4月24日と25日の2日間、東京都内において「Windows Developer Days」が開催されました。アプリケーション開発者を対象とした本イベントでは、Windows 8に採用される「Metroスタイル」プラットフォームの詳細を紹介するとともに、アプリケーション開発における実践的な80以上のセッションが行われました。今回は基調講演の内容について紹介します。
強固な基盤の上に構築された「妥協のないOS」
4月24日と25日の2日間、東京都内において「Windows Developer Days」が開催されました。アプリケーション開発者を対象とした本イベントでは、Windows 8に採用される「Metroスタイル」プラットフォームの詳細を紹介するとともに、アプリケーション開発における実践的な80以上のセッションが行われました。
また、両日ともに基調講演も行われ、新たな発表もありました。両日それぞれ2,000名以上が来場したといいます。今回は基調講演の内容についてレポートします。
24日には、マイクロソフトのWindowsおよびWindows Live担当プレジデントであるスティーブン・シノフスキー氏による「Windows 8 プラットフォームの可能性」が行われました。シノフスキー氏は、Windows 8を「Windowsの再創造(Reimagined)」と表現し、高速でなめらかな動作とデバイスを選ばない点、Windows 7をベースにしながら、より快適な環境を実現したと述べました。
さらにWindows 8の特徴として、アプリ、クラウド統合、Windowsストア、Internet Explorer 10、場所を選ばないこと、さまざまなデバイスで快適な動作、強固な基盤の上に構築された「妥協のないOS」であることを挙げました。
アプリ開発においては、Windows 8プラットフォームには「WinRT APIs」をシステムレベルのサービスとして配置されており、さまざまな機能を容易に呼び出せることはもちろん、x86およびARMでも実行でき、CやC+、C#、VB、JavaScriptなど自分の好きなツールや言語で開発できることを強調しました。これによって、他のデバイス用に開発したアプリの移植も容易になっているといいます。また、OSそのものの堅牢性に加え、アプリコンテナを分離することでセキュリティ機能を組み込めることも重要なポイントとしました。
さらにアプリの展開に有効な「Windowsストア」も紹介。アップルの「App Store」やGoogleの「Google Play」のように、開発者がアプリを提供するプロセスがオープン化されており、柔軟なビジネスモデルに対応することやきめ細かい分析機能によって開発収益の最大化を可能にするのです。
最後にシノフスキー氏は、Windowsの潜在市場について紹介しました。日本でも世界規模でも、Windows OS搭載機(Windows Phoneを除く)はWindows以外の合計よりも多いことを挙げ、Windows向けアプリ開発の有効性を強調。今から準備を進めておくことで大きなチャンスになるとしました。
そして「日本に来ることは大好き。ビッグニュースの発表も好き」と述べ、6月の第一週にWindows 8のRelease Previewがリリースされることを発表しました。
新機能を満載しながら互換性も維持
基調講演では、日本マイクロソフトのディレクターである藤本恭史氏も登場し、さまざまなデモを行いました。藤本氏は「Windows 8によってデバイスがより近しい存在になる」として、地下鉄の窓をイメージしたというMetroの機能について紹介しました。ここでは画面の特定の3箇所に点や線、円を描くことでロックを解除できる機能や、スタート画面の「タイル」にバックグラウンドで得られたアプリの更新情報が表示されること、解像度に依存しないスタート画面、チャームやIE10といった基本的なアプリの紹介、Windows 8上でWindows 7のアプリケーションを動作できる「デスクトップモード」、ストアやゲームのデモなどを行いました。
特に注目を集めたのは、USBメモリにWindows 8にユーザー情報を記録することで、Windows 7がインストールされたPC上に自分のWindows 8環境を起動できる「Windows To Go」という機能でした。USBメモリを抜くとPCはロックされ、PC上に自分のデータが残ることもないのです。藤本氏は、「新しい発見がたくさんあるので、ぜひ触ってみて欲しい」とまとめました。
