脳波で何かできるんじゃない?
今年のニコニコ超会議で話題になった脳波で動くnecomimi(写真1)や見つめるだけで気持ちがバレてしまう脳波ゲームBrainKissなど、ここ最近脳波データを利用したデバイスやアプリケーションが多数出まわるようになりました。
リクルートテクノロジーズでも、今年のNextBERLINというヨーロッパで開催されたカンファレンスに参加したメンバーによる「次のデバイスは、MindControlだ!」というレポートをきっかけに、脳波のデータを利用して何か新しいことができないか真剣に検討するようになりました。
脳波データ以外にも、アイコントロール(視線)なども研究テーマの候補として意見があったのですが、たまたま手元にあったnecomimiがどのような仕組みになっているか調査を行なっているうちに、ハードウェアが手軽に手に入りかつ開発環境も簡単に構築できる点から、「脳波で何かできるんじゃない?」という割りと軽いノリで、脳波データを利用してアプリケーションを作成してみようという研究テーマが動いています。
脳波データとは?
脳波データを利用することで、ガンダムのニュータイプみたいに脳波でコミュニケーションがとれたり相手の行動が予測できたり、ましてやファンネルのようにミサイルを自在にコントロールできたりするところまでは残念ながら実現できていません。ここでいう脳波データとは、脳から生じる微弱な電流を私たちが理解できる数値に置き換えたデータになります。
一般的に、脳から生じる微弱な電流のデータを受け取るには非常に高価な機材が必要です。ところが、MyndPlay社から販売されているBrainBand(写真2)やアーキテクト社から販売されているBrainKissなどのヘッドセットと、NeuroSky社から提供されるSDKを利用することで、研究機関などでメインに利用されていた脳波データが、簡単に利用できるようになり、様々なアプリケーションを作成することが可能になります。
これらを利用することで、以下のようなデータを取得することができます。
- 接続状態:ヘッドセットの接続状態がわかります。
- 集中:集中度がわかります。
- リラックス:リラックス度がわかります。
- δ(デルタ)波:脳波の中で一番微弱な周波数です。深い睡眠状態にあるときなどに、こちらの数値が優位に出るようです。
- α(アルファ)波:リラックスをしたり、集中しているときに優位に出てくることが多くなる周波数になります。こちらの数値が優位に出ると、リラックスをしていて、ストレスを減少させる効果があるそうです。
- θ(シータ)波:α(アルファ)波よりも眠りに近い状態。うたた寝しているときや、瞑想のときに優位に出てくことが多くなる周波数です。こちらの数値が優位なタイミングは、学習などに適しているそうです。
- β(ベータ)波:日常生活(起きて何かをしている状態)のときは、こちらの数値が優位な状態となります。
- γ(ガンマ)波:イライラしていたり、興奮しているときには、こちらの数値が優位になります。
- Blink(まばたき):まばたきされたかどうかがわかります(注)。
サンプルアプリケーションで実際のデータを覗いてみよう
NeuroSky社から提供されているSDKとサンプルのアプリケーションをダウンロードして、実際に脳波データがどのように取得できるか確認してみましょう。BrainWave Visualizer(図1、2)というアプリケーションを利用することで、脳波データをちょっとオシャレなグラフで表示することができます。
またNeurosky社のサイトには、ゲームを含め様々なアプリケーションがありますので、実際に試してみてください(図3)。
BrainWave Visualizerのアプリケーションを利用すると、脳波がどのような状態になっているかがグラフィカルな数値でわかります。取得したデータを応用することで、様々なアプリケーションを作成することが可能になります。現(2012年10月)時点では、NeuroSky社から以下のプラットフォームのSDKが提供されています。
- Windows
- Mac OS
- Arduino
- Linux
- iOS
- Android
なお、iOS、Android以外のDeveloperToolsは、Versionが2.1系のためか、Blink(瞬き)のデータが取得できません。
リクルートテクノロジーズでは、MindControlの取り組みに関して、Web UIのデザイン、サイト内アクションなどの様々な用途で利用することを検討しています(写真3)。例えば語学の勉強ひとつをとっても、「成績優秀な人は授業を聞いているときやテキストを読んでいるとき、どのあたりで集中モードに入っているか」がわかることで、より「刺さる」コンテンツを考えるヒントになるかも? なんて色々なシーンでの活用が考えられそうです。
次回は、脳波データを利用したAndroidアプリを実際に開発していきたいと思います。