マネージドサーバーのメリットを具体的な事例から探っていくシリーズの第５回目。今回の事例は情報ポータルサイトの運営会社。同社では、専用レンタルサーバーを利用して顧客向けサービスを自社運用していましたが、特定の時間にWebサイトの表示速度が大幅に遅くなるとのクレームが続くようになりました。原因はセキュリティ上のもので、サービスの信頼性を損ねかねない重大な問題でした。そのトラブルに対処し、安定運用を実現するため採用を決めたのがマネージドサーバーです。
Bさん：「ポータルサイト運営会社は自社でサイト運用を行っている企業が多いと聞くけど、セキュリティ対策となると相当な高度な知識とノウハウが必要だといわれている。もしも自社のサーバーが知らないうちに乗っ取られて、他社を攻撃していたなんてことになったら企業としての信頼性を問われかねない。セキュリティ対策にもマネージドサーバーはとても有効だというけど、早速その内容を見てみよう」。
Ｅ社の事例：
自社サーバーが知らないうちに踏み台にされた。その解決策を提案してくれたのは？
社員数20人程度の情報ポータルサイト運営会社のＥ社。同社で通常業務を行う傍ら、サーバーの管理も手掛けている管理者のAさんは、クライアントから寄せられる電話に四苦八苦していました。
「ある時から、特定の時間になると、Webサイトが見えなくなるほど表示速度が遅くなるという苦情が相次いだのです。コンテンツ自体はそれほど重たいものでもなく、しかも、使用サーバーはホスティング会社の専用レンタルサーバーであったため、一体何が原因なのか、私には全く分かりませんでした」とAさんは当時を振り返ります。
それでもAさんが通常業務の傍ら、いろいろと調べる中で浮上してきたのが、使用しているサーバーが攻撃や不正アクセスを行うための踏み台に使われているのではないかという疑いです。しかし、こうした疑念を抱いても、Aさんはどうすれば良いか分からず、対策が立てられませんでした。
「私の本業はWebデザイナーで、サーバー管理のスペシャリストではありません。社長から頼まれ、仕方なくサーバー管理を兼務していた程度ですから、サーバーの保守運用管理に関する知識もノウハウも圧倒的に不足していました」。
Aさんはサーバーのレンタル会社と連絡を取り、今回のトラブルについて相談したところ予想が最悪な形で的中し、サーバーが踏み台に利用されていることが判明したのです。
Aさんは早速、対策をお願いしましたが、レンタル会社からは、「御社の利用しているサービスにはサポート保守は含まれておりません」という回答でした。
「当社がお願いしたのは、レンタル会社が保守・運用管理をほとんど行わない代わりに、価格が安く抑えられた、運用、保守を自由に行える上級者向けのサービスだったのです。今更ながらですが、専用サーバーのレンタル契約を結ぶ際の社長の"経費節約が第一！とにかく一番安いやつにしろ！それ以外は絶対に認めない！"という言葉をまざまざと思い出しました」（Aさん）。
価格だけでサービスを選んだ付けが…
すぐに対策を立てようにも、いい知恵が浮かばず、すっかり途方に暮れていましたが、そこに窮状を見かねた知人が1冊の専門誌を手渡してくれました。その雑誌には専任のエンジニアがサーバーの保守運用管理を代行してくれるマネージドサーバーサービスの説明が記載されていました。
「うちの会社のトラブルを解決するにはこれしかない！｣、そう思ったAさんは専門誌を片手に社長のもとへと向かいました。そこで、社長にトラブルの原因を伝え、会社のサーバーが不正アクセスの踏み台にされていたことを話しました。
社長は、すぐに対策をＡさんに依頼しましたが、「この手のトラブルを解消するにはサーバー管理に関して高度な知識と技術を持つ人でないと対応できません。サーバーのレンタル会社も、価格を優先したサービスなので保守、運用管理の対応はできないと言っています。最善の策はマネージドサーバーサービスの導入です」と、Ａさんはマネージドサーバーサービス導入を即座に提案しました。
対策の遅れは企業自体の信頼を失墜
ホスティング会社の的確な対応に感心
渋る社長をAさんは半ば強引に説き伏せ、専門誌に記載されているホスティングサービス会社と連絡を取りました。
早速、ホスティング会社の導入コンサルタントが来社し、現状のサーバー保守運用管理状況について丁寧なヒヤリングを行ってくれました。そして、「サーバーの移設には時間がかかるので、まずは踏み台とされていたサーバーの処置が先決です」とアドバイスしてくれたことでしっかり対策が立てられ、その結果、表示速度が遅いというクレームは以降ピタリとなくなりました。
「サーバー管理の不備やトラブルは企業の信用に直結する重要な課題です。もし、このまま何も対策が行えなかったら、企業自体の信頼や評価を大きく損なっていたと思います。本当に助かりました」とAさん。
クライアントの現状を素早く把握し、臨機応変に現状のサーバーに対する対策を立て、効率のよいサーバー移設に関するアドバイスを行ってくれたこのホスティング会社に、社長が即決でマネージドサーバーへの移設を依頼したのは言うまでもありません。
続けて、Aさんは次のように語ります。
「当社の専用サーバー契約形態は、無駄な経費はできるだけ抑えたい、とにかく安い費用で済ませたい。という社長の要望に基づき、必要最低限のサービスを選んでしまいました。そのようなサービス内容でサーバーの保守運用管理を行う場合、社内に高度なサーバー管理技術や知識を持つ人材が不可欠だとつくづく認識しました」。
Bさん：「コストの削減は重要だけど、必要以上に経費を削減してしまった場合、それが思わぬ障害やトラブルの原因になりかねない。そこでレンタルサーバーを選択する上では、自社の状況をしっかりと分かってくれて、的確な導入のコンサルティングや提案を行ってくれるホスティング会社を選ぶことが何より大切なことなんだ」。
今回は、費用だけでレンタルサーバーを選んだことでセキュリティ対策を自社で対応しなければならなくなった企業のピンチ。それをマネージドサーバーが救った事例だった。今後はネットワークを介したセキュリティのリスクが高くなるのは確実。それだけに、専門の管理者がいない企業にとって、マネージドサーバーは頼みの綱だと改めて悟ったＢさん。さて次回は、どんな課題をマネージドサーバーが解決するのか。乞うご期待！
（次回は3月2日に公開予定です）
