はじめに
(1)
私の会社これまでこの連載の中では、
「複製権」
そして、
しかし、
「引用」
そして、
著作物の創作行為は、
という説明がよくされますが、
- ※
- ちょっと前に話題となった
「ひこにゃん」 をめぐる騒動などは、 まさに著作権を譲り受けた後の “改変”、 という 「著作者人格権」 の問題が最大の争点となっていた事例だということができます。
「著作者人格権」の内容と条文上の制限
(2)
私の会社
画像は専門の業者から購入した写真をデジタル加工して作成することにしたのですが、
ところが、
業者との間では、
上記のような場合に、
先ほども触れたように、
- ※
- 他にも、
著作権法上 「著作者人格権」 と位置づけられるものとして、 名誉・ 声望を害する方法による著作物利用の禁止権 (113条6項)、 出版権設定後の修正・ 増減権 (82条)、 出版権消滅請求権 (84条3項) などがあります。
著作権法の条文をよく読むと、
例えば、
著作者は、
その著作物の原作品に、 又はその著作物の公衆への提供若しくは提示に際し、 その実名若しくは変名を著作者名として表示し、 又は著作者名を表示しないこととする権利を有する。その著作物を原著作物とする二次的著作物の公衆への提供又は提示に際しての原著作物の著作者名の表示についても、 同様とする。 2 著作物を利用する者は、
その著作者の別段の意思表示がない限り、 その著作物につきすでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示することができる。 3 著作者名の表示は、
著作物の利用の目的及び態様に照らし著作者が創作者であることを主張する利益を害するおそれがないと認められるときは、 公正な慣行に反しない限り、 省略することができる。 (以下略)
第19条
といったように、
著作者は、
その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、 その意に反してこれらの変更、 切除その他の改変を受けないものとする (第1項)。 2 前項の規定は、
次の各号のいずれかに該当する改変については、 適用しない。
- 1.第33条第1項
(同条第4項において準用する場合を含む。)、 第33条の2第1項又は第34条第1項の規定により著作物を利用する場合における用字又は用語の変更その他の改変で、 学校教育の目的上やむを得ないと認められるもの - 2.建築物の増築、
改築、 修繕又は模様替えによる改変 - 3.特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、
又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変 - 4.前3号に掲げるもののほか、
著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変
第20条
といったように、
もっとも、
「やむを得ない」
という解釈が採られています。
そうなると、
では、
実は、
- ※
- 「著作者人格権の強さ」
を知らしめてくれる一例として、 国語教科書副教材 (教科書準拠解説書や準拠テスト等) をめぐる一連の訴訟があります。副教材を作成する以上、 原文の一部を空欄にしたり、 問題の解答に必要がない部分を削除する等の改変は不可避だと思われますが、 裁判所は、 「このような改変は、 第20条2項1号にも4号にもあたらない (列挙事由と同程度の必要性がある場合とはいえない)」として、 同一性保持権侵害を否定しています (東京地裁平成18年3月31日判決)。元々著作物の利用そのものについて著作権者の許諾を得ていないケースであり、 しかも、 それ以前の判決に比べれば同一性保持権侵害が認められる範囲は狭くなっている (挿絵を挿入したり、 傍線等を付したりする行為については同一性保持権侵害を否定している)、 といった事情はありますが、 もう少し柔軟な解釈はできないものか、 と思わずにはいられません。
「著作者人格権」の不行使特約とその限界
冒頭でもご紹介したとおり、
しかし、
また、
そこで、
著作者人格権が、
そして、
「甲
(著作権を譲渡する著作者) は、 乙 (著作権を譲り受ける者) 及び乙から適法に本著作物の譲渡又は利用許諾を受けた第三者に対して、 著作者人格権を一切行使しない。」
という条項
もっとも、
- ※
- 「自由に利用できるキャラクターである」
という説明を信じて 「ひこにゃん」 グッズを作っていた多くの事業者は、 まさにこのようなリスクに直面することになりました。著作権ビジネスが発達し、 著作権の流通を仲介する事業者 (広告代理店など) も数多く生まれている今、 著作物の利用者は、 著作者と仲介事業者の間の契約内容どころか、 著作者が 「自身の著作物に対してどのようなこだわりを持っているのか」 といった点についてすらも、 仲介事業者を通じてでなければ把握できないのが実情です (著作権の利用許諾や譲渡を受けたユーザーが、 著作者と直接的な接点を持っている方がむしろ珍しい、 ということができるでしょう)。
このような状況においては、仲介事業者が負うべき責任が重くなるのはもちろんのこと、 利用する側にも、 なるべく安全に利用を継続できるよう注意を怠らないことが求められることになります。
また、
- ※
- 今年の春、
大手SNS事業者が発表した、 「ユーザーは、 という文言を含む新しい弊社に対して著作者人格権を行使しないものとします」 「利用規約」 が物議を醸しました。既にご説明したとおり、 このような特約は、 企業間の著作物取引においては良く使われているものですし、 一応の合理性も認められています。しかし、 このケースでは、 SNS利用者による批判の声が相次ぎ、 結局、 SNS事業者は、 上記の文言を利用規約に盛り込むことを断念することになりました。
事業者側が、①SNS利用者 (=著作者) にとって実質的な交渉の余地がない 「利用規約」 の中に特約を盛り込もうとしたことや、 ② 「著作者人格権の不行使」 というフレーズが必要以上に刺激的に受け止められてしまったこと、 そして、 ③新しい利用規約における利用許諾条件が 「無償」 とされていたことが、 特約の合理性に疑義を抱かせ、 騒動を招く原因になったのだと思われますが、 いずれにせよ、 不特定多数のユーザーが創作した著作物を利用してビジネスを行おうとする事業者にとっては、 教訓とすべき事例だということができると思います。
「著作者人格権」のこれからの行方
近年、
その背景には、
この款の規定
(注:第30条以下の著作権の制限規定) は、 著作者人格権に影響を及ぼすものと解釈してはならない。
第50条
この規定がある限り、
このような帰結により不都合が生じることを防ぐために、
「インターネットを活用したコンテンツの流通促進」
「新しい著作物を創作する」
しかし、
- ※
- そもそも、
現実に 「著作者人格権」 侵害が問題になったケースの中には、 著作 (財産) 権の譲渡 (利用許諾) 時に著作者が当初意図した条件で契約できなかったため、 同じ目的を達成するために、 あえて 「著作者人格権」 を持ち出したのではないか、 と推察されるものさえあります (いわば、 権利処分後の “蒸し返し的権利行使” ともいうべきものです)。 「如何なる権利も濫用してはならない」 という社会の基本的なルールを、 私たちは今一度見つめなおす必要があるように思います。
今後、
今、