今回は、ECサイトおよびCMSと連携した場合のWindows Azure Web サイト活用事例を2つ紹介します。
ケーススタディ5:クレール本店
インタビュイー
クレール本店とは?
――クレール本店について教えてください。
クレール本店は、アパレル・シルバーアクセサリー・天然石小物の製造・小売・卸を行うECサイトです。すでに開設後、3年半ほど運用しています。
サイトは、EC-CUBEを利用して、当社でカスタマイズしました。開発に1名、店舗運用に2名という人員です。
Windows Azureを選んだポイント
――なぜWindows Azureを選んだのでしょうか。
以下の3点から、Windows Azure Webサイトを選びました。
WebMatrixとの連携
メンテナンスフリー
低価格
下2つはWindows Azure Webサイトの特徴でもあり、また、最初のWebMatrixとの連携については、今回EC-CUBEを利用することを決めていたこともあり、大きなポイントとなっています。
――Windows Azureを採用して、期待していることはありますか?
本サイトのインフラは、自社サーバ→VPS→Windows Azure Webサイトと変遷を辿ってきました。
自社サーバとVPSではFreeBSDで運用しており、可用性に不満はなかったのですが、コンテンツの更新がスムーズにできていませんでした。ちょっとした修正が必要な場合も、運用担当から開発担当に依頼をかけて更新しており、運用負荷が高まっていました。
Windows Azure Webサイトであれば、WebMatrixで動作確認→アップロードがとてもスムーズで、サイトの更新ミスも少なくなりました。また、広告出稿時など、一時的に高トラフィックになるとサイトがビジー状態となってしまうことが頻発していたのですが、Windows Azure Webサイトに移行してそういったこともなくなりました。店舗運用担当者でも、管理ポータルから簡単にスケールできるため、高トラフィックの際も開発担当者を拘束することがなくなりました。
こうした、担当者のスキルにかかわらず、柔軟な運用がしやすいという点は今後も期待しています。
一方で、いくつか気になる点があります。
まず、日本国内のリージョンが指定できないことです。EC-CUBEを移行した際、タイムゾーンのカスタマイズが必要でした。
また、SMTPサーバを自前で用意しなくてはならない点も気になりました。日本のECサイトという特性上、RFCに違反したメールアドレス(とくにガラケーからの利用に多く見られる)も扱わなければならないため、SMTPサーバを自前で運用しなければいけないからです。
その他、FTPアカウントがサブスクリプションごとに設定されてしまうので、Webサイトごとに複数のFTPアカウントを作成できると嬉しいです。
料金体系については、1インスタンス・共有であれば廉価なVPSと同程度で運用でき、不満はありません。ただ、占有にした場合の性能に対する価格的なメリットは少々少なく感じます。
――最後に、今後、取り組みたいことを教えてください。
現在、株式会社セカンドガレージ の提供する「Fast for EC」と受注データを自動連携しており、拡販に役立てています。高度なRFM分析などがブラウザのみで利用でき、Microsoft Excelとの直接連携も可能です。こちらもWindows Azureで動作しています。
こういった仕組みを含め、拡販に応じて、Windows Azure SQLデータベースへのリプレイス、Windows Azure CDNなどを活用していきたいと考えています。
――ありがとうございました。
ケーススタディ6:コスナビ
インタビュイー
コスナビとは?
――コスナビについて教えてください。
コスプレイベントを主催する団体です。主にドラマなどのロケ地を使用したコスプレ撮影会やコスプレ交流会イベントを、関東を中心に行っています。
本サイトは、2012年8月からたちあげており、約9ヵ月運用しています。コミックマーケット82(2012年8月10日)の2日前に立ち上げ、企画から1.5日でサイト公開をしました。
サイト制作・運用・更新は2名。すべて内製となっていて、ベースにMODX Evolution というCMSを使い、普段はMac OSから更新をしています。
Windows Azureを選んだポイント
――なぜWindows Azureを選んだのでしょうか。
まず、Windows Azure WebサイトにMODX Evolutionが標準対応していること、そして、サーバ管理に関する学習コストの少なさです。
従来は一般的なレンタルサーバで公開していましたが、パフォーマンスが悪化することがあり、サーバ移転を検討していました。使用しているMODX Evolutionが標準対応していることに加え、安価かつパフォーマンスが安定しているということを聞いて、Windows Azure Webサイトを選択しました。
移行作業はMODX Evolutionのアップデートと並行して行いましたが、WebMatrixというアプリを使いローカルPC上で移行作業を行った後、最後にリモートに発行(デプロイ)することでストレスなく移行できたことを覚えています。
また、Microsoft担当者のサポートに何度か助けられ、不明なところにも詳しく答えていただけたこともスムーズに移行できた要因の1つです。
――Windows Azureを採用して、期待していることはありますか?
本サイトには突発的なアクセスが発生することがあり、これまではCMSのキャッシュ機能を利用してなんとか対応していましたが、それでも集中時にはパフォーマンスが劣化することが見られました。
Windows Azure Webサイトでは負荷に対する対応が容易なため、サーバダウンによる機械損失が減ることを期待しています。
課題は、サイトからのメールの送信でしょうか。Windows Azure Webサイトではメール送信についての仕組みがないため、現在はMODX Evolutionに既存のGoogle Appsのサーバを設定して使用しています。
90日フリートライアルから利用しましたが、負荷に対する対応やテストサーバをすぐに作れることなどを考えるとコストパフォーマンスは非常に良いと思います。
移行後のデータを元に利用料を試算しましたが、従来のサーバのパフォーマンスや運用コストを考えると非常に安価と感じました。
また、テストサーバ構築を何度か行いましたが基本的にマウス操作だけでインスタンスの追加から既存サイトのクローンまで完了できるため運用コストの面でもメリットがあると感じています。
――最後に、今後、取り組みたいことを教えてください。
CMS側の対応になりますが、画像処理をサーバサイドで行う予定です。更新スタッフは画像処理やサイト構築に不慣れなところがあり、サーバサイドで補うことで、より閲覧しやすいサイトになると考えています。
すでにMODXコミュニティにはリクエストしているのでじきに実装されることを期待しています。
――ありがとうございました。
OSSとの相性も良く、柔軟なスケールに向いているWindows Azure Webサイト
今回は、EC-CUBE、MODX Evolutionという2つのOSSアプリケーションを採用した事例を紹介しました。Windows Azure Webサイトでは、WebMatrixなどを活用することでOSSとの相性が大変良くなっているのが特徴です。また、PaaSの側面を持っているため、突発的なトラッフィックへの対応が、利用者のスキルセット・スキルレベルにかかわらず対応しやすいこともメリットと言えるでしょう。
今回の例のように、Webサイトで扱うコンテンツが幅広い対象者に向けたものの場合、専属のWeb担当者の配置が難しいケースがあります。そうした場合にも、Windows Azure Webサイトの活用が向いていると言えるでしょう。