音が聞こえない状況
音が聞こえない状況はいろいろあります。
聴覚障碍者といっても、障碍者手帳を交付されている方から、高齢化により難聴がすすんだ人までさまざまです。また、一説では、常に戦争をしている国などでは、兵士の約1割が聴覚障碍とも言われています。会社にあるPCでは,周りに気を遣うため音を出せない人が多く,昔はサウンド機能がないPCもありました。
意外に音を利用できない環境や人は大勢いるので、音に頼りっぱなしのUIなどはどのような結果を招くのか慎重にすべきです。
音をなくすには
音が利用できない状況を体験するのは非常に簡単です。スピーカーならボリュームを絞れば良いですし、PCサウンドのミュートをオンにしても良いでしょう。とにかく、PCからの音を聞けなくすれば良いだけです。
その状態で使って見ると、次のことがわかります。
- 音に頼るインタラクションやゲームは楽しめない
- アラート音は聞こえないので、画面上の変化が重要
- 映像の内容を正しく理解するには言葉による解説が重要
1つ目の問題は、インタラクションやゲームの方向性なので、変えようがありません。
こういう性質のコンテンツが、万人に楽しめないのは仕方ないことなので、変に気を回さないことも重要だと筆者は考えます。
2つ目の問題は、たとえば、モーダルダイアログなどで、そのダイアログを閉じないと他の操作が不可能な場合、ダイアログ以外のところをクリックすると「カン!カン!」と硬いアラート音がして、なんとなく操作できないのがわかりますが、音が聞こえなければ、ただ反応しなくなっただけで、フリーズしたのと勘違いしてしまいそうです。
「音は複数ある意志伝達手段の1つ」にすぎません。実際、アラート音だけでなく、様々な部分で、音だけ・画像だけの変化を付けたとしたら、それは間違いで、どちらによる表現もすることで、より多くの人が使いやすいコンテンツになります。
両方が使える人にとっては、耳だけでなく目からも情報が入ってくるため、非常にわかりやすくなるはずです。また、携帯電話などモバイル機器でバイブレーション機能を活用するものもありますが、これも良い伝達手段です。
3つ目は、字幕(キャプション)のことです。次でより詳しく解説します。
映像につける字幕
字幕には、音を使用しないで、情報を伝達する目的以外にも、映像の理解を深めたり、複数言語に対応することで、通訳代わりになるという効果があります。
そこで、映像にはなるべく字幕を設けたいですが、映像に画像として埋め込んでしまうのではなく、テキストデータを字幕として表示する仕組みを利用しましょう。これの利点の1つは、1つの映像に複数言語の字幕を付けられることです。
Flashで字幕を付けるには、FLVPlaybackCaptionningコンポーネントを使用する方法がもっとも簡単でオススメです。
実際に作成してみましょう。
画面キャプチャは、CS5で撮影していますが、CS3以上は同じような操作が可能です。
こちらから(potemkin_sample_cs4.zip:flaファイル(CS4)、flvファイル、TTMLファイル)ダウンロードできます。
Flashムービーは、ActionScript3で作成します。AS2では、ここに紹介するコンポーネントが機能しません。
FLVビデオを表示するためにFLVPlaybackコンポーネントを使用します。ステージにドラッグしたらコンポーネントのプロパティで再生するFLVファイル(potemkin_open.flv)を指定します。
※ CS4、CS3ではFLVPlaybackコンポーネントを使用します。
字幕を表示するために、FLVPlaybackCaptioningコンポーネントをステージに配置し、TTMLテキスト(potemkin_ttml.xml)を指定します。FLVPlaybackCaptioningコンポーネントが見当たらないときは、AS3.0かどうかを確認しましょう。AS3.0以外では、このコンポーネントは動作しません。
ムービープレビューすると、字幕がムービーの上に重なって再生されます。
字幕を表現するTimed Text Markup Language
先ほど、FLVPlaybackCaptioningコンポーネントで、指定したXMLファイルは、Timed Text Markup Language(以下TTML)とは呼び,FLVファイルに字幕を適用するために対応しているフォーマットです。W3Cによって決められているので、参考にしてください。
- Timed Text Markup Language
- http://www.w3.org/TR/ttaf1-dfxp/
ただし、ここの定義すべてが、FLVPlaybackCaptioningコンポーネントで有効なわけではないので、注意が必要です。
その有効/無効の切り分けは、以下のヘルプを参照してください。
- 「Timed Text キャプションの使用」
- http://help.adobe.com/ja_JP/as3/components/WS5b3ccc516d4fbf351e63e3d118a9c65b32-7ee5.html
また、YouTubeなどのオンライン映像であっても、字幕は、SubRip(.srt)やSubViewer(.sub)といったDVDなどに利用されるフォーマットが使用されることも多いです。どちらも、テキストファイルで、基本的には、映像の中で時間を指定し字幕を表示するというものですが、それらを作成するための、オンラインで動作するエディタを2つ紹介します。
CaptionTube
YouTubeのサービスで、ビデオに字幕を付けられ、最後はYouTube内のビデオに適用することが可能な「CaptionTube」というサービスです。まだ、ベータですが、本家Googleの提供するサービスです。
字幕を作成したら、YouTube内のビデオに直接適用したり、テキストファイルとして出力することが可能です。ただし、出力できる字幕用のファイルは、.subか.srtでTTMLはありません。また、ビデオファイルは一度YouTubeにアップする必要があります。
CaptionTubeの出力する字幕テキスト(.sub、.srt)はTTMLによく似たフォーマットなので、拙作簡易変換ツールを使えばTTMLとして出力可能です(このツールについては、後述します)。
また、常に編集結果や字幕データはサーバーに残っていますので、後から修正を加えることも容易にできます。今回、CaptionTubeで作成した字幕付き映像は以下で確認できます。
開設の御口上字幕版
字幕はCC(クローズドキャプション)ボタンをクリックすると出ます。
Online Subtitle/Captions Editor
Subtitle Horseが提供するオンラインの字幕テキスト作成ツールが「Online Subtitle/Captions Editor」です。こちらも、ビデオを見ながら字幕を付けていきますが、flvファイルは自分のサーバで公開し(httpあるいはrtmp)アクセスする必要があります。
このオンラインエディタは、出力フォーマットが豊富です。YouTubeなどで使用できる.subや.srtをはじめ、FLVPlaybackCaptioningコンポーネントで使用するTTMLフォーマットにも対応しています。ただ、編集途中で保存することが難しいので、長い映像に字幕を付けるときは注意が必要です。
sub2ttml変換ツール
CaptionTubeの出力するSubViewer形式のテキストファイルをTTML形式に変換するツールを作成しました。使い方は簡単です。SubViewer形式のテキストをステージ上にあるテキストフィールドにペーストしてから、ボタンをクリックすると、TTML形式に変換したテキストがクリップボードにコピーされます。
その内容は、最低限のTTMLでスタイルなどの定義はありませんので、修正する場合は、このファイルを編集します。ファイル「~.xml」という名前で「UTF-8」で保存してから、FLVPlaybackCaptioningコンポーネントで利用してください。
上記ソースファイルは、CS4用です。ここからダウンロードできます。利用してください。なお、サーバにアップロードする場合、flvファイルや字幕用のxmlファイルも同じくアップロードする必要があります。