クリエイティブカレッジはYahoo! JAPAN と、ロクナナワークショップ が「Yahoo! JAPANインターネット クリエイティブアワード2009 」のプレイベントとして開催した1日限りの無料セミナーです。
コミュニケーション コンテンツ セッション
「Yahoo! JAPAN×ロクナナワークショップ クリエイティブカレッジ 」3つめのセッションは、「 コミュニケーション コンテンツ セッション みんなの携帯で大型ビジョンをリアルタイム共有! 」 。
会場の様子
ゲストに 株式会社バスキュール のディレクター・馬場鑑平 氏、オーガナイザーは、ロクナナワークショップ講師、大重美幸 氏が務めました。
馬場鑑平氏(左)大重美幸氏(右)
「helmets」
本セッションでは携帯電話をコントローラのように使って、複数人がWeb上でリアルタイムに楽しめるインタラクティブ・コンテンツの紹介と実際のコンテンツの仕組み、そして「どうやったら携帯電話とPCを連動させて面白いコンテンツをつくることができるのか」と、コンテンツを洗練していく過程が馬場氏から披露されました。
携帯電話とPC連動のコンテンツの仕組み
馬場氏はまず「helmets」というコンテンツを紹介しました。「 helmets」とは、携帯電話をコントローラとして使い、Web上で自分のアバターを操作して、みんなでゲームを楽しむというマルチユーザーを想定したイベント用コンテンツです。
「helmets」のデモは実際に会場の参加者の方の携帯電話からユーザー登録をして頂き、さながらゲーム大会のような雰囲気で行われました。
スクリーンにクイズが出題され、2つある選択肢の正しいと思う方に自分のアバターを携帯電話で操作して誘導していきます。正解し続けるとアバターのビジュアルに変化があったり、他のユーザーを邪魔をするための爆弾が落ちてきたりするなど非常に見た目が楽しいコンテンツです。
helmets
携帯電話との連動の仕組み
次に馬場氏から、「 helmets」コンテンツ全体の仕組みについての解説がありました。まず、携帯電話からFlash Lite 1.1で作成したコンテンツから、http経由でバスキュールで作成した「連動サーバー」に設置してあるPHPをリクエストし、そして連動サーバーからFMS(FlashMediaServer)に「ソケット接続」を使って通信を行います。FMSとPCはrtmp(Flash リアルタイムメッセージングプロトコル)を使ってリクエストをせずに通信を常時行い続け、FMSでの情報はリアルタイムにPC上のFlash(swf)に反映されます。
携帯電話との連動の仕組み
単純に携帯電話からPCに対してデータを伝えるだけであればFMSは不要で、「 helmets」においてFMSを使用するのはゲームの要素があり、爆弾を爆発させたり見せ方の同期を取る必要があるからです。また、常に通信は行われているものの、サーバから携帯電話へリクエストを送ることができないという仕様もあるので、何かしら携帯電話で操作を行わないとPCの画面上にアクションが起こせないという「縛り」があります。
馬場氏は、この携帯電話との連動するコンテンツを作成する面白さとして、「 携帯電話の操作が外部のモニターにリアルタイムに反映されることが単純に面白い」 、「 公共性の高いモニターの前に人が集まれば、手軽にすぐ参加できるので開かれた感じがする」 、「 待受画像やGPSなど、携帯電話ならではの機能と組み合わせることができる」という点を挙げました。
「helmets」は去年作成されたコンテンツですが「ユーザー間にインタラクション(互いに影響しあう感覚)を持たせる」という目的があり、これは成功したといえるでしょう。しかし、実際に会場で「helmets」で遊ぶためには、携帯電話からQRコードでアクセスしてメールを受け取り、受け取ったURLにアクセスして情報を入力し、自分が撮影した顔写真をアップして登録する…という工程がゲームをはじめる前に必要で、馬場氏は「遊ぶまでに時間がかかる」 、「 手順がややこしい」ことを問題として考えたそうです。
この「helmets」での経験から次に作成したのが「Brain Bomber 」です。「 Brain Bomber」は、60秒間の間に指定されたお題に基づいて複数のプレイヤーと協力して面白いキーワードをつくっていく” 言葉遊び” ゲームです。司会者や進行者が不在でも勝手にゲームが進んでいくので、参加者も自分の好きなタイミングで参加したり、やめたりすることができるようになりました。
しかし、この「Brain Bomber」は、携帯電話との連動ではあるものの、実際に携帯電話と2つの画面を見ながら操作するのが大変であるという問題が残ったそうです。ゲームごとにルールがあると更に携帯電話の操作が複雑になるため、馬場氏は「携帯電話とPCの役割が直感的に理解できる」ような仕組みを考えたほうがよいという結論に至りました。
「Gyorol」
次に作成したコンテンツは、「 Gyorol (ぎょろる) 」です。「 Gyorol」とは、携帯電話を釣りのリールに見立てて、PCのWeb画面上の大きな池の中にある浮きを操作して魚を釣り上げて楽しむというコンテンツで、実際に釣り上げると自分の携帯電話の画面上に釣った魚が入ってきたり、その釣った魚を画面上にリリースしたりすることもできます。「 helmets」や「Brain Bomber」が「ユーザー間のインタラクション」をコンセプトに作成されたコンテンツなのに対し、「 Gyorol」はそれぞれのユーザーがただそこにいるだけで互いに影響しあわないコンテンツとして作成されました。
Gyorol
ゲームを楽しむまでの工程を簡素化し、ユーザー間のインタラクションをなくした「Gyorol」ですが、ユーザーからは非常に好評で、「 第12回文化庁メディア芸術祭 」で披露され、奨励賞を獲得しました。
複雑なものより、単純でシンプルなものにしていけば遊んでくれるユーザーは増えるので、結果、コンテンツとしての魅力・完成度が上がっていくのではないでしょうか。
その他のコンテンツ
他にも「Gyorol」をバナーやブログパーツとしての活用を探るために作成された、「 1-click Awards」出展用のコンテンツ「Gyorol for 1-click Awards 」や、株式会社バスキュールの新年の挨拶用に作成されたコンテンツ、「 初ぶる 」が紹介されました。
馬場氏からは、「 これらすべてのサイトはそれぞれ完成型ではあるが、大きな視点では、実験の過程だとも言える。この実験を気軽にできるのが、Webのいいところなのではないか。そして作り手の強みなのではないか。」というまとめがありました。
携帯電話といえばパーソナルな使い方のイメージがありますが、今までの単純な携帯電話サイトとは違い、コントローラのように携帯電話を使うというアプローチは斬新であることは間違いありません。また、馬場氏の極限まで簡単にすることで、ユーザーがとっつきやすく、多くの人が気軽に遊べるという環境を作り出すには端末固有の性能の問題など数々の調整を行う必要があったと思います。ほとんどの人が持っている携帯電話をサービスの一部として、使って面白い体験をしてもらおう(ついでに自分たちも楽しんで作ろう!?)という作成者の努力の影が感じとれたセッションでした。考え方次第ですが、PCと携帯電話と同期して連携をとることで「helmets」や「Gyorol」のようなゲームとはまた違ったアプローチの新しいサービスが生み出せるかもしれません。
今回ご紹介いただいたスライドやサイトのURLは、ロクナナワークショップ ニュース でもご紹介しています。是非ご覧ください。