この連載も今回で最終回です。
これまでこの連載では、ECサイトにおける検索の重要性について解説してきました。今回は総括としてこれまでの内容についてまとめます。
ECを取り巻く環境
まずECを取り巻く環境についてです。
連載第1回でも触れたように、スマートフォンの普及によるECの裾野の拡大というのは大きな変化です。ECは一部の先進的なユーザが使うものから、多様なユーザが使用する日常のインフラの一部に変わりつつあります。
またユーザ層が拡大するということことにより、「検索を使いこなしてくれない」ユーザが増えるというトレンドになっていくことが予想されます。このため、検索は、ユーザの道具だけではなく、サイトからユーザにアプローチするための接客機能、コンシエルジュのような役割が求められるようになっていくことでしょう。
検索はユーザとの対話インターフェース
このようなECを取り巻く環境の変化に加えて、ECにおける検索の本質的な性質として、ユーザがECサイトにおいて「問い合わせ=質問」をするほぼ唯一のインターフェースという側面があります。
ユーザが検索条件を入力するというのは、とりもなおさずユーザがショップのアンケートに回答しているようなものなのです。そしてまた、ユーザが検索をしている瞬間というのは、購買意欲が高まっているタイミングという点も見逃せません。
こうした検索がそもそも持っている特性と、ECを取り巻く環境の変化を併せて考えたとき、今まさにECにおける検索機能は最も着目すべき点になってきていると言えるのです。
そのためこれからは、従来のような検索をツールとして考えるアプローチではなく、ユーザとの対話インターフェースという発想を持つことが重要です。
具体的には、0件ヒットの回避、サジェストの活用、検索とレコメンドの融合、ビッグデータの分析、パーソナライズ化などさまざまなポイントがあります。それぞれの詳しい内容については、過去の連載の各回で述べていますので参考にしてみてください。
これらに共通していえることは、リアルの店舗の優秀な店員のように、ユーザが商品を探すことを「補う」という視点です。「条件にマッチしている商品は0件です」というのはその反例の最たるものであると言えます。ましてやユーザが探している商品が実際には「ある」にも関わらず「ない」という結果を表示することは、「ECサイトにおいてもっともやってはいけないこと」の1つです。
ところが実際にはこういったケースはまだまだ散見されます。これは、検索はユーザが入力した条件に忠実に従っていればいいと考えているためでしょう。
大事なのは、入力の取得と商品ごとの知識の蓄積
これからの検索に要求されることを実現するために必要なものは大きく2つあります。
1つはユーザからの入力の取得、もう1つは商品ごとの知識です。結局のところユーザと商品のマッチングに必要なのは、ユーザと商品のプロファイリングにほかなりません。
連載を通して解説してきたように、検索条件はそもそもユーザのプロファイリングのための情報ですが、それにくわえて前回解説したような無意識のユーザ情報の取得というのも重要な要素です。また、商品知識というものは、ECサイトを運営するのであれば持っていてしかるべきものでしょう。
とはいえ、商品そのものの知識と、どの商品をユーザに検索結果やレコメンドとして提案すればいいのかというのは、また少し違うものです。最適な商品の提案をしてくためには、さまざまな仮説を立てユーザに提案してその結果=フィードバックを検証していくという改善サイクルが必要です。
ECならではの強みを意識する
もちろんこれは、ECだけではなくリアル店舗においても重要なことでしょう。ただ、ECはリアル店舗に及ばない点も多いですが、その一方でECならではの強みというのもあります。
たとえばリアル店舗であればユーザの行動をすべてトラッキングすることは不可能ですが、ECであればかなりの範囲でユーザの行動を入力として捉えることができます。購買履歴はもちろん、閲覧履歴、検索履歴、滞在秒数、遷移などを把握することができます。
しかもその多くは、アカウントに紐づけることが可能です。つまり、ECはユーザからの入力を得やすいだけでなく、仮説の検証のサイクルも速くすることができるのです。
また、ECのメリットとして、検索エンジンに優秀なロジックを実装することで「ユーザへの対応を高品質で均一化できる」というものもあります。労働集約ではなく設備集約の強みが活かせる部分であると言えるでしょう。
もう1つ、ネットそのもののメリットとして「場所に関係なく対応できる」というのも大きな強みです。
そもそもネットは距離を無効化するというのが一番の特徴だと筆者は考えています。そして、(少なくとも現在の)スマートフォンに求められる3大主要機能は「コミュニケーション」「カメラ」「情報検索」であると思います。
リアル店舗であれば、欲しいと思っても店舗まで行かないと商品を見れない、買えないのが、欲しいと思うときに調べて買うことができる、これは大変大きな強みです。
それでも、前述したように、ECはリアル店舗にまだまだ及ばない点が多いですが、こうしたECならではの強みを活かして相互に補完していくというのは、今後の重要な流れになっていくことでしょう。今流行キーワードになっている「オムニチャネル」も、まさにその一例であると言えます。
おわりに
これまで10回に渡って、ECにおける検索の進化について解説してきました。これからもゼロスタートでは、よりよいECサイトの構築に役立つ各種のソリューションを提供していく予定です。
また、機会があれば、ECソリューションについて解説した記事を書いてみたいと思います。