Metroスタイルのアプリへの移植は、短くて1週間
2日目の基調講演には、日本マイクロソフトの執行役、デベロッパー&プラットフォーム統括本部長である大場章弘氏が登壇、「Windows 8とクラウドでつくりだすスマートデバイス時代の新しいエコシステム」を行いました。
大場氏は、「開発者やデベロッパーの方が活躍できる場所を感じて欲しい」として、Metroによってもたらされるものを挙げました。それは、アプリ開発にこれまでのスキルを活かせることやタッチインタフェースによる「新しいアプリ体験」、Windowsストアで世界中に一瞬でアプリを届けられることや5億以上のWindowsユーザーへの圧倒的なビジネス機会といった「ビジネスの可能性」、Twitter、Facebook、Windows Liveなどとのソーシャル連携やWindows Azureとの連携によるさらなる付加価値といった「クラウド連携」でした。
そして、「日本文化のアプリケーションをぜひとも移植して欲しい」とし、開発期間が長くても1~2カ月、短いと1週間でも可能であるという「開発者にとってやさしい」ことを強調しました。これにはプラットフォームの優れたアーキテクチャと使いやすい開発環境が大きく寄与しているといいます。特に「WinRT」は複数の開発言語に対応し、プレゼンテーション層とロジックが分離されていること、また「Visual Studio」はあらゆる開発ニーズに対応し、俊敏性の高いチーム開発を強力に支援することが大きなポイントであるとしました。
さらに大場氏は、多くの言語に対応していることで、Web開発者、.NET開発者、デザイナーのそれぞれが従来の開発環境でそのままWindows 8アプリケーションの開発が可能であるとして、「Visual Studio 11 Beta」の紹介に移りました。Visual StudioではMetroスタイルへの対応はもちろん、デスクトップ、Web、Windows Azure、.NET Framework 4.5、Direct X、モバイルと、あらゆる開発ニーズに対応します。
続々とデモや事例を紹介、その場でアプリ開発も
途中、日本マイクロソフトのテクニカルソリューションエヴァンジェリストである西脇資哲氏が登壇し、「VOCALOID」を紹介しました。楽曲作成から音声認識、音声合成、さらに3Dモーション作成、動画編集などをWindows 8上で行い、最終的に「ニコニコ動画」で動画を共有するというもので、実際に4月28日、28日に開催される「ニコニコ超会議」で公開されるといいます。実際にモデルも登場して、その場でデモが行われました。ゲームや電子書籍のデモも合わせて行われました。
さらに、日本マイクロソフトのデベロッパーエヴァンジェリストである高橋忍氏が登壇、Visual Studioのデモを行いました。実際にその場でRSSフィードを読み込んで表示するアプリを作成し、コーディングからコンパイル、実装、エラーチェックまでを行いました。特にMetroスタイルのアプリは負荷を軽減するためにバックグラウンドでデータを取得する「非同期」がポイントであるとしました。
また、コードの文字列は自動的に候補が表示され、入力が容易になることや、画面をタッチするシミュレーションが行えること、スナップショットからDirect Xのレイヤを表示し、ピクセル情報やオブジェクトのテクスチャ情報まで確認しデバッグできることなどを紹介し、さまざまな開発者に向けて開発生産性を上げるさまざまな機能が搭載されているとしました。続いて、Metroスタイルのアプリケーションとしてムビチケの代表取締役社長である高木文郎氏による「ムビチケ」のデモ、楽天の取締役、常務執行役員である安武弘晃氏による「楽天レシピ」「楽天市場」のデモが行われました。
大場氏はさらに、開発者支援施策「Go Metro」を紹介しました。これは開発者に向けてオンライン、オフライン、コミュニティの面から総合的に支援する新しいサービス。「Metroスタイルのアプリケーションの開発から公開するまでに必要なものはすべて揃っています。マイクロソフトは全力で支援しますので、新しい世界への簡単な一歩を踏み出し、日本から世界へ発信していきましょう」と講演を締めくくりました。