ECにおける検索とレコメンドの境界
今回は検索とレコメンドの融合について解説してみます。
元々ゼロスタートでは、7年前にレコメンドエンジンの開発、提供を開始しました。検索エンジンは4年前と、ゼロスタートの実績としては、レコメンドエンジンのほうが歴史が長いのです(もちろん世の中の歴史でいうと検索が先、レコメンドが後です)。
一般的には検索エンジンとレコメンドエンジンは別のものとして捉えられますが、この2つを併せて提供するようになって日に日に強く感じることは、「ECサイトにおいては検索とレコメンドの境界はかなり曖昧である」ということです。今後この2つの融合はどんどん加速すると、筆者は予測しています。
世の中的にはレコメンドのほうがキャッチーなため、ゼロスタートへのお問い合わせも最初は「レコメンドエンジンを探している」というケースが多いのですが、実際に検討を進めたところ先に導入していただくのは検索エンジン、後にレコメンドエンジンという流れになるパターンがほとんどです。裏を返せば、ECサイトにおける検索の重要性がまだまだ認知されていないことも一因だと思います。
レコメンドの目的は「ユーザに気づきを与える」こと
そもそもレコメンドを導入する目的は「ユーザに気づきを与える」ということだと思います。これはつまり、ユーザが知らないもしくは知っていても失念している商品を提案して、購入に至ることを期待しているということになります。
結局のところ、「顕在的需要」への提案が検索、「潜在的需要」への提案がレコメンド、ということになります。そしてこの連載でも繰り返し述べているように、「明示的に欲しいもの」がない場合には「有効な代替案」の提案というのは非常に重要です。
この「有効な代替案」というのがレコメンドのことになるわけです。
ここで「レコメンド」という言葉について改めて考えてみます。ゼロスタートへのお問い合わせや商談で良く感じるのは、レコメンドを狭義の意味で捉えているということです。どういうことかというと、(一般的には相関係数などを活用して行われる)機械学習を用いて行われるレコメンドのことを指します。もう少し具体的に説明すると、「行動履歴を活用したレコメンド」と言っても良いかもしれません。わかりやすい例が「これを買っている人はこれも買っています」というものです。
振り返ってみると、ECサイトにおけるレコメンドという手法が脚光を浴びたきっかけが、主にAmazonによるこのアプローチだったために、そういう捉え方が多いのかもしれません。これはこれで非常に有効なアプローチで、実際ゼロスタートのレコメンドエンジン(ZERO-ZONE Recommend)でも最もよく使われている手法でもあります。
広義の意味でのレコメンド
ただ、レコメンドというのは本来もっと広いアプローチです。「今日の売れ筋」や「特売品」というのもレコメンドです。レコメンドと言わず「オススメ」というともっとピンと来るかもしれません。
前述した「潜在的需要」への提案という意味では、行動履歴を活用したものだけでなく、いわゆるお店のオススメというのも有効な手法なのです。ようはユーザが見つけて喜んで購入してくれるものを提案するのが広義のレコメンドです。機械学習によるレコメンドは、「広義のレコメンド = オススメ」の一手法に過ぎないということです。
そして「オススメ」というのはまさに、コンシェルジュ的機能の代表例でもあります。今後のECサイトにおける検索がコンシェルジュ的進化を遂げるとすると、レコメンド(オススメ)はそこに取り込まれていくのは自然な流れです。
ゼロスタートでは冒頭述べたように先にレコメンドエンジンの提供をしていたために、その流れとして後から提供をはじめた検索エンジンの設計思想がコンシェルジュ的になったのは必然的だったのかもしれません。
レコメンドをふまえた、コンシェルジュ的検索の分類
ここで一旦整理してみましょう。
顕在潜在問わず、ユーザの需要に応える提案には下記のケースがあるということになります。
- a.ユーザの顕在需要に応える商品を提案する
- b.ユーザの顕在需要に応える商品がないため代替商品を提案する
- c.ユーザの潜在需要を満たす商品を提案する
これとは別に
というケースもあります。
まずECサイトが行うべきは上記のzの排除です。0件ヒットしかり、的外れな検索結果(「おもち」という検索で「おもちゃ」を表示するなど)しかりです。
zが排除できた状態で、aだけ達成しているのが旧来の検索です。もちろんzが排除できてない検索の実装例もたくさんあります。
cはまさにレコメンド(オススメ)そのものです。cの一部として、狭義の(世間で認識されている)レコメンド、いわゆる行動履歴に基づく機械学習によるレコメンドがあるということになります。
まとめ
つまりまとめてみると、「ECサイトの検索はその進化の過程においてレコメンドを取り込んでいく」ということです。ユーザと対話するのが今後の検索のトレンドだとすると、当然すぎる流れではあります。
今現在は、検索結果とは別にレコメンド結果が出ているケースがほとんどですが、そのうち検索結果にレコメンドの結果が取り込まれていくケースが増えると、筆者は考えています。
今回は検索とレコメンドの融合について考えてみました。次回は検索とレコメンドのロジックとビッグデータについて触れてみる予定です。