今回はどのようにその命題に立ち向かっていくのだろうか?
- 相談者プロフィール
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Aさん:
ある中堅企業のシステム担当者。会社の事業拡大と共に業務をITに依存する割合が増加。しかし、経営層は口ではITの重要性を語っても、その運用・管理のコストはほとんど認めず、むしろ人も予算も減らされる状況にある。そんな理不尽な運用体制を嘆く毎日だったが、友人からの「マネージドホスティング」の紹介で解決のヒントをつかみ、改善に向けた取り組みをはじめたところ。
システムダウン・ゼロという理想と現実
「システムダウンを限りなくゼロにする」。これが今回、管理者のAさんに課せられたミッションだ。
「まったく、上が言うことも無茶苦茶だ。何しろ、うちのような企業は、人もいないしコストもほとんど認めてもらえないから、24時間の常時監視なんてできない。そんな制約ばかりの環境で、システムに100%の信頼性を追求するなんて無理がある。とてもできる訳ないよ」とこぼすAさん。
システムダウンの“ゼロ”は、IT管理者なら誰でも願うことだが、実現となると話はまったく別。しかし、利用者はシステムダウンを最も嫌う。特に、経営層は業務や売上への影響、さらにコンプライアンス問題とも関係するだけに、最近は特に敏感になっている。実際、システムが社会や経済活動に果たす役割が拡大するのに伴って、システムの信頼性に対する期待値は上昇する一方だ。
先日のシステム停止のときも、「早く直せ!」「一体、どれだけ業務に影響すると思っているのだ!」とAさんを非難する声ばかり。システムは機械である以上、壊れるものと説明してもまったくと言って良いほど、聞く耳を持ってもらえなかった。
中小・中堅企業にとって自前でのシステム管理は非効率的
思い余ったAさんは、別の企業で同じくシステム管理者を担当しているBさんに早速、相談を持ちかけた。Bさんは、学生時代からの友人で、Aさんに「マネージドホスティング」のことを教えてくれた人物だ。
Bさん:「そんな無茶を言うなんて、ひどいなぁ。人と予算の大幅アップをお願いしてみたらどうだい。まぁ、到底、無理だろうけどさ(笑)」とBさん。
Aさん:「笑いごとじゃないよ。上は本気で、今の環境のままで何とでもできると思っているんだから。どうしたらいいと思う?」。
Bさん:「ノーダウンが理想なのは否定しないよ。でも、システムに100%を求めるなんて無理だし、そもそも、われわれのような中堅規模の企業が、急速に進歩するテクノロジーに追従して、自前で十分に行き届いた管理を行うのは、人的にもコスト的にも合理的ではないよ」。
Bさんは続けて、「インターネットを使うビジネスが本格化するのに伴って、24時間365日の安定稼働は必須になろうとしている。だから、サーバーの管理も片手間では済まされないし、経営層が言うようにシステムの障害によるサービス停止でビジネス機会が損失したり、企業の信用力が低下することは大きな問題だよ。でも、運用・管理が担う役割はとても重要なのに、実際には疎かになっている。この前も言ったけど、専門知識と技術力に長けたプロがサーバーの管理を代行する『マネージド・サーバー』が注目されているのもそこがポイントなんだ。その方が、安全でコストも、人も確実に少なくて済むからさ」。
「なるほど・・」と思わず納得するAさんであった。
安定稼働を低コスト・低負荷で実現する
マネージド・サーバー
説得力のあるBさんの説明に思わずうなるAさんは、マネージド・サーバーについてさらに尋ねた。
Aさん:「でも、ホスティングって言うと、自社でサーバーを立てる代わりにレンタルするというイメージがあって、信頼性はどうかと思ってしまうんだよね」。
Bさん:「確かに、ひと口にサーバーのホスティングといっても、レベルも内容もまちまちだからね。例えば、一台のサーバーを複数のユーザーで利用する共有型のサービスがあるけど、このサービスはできるだけ安くサーバーを借りたいという要望に応えたものだから、安さを売りにしている。言い方は悪いけど、安かろう悪かろうという点があることを認識した上で、割り切って利用する方がいいだろうね」。
Aさん:「なるほど」
Bさん:「一方で、ある程度の規模の企業に向けて、1台のサーバーを丸ごと利用できるようにしたのが専用レンタルサーバーさ。この専用レンタルサーバーは、回線やサーバー本体の設置、OSのインストールなどをホスティング業者が行い、設置後に管理者権限をユーザーに渡してサーバーの保守・管理・運用をユーザー自身が行うというもの。しかし、自由度が高い半面、サーバーの保守・管理には高度な知識が必要で、こうした人材は、中小企業はもちろん、中堅企業にもほとんどいないし、もし居たとしても内部の優秀な人材は本業に専念させたいという事情がある。そこで、こうしたギャップを埋めるサービスとして登場したのが、自社専用サーバーの運用・管理までを専門家に委託するフルマネージドと呼ばれる専用サーバーサービスさ。マネージドホスティングとはこのサービスのことで、うちも使っているよ」。
サービス内容を確認して自社に最も合うサービスを選択
Aさん:「具体的には、どんなことをしてくれるの?」。
Bさん:「基本的なサービス内容は、大きく監視と運用に分けることができる。例えば、24時間365日の運用監視をはじめ、障害が発生する前に適切な対処を実行したり、万一の障害時には迅速な復旧を行って、ダウンタイムを最小限に留めてくれる」。
Aさん:「業者によって対応が異なるなんてこともあるの?」。
Bさん:「広告などでのうたい文句には大きな差はないかもしれないけど、業者によってサーバーの設置環境をはじめ、技術力やノウハウが異なるのは事実さ。また、高可用性を実現するため、システムの冗長化やバックアップ・サービスを提供したり、安定性や信頼性を数値で保証するSLA(サービスレベルアグリーメント)をホスティング業者と利用者との間で取り決め、ホスティング業者はその内容に沿ってサービスを提供するといったケースもあるので、しっかりと内容を確認するといいよ。そのほかには、評価・性能レポーティング業務、企画・設計・導入コンサルティングといったサービスも提供しているところもある。ただ、何より大切なのは、コストも考慮して自社の状況に最も合ったサービスを選ぶことだよ」。
Bさんの説明を聞いて、マネージド・サーバーへの理解を深め、その魅力を知ったAさんなのであった。
少しずつ運用・管理に自信を深めているAさん。でも、安定した運用・管理の道はまだまだ遠い…次々と立ちはだかる難問を、「マネージドホスティング」の力を借りてどう解決していくか? 乞うご期待!(次回は12/15公開予定です)