先日、無事に本番環境へのリリースが終わった。システムベンダによると、きちんとデータが集まり始めているからそろそろ使えるデータになっているだろうとのことだったので、少し触ってみることにした。
平均ページビュー数
ページビュー数や訪問者数を把握できるだけでも、サイトの可視化においては社内では大きなインパクトがあった。訪問者数が考えていたよりもかなり多かったのだ。これだけでも部長にとっては大きい驚きだったようだ。
しかし、予想していたよりも訪問者数が多かったということは、逆に言えば考えていたよりも売上に結びついていないということでもある。どう見ればそのあたりをもう少し掘り下げられるかが分からなかったので、矢島へメールで相談をしてみた。
「まずは平均ページビュー数を確認すると良いんじゃないかな?」
矢島によると先日の本屋の話で出てきた「1人あたりにどのくらい本を目にしたか?」というところと同じ意味の指標になるとのことだ。この指標は1回のセッション(訪問)のページビュー数の平均を計算していることになる。この指標は下記の計算でできるとのこと。
平均ページビュー数 = 総ページビュー数 ÷ 総訪問回数
これで計算するとここ1ヵ月サイトの平均ページビュー数は1.5ページであった。これは、このサイトの訪問者の多くは1~2ページしか参照していないということだ。
つまり、このサイトは訪問者数は多いものの、ほとんどサイトを見ずに帰ってしまっているようである。ずいぶんと前進である。矢島に結果の報告と次のステップについてメールで聞いてみた。
「なるほど、流入は確保できるてるみたいだね。次に見るべき指標はちょっと難しいかもしれないから直接話すよ。ビールも飲みたいし」
ある意味ここまでストイックにビールを追求できる矢島に乾杯である。
すぐに帰ってしまう「直帰」
今日は矢島の方が先に飲み屋に着いていた。すでにビールは途中まで進んでいるようだ。自分もとりあえずビールを頼んで席に着いた。
「少しはツールを使いこなせてきたみたいだな」
ちょっと得意げな顔をとってみたものの、すぐに矢島に鼻を折られてしまった。
「でも、ページビューだけでサイトがわかってもらっちゃ困る。これを改善に役立ててこそ、初めて活用できていると言えるんだ」
そして、矢島は直帰率という指標について教えてくれた。
「おまえもインターネットで何かを探すときはサーチエンジン使うよな。すぐに目的の内容って見つかるか?」
1回で見つかることはほとんどない。それこそ、昨日の夜の探し物では、検索結果をクリックしても行った先の内容は期待はずれのものばかりで、検索結果とサイトを行き来を繰り返していた。
「そうだろ。でも、Web解析ツール上ではその検索結果からクリックして、サイトを訪問してすぐに検索結果に戻っても1回の訪問になるんだ。これが直帰だ」
なるほど、確かにサイトに訪問はしているからツール上は1回と計測されてしまうのか。ページビュー数も1回としてカウントされてしまうのかだろうか。
「そうだ、だから直帰してしまう人が多いサイトの平均ページビュー数は少なくなってしまう可能性があるんだ。最近は検索エンジンからさまざまなキーワードでサイトの訪問するだろ。サイトのTOPページがすべてじゃないんだ。むしろ、そういった横からの訪問が大事なんだ。」
矢島は素早く次のビールを頼んだ。そして続ける。
「サイトの入口になった回数のうち、直帰してしまった割合を表したのが直帰率だ。これをページごとに計算して高いページから対応していくと良いと思うよ。改善すべきページを特定したら、さらに分析をしていくんだ」
あのさまざまな指標はこうやって組み合わせてみていくのか、と感心していたら、矢島がちょっと横道にそれるけどと話した。
「まずは大きく見れる数字を参照して、そこから問題点を掘り下げるんだ。最近のツールは取得できる指標が多いからな。いきなり全部見ようとすると挫折してしまうんだ」
なるほど、適切なタイミングで指標を見ないと意味がないんだな。勉強になる。
改善はまだ先の話
翌日、ページごとの直帰率を計算してみた。すると100%のものもある。つまり、これはこのページに訪問した人がすべて帰ってしまっているということだ。しかし、本当にこんなことはあり得るのだろうか。少し不安になったので矢島にメールで聞いてみた。
矢島によると「大きくは3つ理由が考えられる」ということだ。
1:そのページにリンクがない。
2:そのページの訪問者数が少ない。
3:そのページの次のページにタグがきちんと設定がされていない。
1つ目の理由はまさに、訪問したページにリンクがないから次に進めないという理由である。そりゃそうである。リンクがなければ2ページ目はない。これはページを確認したらわかるだろう。
2つ目の理由は、1人が訪問して1人が帰ってしまってもそれは直帰率は100%になってしまうということらしい。確かに直帰率が100%のページの訪問者数を調べてみると非常に少ないものがほとんどだった。矢島によると、こういった流入の少ないページよりも、力を入れて改善すべきページはあるだろうとのことだ。
3つ目は、タグ型の集計の場合に起きるそうなのだが、訪問したページの次のページにうまくタグが設定されておらず、計測がきちんとされていなかった場合、2ページ目に進んだ人も直帰としてツール上は計測されてしまうのだそうだ。
最初の2つの理由にあてはまらなかった直帰率が100%のページをベンダの方に調べてもらった。矢島の指摘の通り、確かにうまくタグが設定されていなかったとのことだ。これらはすぐに直してもらった。
矢島のメールには追伸が書かれていた。
「直帰率の悪いページを効率よく洗い出すのは大変だからな。普段オレが使ってる計算式を教えておくよ。」
どうも独自で洗い出しをするための一定の目安として、下記の式で計算を行っているとのことだ。
直帰率改善指標 = (ページ直帰率 - サイト全体直帰率)× ページ入口数
これをページごとに計算すると、改善するとサイトに影響度が高くなりそうなものが上位に出てくるそうだ。目安としては使えそうだ。
これで確認をしてみると、上位に力を入れているプロモーションページがあがってきていた。これなら広告代理店にバナー広告もお願いしていたし、資料があったはず、と広告入稿を管理をしている柏木さんにデータをもらった。
そこにはバナーの表示回数とクリック数が書かれている。ツールの設定で、バナーにパラメータを付けておくと、バナーからの流入数がわかるということで、それとつき合わせてみると数字が違う……。
1%くらいずれているのだ。壁にぶつかってしまった。なんだよどっちが正しいんだよ。そう思いながら、矢島へ電話をするため携帯を手に取った。
つづく