どんなに面白く、インパクトのあるものでも、感覚的に作られたコンテンツが大きな利益につながることはありません。視聴者・読者を購買へと導くためには、相手の徹底的な理解が不可欠です。しかし、速いペースで消費されるWeb・デジタルコンテンツに、多くの調査やプランニングのリソースをかけることはできません。コンテンツの費用対効果を高めるためには、製作者自身がインサイトに基いたコンテンツのプランニングを行うためのフレームワークが必要です。
Always enter the conversation already occurring in the customer's mind.
Robert Collier
1930年代に活躍した作家・コピーライターのロバート・コリアーは、人を説得するコピーライティングの原理として、「既に顧客の心の中にある会話から始めよ」という言葉を残しています。日常生活の中で、ターゲットが抱えている不満を理解できれば、商品やサービスに興味を抱いてもらうために最適な伝え方を知ることができます。
ライフスタイル・インサイト
商品の購買動機には、その機能や特性に直接関係のないものが存在します。「情緒的ベネフィット」などと呼ばれるこの一見不合理な購買動機は、消費者が日常的に抱えている不満の解消を感じた時に発生します。この購買行動を左右する、日常生活の不満要素に対する理解を「ライフスタイル・インサイト」と呼びます。ターゲットに対する理解を十分に持った状態で次の質問に答え、ライフスタイル・インサイトを導き出します。
- Discontent:ターゲットが日常的に抱えている不満は何か?
- Anxiety:ターゲットが常に不安を感じていることは何か?
- Agitation:ターゲットが焦り・動揺を感じていることは何か?
- Anger / Irritation:ターゲットが怒りや苛立ちを感じているものは何か?
- Fear:ターゲットが恐れているものは何か?
- Despair:ターゲットが叶わないと思っている望みは何か?
フィーチャーとベネフィット
商品の特性(フィーチャー)を伝えるだけでは、該当するニーズを持った人物にしかアピールできません。商品に対する興味をより多くの人に抱いてもらうためには、それらの特性を便益(ベネフィット)に変換するする必要があります。まずは、ターゲットから見た、商品の主なフィーチャーをリストアップします。次に、先ほどのライフスタイル・インサイトを基に、フィーチャーをひとつずつ、ターゲットにとって価値のあるベネフィットに変換していきます。
- Features:ターゲットから見た、商品やサービスの主な機能や特性は何か?
- Benefits:ライフスタイル・インサイトを基に、それぞれのフィーチャーに対し、ターゲットが価値を感じるベネフィットは何か?
イシュー、コンセクエンス、ソリューション
人は主に、新たな便益を得るためではなく、目の前の問題を解決するために行動を起こします。購買行動を喚起するためには、ターゲットが解決したいと思う問題(イシュー)、許容できない結果(コンセクエンス)、商品が解決法(ソリューション)となる根拠を定義します。
- Issue:ターゲットが解決したいと思う問題は何か?
- Consequence:解決しないことで、ターゲットが許容できない結果は何か?
- Solution:商品が問題の解決法となる根拠は何か?
バリア
商品の購入には様々な障壁(バリア)が存在します。すべての障壁を段階ごとに払拭することができなければ、消費者が購入に至ることはありません。商品特性の理解からその優位性の確信まで、バリアの払拭に必要な情報を洗い出します。
- Understanding:商品特性を理解するために必要な情報は何か?
- Relevance:商品が自分に適していると感じるために必要な情報は何か?
- Credibility:商品品質を信頼するために必要な情報は何か?
- Superiority:競合商品に対する優位性を確信するために必要な情報は何か?
コールトゥアクション
すべてのマーケティング施策は、相手の行動変化を目的としています。商品の特性や便益を伝え、ひとつずつ障壁を取り除いたとしても、自主的な購買行動の喚起(コールトゥアクション)には更なる刺激が必要です。特に、消費者が何のためらいもなく離脱することができるWeb・デジタルコンテンツには、できるだけ多くの行動喚起につながる情報を含める必要があります。
- Minimum:求められる行動にかかる、最小の(時間や労力を含む)コストは何か? コストを最も少なく表現する方法は何か?
- Value:行動によって得られる、コストを大きく上回る価値とは何か?
- Urgency / Scarcity:直ちに行動を起こすことが、なぜ重要なのか? どのような希少価値があるのか?
- Loss:行動を起こさなければ、どのような損失につながるのか?
- Action:相手はいつ、どこで、どのように行動を起こせば良いのか?
多くのWeb・デジタルコンテンツは、製作者の感覚に基づいて作られ、商品の特性や強みを一方的に伝えるだけにとどまっています。しかし、効果的なコンテンツを作るためには、受け手側の視点に立ち、必要となる情報を客観的に整理しなければいけません。視聴者・読者を徹底的に理解し、相手の優先事項に働きかけることで、行動を喚起し、目的の達成が可能になります。コンテンツのプランニングを行う際は一度、上記20の質問に答え、相手の説得に必要となる情報を洗い出してみてください。