティについても、W3Cのようにパテントポリシーが存在しません。Further working mode changesでは、こうした状況を踏まえて作業プロセスを整備していくことが宣言されています。中でもIPRポリシーの導入が最も大きなところでしょうか。
Service Workerは、ブラウザで発生するネットワークリクエストのハンドリングや、サーバーからのプッシュデータの受信など、Webに長らく求められてきた機能を実現する強力な仕様です。これまでは実装しているブラウザがChromeとFirefoxのみという状況で充分とは言えないサポート状況でした。しかしEdgeとSafariに実装されることでモダンブラウザによるサポートが揃い、大きく好転するのは間違いありません。
Cache APIを使ったネットワーク通信のキャッシュによるページロードの高速化やオフライン対応、サーバープッシュの受信によるユーザーエンゲージメントの向上など、Progressive Web Appsの文脈においてもService Workerがもたらす影響はWebアプリケーションにとって大きなものです。特に、Safariでのサポートがそう遠くない未来に来ることを考えると、デバイスの性能やネットワーク環境の面で劣るモバイルWebを大きく前進させる年になるでしょう。