はじめに
EC構築オープンソースとしては国内で最大のシェアを持つEC-CUBEが、いよいよ本日、大幅にバージョンアップした2.11.0を正式最新版として公開しました。本連載では、まず今回でEC-CUBEの現状を整理し、その後3回にわたって最新版「EC-CUBE 2.11.0」を徹底レビューしていきます。
EC-CUBEの概要
EC-CUBEは2006年にVer.1をリリースしてから5年目を迎えるEC構築オープンソースです。累計42万ダウンロード、推定利用店舗数は13000店舗と、各種調査でもEC構築オープンソースとして国内で圧倒的なシェアを持っています。
開発は、広告効果測定ツールでも圧倒的なシェアを持つ「アドエビス」の開発元としても知られる株式会社ロックオンが中心となって行っています。
EC-CUBEの特長
EC-CUBEの大きな特長としては、次の4つがあげられるでしょう。
① 純国産であること
国産のため、海外発の同種のソフトウェアと比較してローカライズの必要がありません。日本人が直感的に操作できる、馴染みやすいUIは最大の強みでしょう。また日本語の情報も多く存在します。公式コミュニティサイトは累計3万5000件の書き込みがあり、オープンソースの掲示板としては非常に巨大な規模を持つため、困った際に情報を得られる確率も高くなります。
② 構築ベンダが全国に数多く存在している
EC-CUBEを利用してECサイト構築を手がけるベンダが、全国各地に数多く存在しています。公式のインテグレートパートナーとよばれるパートナー制度への登録だけで約100社存在し、非公式を含めるとその数倍のベンダがEC-CUBEの開発を手がけていると推測されます。多数のベンダが存在することで見積も比較しやすくなり、パッケージ製品やあまり使われていない同種のオープンソースのようにベンダロックインを心配せずにすみます。
③ 多数のEC関連事業者がEC-CUBEに対応している
国内の主要なホスティング会社と既に提携しており、そうしたホスティング会社を使えばオープンソースにありがちなインストール時での躓きを心配する必要はありません。また決済代行会社だけでも14社との提携モジュールが無料で提供されているため、つなぎ込みの手間が最小限ですみます。ホスティング・決済ともに公式サービスも存在しており、機能面での充実がはかられています。レコメンドや受注管理などもEC-CUBE対応のものが多数存在しています。
④ 定期的かつ安定的なリリース体制
EC-CUBEは、株式会社ロックオンという企業が開発のイニシアチブをとって定期的にバージョンアップされています。オープンソースコミュニティでは、主要メンバー間で意見が対立して開発やローカライズがストップすることもあるのですが、1社がしっかり主導権や権利を持っているため、そうした懸念をせずにすみます。もちろん裏返せば、開発元が開発を中断した場合は、急速にストップすることになりますが、現在のところはその心配はなさそうです。
EC-CUBEのこれまでの問題点
このように書くと良いことづくめのようですが、一方で、大量の商品を登録した際の速度劣化や、散乱し重複も多いソースコードによる保守性の悪さは、以前よりユーザーを中心に指摘されていました。
次回からは、2.11.0で新しく追加された機能のレビューだけでなく、ベンチマークや内部のソースコードにまで踏み込んでレビューしていきます。